「初めまして、東国万葉です」「瀬名航です」名乗ったあと、航は少し照れ臭そうに笑う。「顔は見たことがありますが、こうしてお話しするのは初めてですね」「そうですね」「てっきり俺も、光也とセットで嫌われているのかと……それなりに嫌がらせとかしていたでしょう?」航の言葉に「まあ」と万葉は笑う。「若気の至りですわ」そう言って頬を軽く染める万葉。軽く遠い目をして苦笑いをする航。(……どんなことをされたのかしら)実花は窓辺で語らう二人から、隣に座っている光也に視線を移した。平然とした顔でコーヒーを飲んでいる。「なんだ?」「万葉さんから、どんな嫌がらせを受けたのですか?」「まあ、色々あるが……その前に」「はい?」「なぜ、彼女を『万葉』と呼ぶ?」「万葉さんも『東国さん』と呼んだら、東国さんと混じってややこしいではありませんか」「それなら俺も名前で呼んでほしい」実花が首を傾げる。「東国さんと万葉さん、区別できていると思いますよ?」「そういう問題では……」「黙ってくれないか、東国君。万葉さんたちの会話が聞こえないじゃないか」会話に割り込んだ実篤を光也は呆れたように見る。「他人の恋愛を見て、何がおもしろいんですか?」「紹介した責任がある」実篤の言葉に高峰も重々しく頷いている。「二人ともいい大人ですよ?」「いくつになろうとも、年長者の導きは必要だ」(……年長者)実篤の言葉に、実花は万葉を見る。万葉と航からはぎこちなさが消え、二人とも楽しそうに会話をしている。素晴らしい社交術だと思った。光也と実篤の会話に気を取られ、二人の会話を聞き逃したことが悔やまれた。「やはり、あの急なヨーロッパ出張はあなたの策略でしたか」「ええ。あのパーティーに光也を参加させたくなかったの」「いや、そもそも光也は東国の後継者になるつもりはないんで」「今なら分かるけど、実花ちゃんに会うまでの光也は『それも悪くない』って態度だったじゃない」「まあ、そうですね」万葉が大きくため息を吐く。「こっちは当主になりたくって堪らないのに、女ってだけでその資格がないのよ」「今どき化石みたいな考え方ですよね」「本当に。実篤様を見習うべきですわ」「実篤様……万葉さんも、藤宮のご当主が好きなんですね」「ええ、とっても」(……お見合い相手に
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