翌日。須藤グループ本社。社長室。弘人の机の上には資料が置かれていた。May。広報部がまとめたプロフィール資料だった。昨日の報告が少し気になったのだ。評判以上。そう言われれば、どんな人物なのか興味も湧く。弘人は資料を開いた。活動実績。企業案件。イベント出演。雑誌掲載。想像以上に多い。広報部が高く評価するのも分かる。取引先が名前を出す理由も理解できた。単なるインフルエンサーではない。一つのブランドとして成立している。そんな印象だった。ページをめくる。――活動履歴。そこで弘人の視線が止まった。「あれ……?」小さく眉をひそめる。数年前。活動実績が急に減っている時期があった。仕事を辞めたわけではない。だが。明らかにペースが落ちている。理由までは書かれていない。産休とも。休業とも。何も書かれていない。ただ。活動量だけが減っている。弘人は無意識に計算した。数年前。その時期は――自分が麻衣子と結婚した頃だった。一瞬だけ。麻衣子の顔が浮かぶ。結婚後。麻衣子は家にいることが増えた。友人との予定も減った気がする。仕事の話も聞かなくなった。いや。聞かなかったのか。弘人は資料から目を離した。考える必要のないことだ。そう思う。Mayと麻衣子は別人だ。偶然だろう。世の中には結婚する人間などいくらでもいる。
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