翌朝。彩花は目覚ましが鳴る前に目を開けた。眠った気がしない。天井を見つめたまま数秒。やがて重い体を起こす。客室の窓から見える空は曇っていた。まるで今の気分みたいだ。そんなことを考えてしまう自分に苦笑する。以前ならこんなことはなかった。もっと前向きだったはずだ。◇◆◇出社後。彩花はデスクへ座るなり、メールを確認した。未読メール。会議予定。調整依頼。いつも通りだ。だが、その中に一つだけ気になるものがあった。役員会議の準備担当者一覧。以前まで自分の名前があった場所に、別の秘書の名前が記載されている。彩花は画面を見つめた。間違いではない。修正漏れでもない。正式に変更されている。指先が冷たくなる。監査中だからだろうか。それとも――。そこまで考えて、彩花は慌てて首を振った。違う。考えすぎだ。そう言い聞かせる。◇◆◇午前中。秘書室では慌ただしく準備が進んでいた。以前なら中心で指示を出していたのは彩花だった。だが今は違う。「この資料、こちらへお願いします」「会議室の準備終わりました」「来客対応いけます」周囲は問題なく動いている。誰も困っていない。彩花は資料整理をしながら、その様子を眺めていた。不思議だった。自分がいなければ回らないと思っていた。少なくとも、そう信じていた。なのに現実は違う。何事もなかったように回っている。それが少し悲しかった。◇◆◇
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