All Chapters of 一度こぼれた恋心は、もう元には戻らない: Chapter 1 - Chapter 10

13 Chapters

第1話

私・谷口梨花(たにぐち りか)が恋人・鈴木圭佑(すずき けいすけ)の100個目の願いをようやく叶えたとき、やっと彼は結婚の話を進めることに同意してくれた。しかし、結婚式当日、社長である彼の秘書・杉本瑶子(すぎもと ようこ)がステージに乱入してきて、堂々と彼ら二人の婚姻届受理証明書を突き出したのだった。「谷口さん、圭佑さんは私の夫なんです!人の夫を奪うなんて、恥ずかしくないんですか?」私が圭佑に問いただす間もなく、彼は指輪を外して私の顔に投げつけてきた。「言っただろ?結婚はあともう少し待てって。なのに、君が聞かないからこうなるんだよ。これで満足か?」どうやら、瑶子の親が強引に決めた縁談をやり過ごすために、私たちが結婚する1週間前にこっそり婚姻届を出していたらしい。会場では、私の結婚式のためにわざわざ来ていた祖母の谷口和子(たにぐち かずこ)がショックのあまり意識を失い、そのまま病院へ搬送された。私は祖母の治療費を払おうとしたが、共同口座の残高はゼロ。わずか1分前、圭佑がその口座の最後の200万円を使い切っていた。祖母はそのまま帰らぬ人となってしまった。しかし、次の瞬間、私は瑶子のインスタを目にした。【機嫌が悪かった私に、圭佑さんが200万円のブレスレットを買ってくれた!】私が呆れて「いいね」を押すと、ほどなくして圭佑から冷たい声で電話がかかってきた。「また何してるんだ?すぐにそのいいねを消せ。瑶子の親対応が終わったらすぐ結婚してやるから。そうすれば、君も君のおばあさんも満足だろ、な?」圭佑がまたしても「結婚しよう」と甘い未来だけを語るのを聞きながら、私は泣き腫らして痛む目をこすった。白い布を掛けられた祖母を見つめ、かすかに苦笑を浮かべる「もういいの。だっておばあちゃんはもう……」死んじゃったから。しかし、圭佑は私の言葉を最後まで聞かず、冷たくさえぎった。「梨花、たかが結婚式だろ?なのに、何をそこまで意地になる必要があるんだ?俺と瑶子が籍を入れたのは、親に無理やり結婚させられそうになってた瑶子を助けるためのパフォーマンスに過ぎない。それに、瑶子が政略結婚して地獄を見るのなんか放っておけないだろ?なのに、君はおばあさんのことを引き合いに出すなんて。第一、もう少ししたら籍を入れるって言ったのに、君が無理
Read more

第2話

圭佑を疑うこともせず、貯金の管理まで任せてしまった。そのせいで、祖母の命に関わる手術の費用さえ、肝心な時に用意できなかった。悲痛な私の声を聞いて、圭佑は自分の言い過ぎに気づいたのか、トーンを落としてこう言った。「とりあえずいいねを取り消せば、この件はなかったことにしてやる。それに、後でいくらか振り込んでやるから、おばあさんに何か買って、喜ばせてやれ」この男はなんて身勝手なのだろう。あと200万あれば手術ができたという時に、その200万を圭佑は瑶子にブレスレットを贈るために使った。断ろうとしたその時、受話器の向こうから瑶子の声が聞こえてきた。「圭佑さん、お母さんがあなたが作る煮込みハンバーグが食べたいって言ってる」「すぐ行く」圭佑は瑶子に優しく答えたが、私と電話中だったことを思い出したらしく、急いで電話を切ると、4000円を私の口座に振り込んできた。届いた4000円の通知を見て、目頭が熱くなる。瑶子には200万円ものブレスレットを贈るのに、私と祖母には4000円で済ませるらしい。呆然としていると、瑶子からメッセージが届いた。写真には、山盛りの美味しそうな煮込みハンバーグが写っている。【これは、圭佑さんが私と親のために作ってくれたんです。あなたと圭佑さんは、一緒になって長いようですけど、圭佑さんがあなたたちに料理を作ったことなんて、まだないんじゃないですか?】5年間付き合っていたが、圭佑が手料理なんて作ったことはないし、私の実家に来ても皿洗い一つせず、祖母が用意したご飯を待つだけだった。たまに味が濃いと、祖母に不機嫌な顔まで見せていた。そんな日々を思い出し、心は一層冷えていく。私は瑶子の挑発を無視し、圭佑から届いた4000円をそっと送り返した。それから、重い足取りのまま祖母の死亡証明書を受け取りに行った。いつも笑っていたはずの家族が、今はただの紙切れ一枚になってしまい、その事実が私を押しつぶす。葬儀代を捻出するために、私はお金になりそうな唯一のもの、ダイヤが埋め込まれたピアスを手放すことにした。このピアスは、私たちが付き合い始めた頃、まだお金もなかった圭佑が、なけなしの貯金をはたいて買ってくれた、二人の大切な思い出だった。私はずっと肌身離さず着けていた。でも、今は迷うことなく
Read more

第3話

私は大きく息を吐き出し、つらいことは考えないようにして、熱々のうどんを作った。数口食べたところで、怒り心頭の圭佑がドアを蹴り開け、入ってきた。彼はダイヤのピアスを手にしている。「梨花、このピアスは俺たちの絆の証だろ?なのに、どうして勝手に売っちまったんだよ!」まさか買い取った相手が、圭佑本人だったなんて思いもしなかった。しかし、詰め寄ってくる圭佑を無視し、私は顔を上げることもなく黙々とうどんを口に運びつづけた。食べ終えてから、ようやくゆっくりと答える。「いらなくなったから、売っただけ」圭佑は驚愕した。「俺があげたものだぞ?」「知ってるよ。でも、それがどうしたの?」圭佑本人すらもういらないのだ。ただのピアスなんて、なおさらどうでもいい。圭佑は私を食い入るように見つめ、何かを察したのか、落胆したような表情で言った。「梨花。結婚式のことや、瑶子にブレスレットを買ってあげたことで拗ねてるんだろ?だから、わざとピアスを売って俺を困らせたいのか?でもそれは、わけあってのことだって説明したし、式を挙げて入籍する約束もしたはずだ。これ以上、俺にどうしろって言うんだよ?俺が瑶子にブレスレットをプレゼントしたのは、彼女との約束を反故にしてしまったからで、その埋め合わせとして買うのは別に変じゃないだろ?それに、たかが200万程度でガタガタ言うなよ。いずれ結婚すれば財布は一緒なんだから、つまらない意地は捨てろ」私は鼻で笑った。圭佑にとっては「たかが200万程度」らしいが、そのお金を私の祖母のためには使ってくれなかったくせに。愛がある場所に、お金は使うもの。しかし、残念なことに、祖母が亡くなってからやっとその事実に気づいたのだ。私が険しい表情をしていると、圭佑は切り札とばかりにポケットから金のイヤリングを取り出し、私の手に押し付けた。「機嫌を直せよ。おばあさんのために、ずっと欲しがってた金のイヤリングを買ってきたんだ。しばらくの間だけ少し我慢してくれ。瑶子のことが落ち着いたら、君たちには必ず埋め合わせをするからさ。それでいいだろ?」祖母の話を出されると、胸が締め付けられるように切なくなる。祖母は確かに金のブレスレットを欲しがっていた。だが、私のお金は全部、圭佑に管理されていたため、彼に相談しても、
Read more

第4話

5年間も恋人として付き合ってきたこの私を、圭佑は従姉妹と言ったのか?しかも、彼は瑶子の母親のことを「お義母さん」と呼んでいる。瑶子の父親の杉本竜也(すぎもと たつや)は、軽蔑のこもった目で私を見た。「どうせ君の金を頼りに来た貧乏な親戚なんだろ?」美優も鼻で笑う。「こんないい大人が、誰かに頼らないといけないなんて。図々しいにも程があるわ。医療費ぐらい自分でなんとかするのが、当たり前でしょ?圭佑さん、さっさとこの人を追い出してよ」私がこんなことを言われていても、圭佑は私をかばおうともしない。瑶子は隠しきれない喜びを浮かべながらも、わざとらしい声色で言った。「お父さん、お母さん。私はもう圭佑さんと入籍したんだから、この人も親戚になるんだよ?親戚付き合いは大切にしたいから、ここに住まわせてあげてくれない?」しかし、竜也と美優は声を揃える。「出て行ってもらわなきゃ困る!」それを見た圭佑は、私を脇に引き寄せ、声を潜めて言った。「梨花。申し訳ないけど、数日間どこか別のところで過ごしてくれないか?」これで何度目だろう?圭佑が瑶子のために、私をこんな扱いにするのは……瑶子が会社に入ってきてから、圭佑は私より彼女を優先するようになった。何度、結婚するための「願い」のために私の成果を瑶子に譲ってきたことか。そして今や、二人で築いた家まであの女に譲れというのだ。しかし、今回の私は以前のように取り乱して泣いたりしない。私は無言で寝室へ行き、すでにまとめておいた荷物を取り出す。「私も出ていくつもりだったから、ちょうど良かったよ」圭佑は、私が心が広くなったと勘違いし、なぜ私が荷造りを終えていたのかは疑いもしなかった。「梨花、今回が最後だから。1ヶ月が過ぎれば、瑶子と離婚して、君と入籍する。豪華な式も挙げよう。もう二度と辛い思いはさせない」私は適当に頷き、圭佑に背を向けた瞬間、ある通知を確認した。それは、圭佑が私の退職届を承認したというメッセージだった。この男は私に辛い思いはさせないと言った直後に、退職届を承認したのか?まあ、別にいい。私たちに未来がないことを、圭佑は知らないのだから。私は2日後には国外へ飛び、圭佑の元から完全に消える。二度と会うこともない。家を出た私は、ホテルを予約した。そ
Read more

第5話

「ご結婚おめでとうございます!瑶子さんと社長は本当にお似合いですよ!」「すぐに、副社長とお呼びしないといけませんね!」瑶子は周囲のお世辞に気分を良くし、笑みをこぼす。しかし、私のところへ来た時には、招待状もお菓子セットも配り終えていた。すると瑶子は純情なふりをして、背後から線香を出して私の手の中に押しつけた。「谷口さん、招待状もお菓子セットもなくなっちゃったんです。だから、代わりにこれを。おばあさんが亡くなられたって聞きました。だから、ぜひこれでも供えてあげてくださいね」周囲の人間までもが私を笑った。私は怒りで身体が震え、鋭い視線で瑶子を睨みつける。「なんで祖母が亡くなったことを知っているんですか?」瑶子は軽く鼻で笑うと、声をひそめて耳打ちしてきた。「谷口さん。私、圭佑さんのスマホのロック番号を知ってるんです。だから、あの時あなたが圭佑さんに送ったメッセージも、着信履歴も、全部私が消してあげたんですよ。おばあさんの入院費だって、わざと圭佑さんに使い切らせたんですから」私は悔しさで涙が溢れそうだったが、歯を食いしばって堪える。「あなたが祖母を死に追いやったんですか?一体、何のために?」「そんなの、あなたが自分の立場もわきまえず、いつまでも圭佑さんの周りをうろうろしているからですよ?あなたを追い出すためなら、どんな手だって使いま……」パシッ。私は思わず瑶子の頬を叩いた。力もかなり強く、彼女の口元からは血がにじむ。「最低!」瑶子は口元の血をぬぐうと、邪悪な笑みを浮かべた。「谷口さんを取り押さえて!」すると、瑶子から甘い汁を吸おうとしている同僚たちが、一斉に飛びかかってきて私の両腕を押さえつける。動けない私の前で、瑶子は卑劣な眼差しを見せると、デスクにあったマグカップを手に取り、私をめがけて力一杯振り下ろした。「私を怒らせたらこうなるんですよ?」マグカップは無残に砕け散り、温かい液体が額から溢れ、目の前が真っ赤に染まる。「君たち何をしてるんだ!やめないか!」意識が遠のく中、ぼんやりと圭佑が自分の方へ走ってくるのが見えた。「梨花!」次に目が覚めたとき、私は病室のベッドの上だった。「梨花、大丈夫か?」ベッドの横に寄り添っていた圭佑が、私を優しく抱き起こす。「ま
Read more

第6話

喉の奥がきゅっと詰まり、私は力なく笑った。喧嘩をするたびに、圭佑は私に別れをちらつかせて脅してきた。これまでは彼を愛していたからこそ、自分の気持ちを押し殺して謝り、卑屈なほど譲歩してきた。しかし今回の私は、冷めた笑みを浮かべて頷く。「うん、別れよう」私が本当に別れを選ぶとは夢にも思わなかったのか、圭佑は一瞬焦りをあらわにし、慌てて話題を変えた。「喧嘩中の一言に決まってるだろ?それを本気にするなんて。いい加減にしろよ!君のせいで、瑶子が驚いて泣いたのを知らないのか?退院したら、ちゃんと彼女に謝っておけよ。分かったな?」私は冷ややかな目つきで、圭佑が野菜スープを食べさせようと差し出した手を拒絶する。「おばあちゃんを死に追いやった犯人に謝れって?馬鹿じゃないの?」圭佑は眉間にしわを寄せる。「何を言っているんだ?おばあさんは元気だろ?瑶子がなんで君のおばあさんを殺したりなんかできるんだ?」その時、ドアの外で物音がした。いつの間に現れたのか、そこには瑶子がいて、手からフルーツかごを落とし、果物が床に転がっていたのだ。「谷口さん……私はもう以前のことは水に流して、わざわざ果物を持ってまでお見舞いに来たのに、あなたはおばあさんのことを引き合いに出して、平気で私を悪者にするんですね……分かりました。そんなに私が嫌いなら、もう会社も辞めますから。これ以上、私のせいでお二人の仲を壊したくありませんので」瑶子は泣きじゃくりながらその場を去るときに、頬の赤い平手打ちの痕をわざとらしく見せつけた。圭佑は私のことなどどうでも良くなったらしく、まだ熱い野菜スープを私の頭からぶっかけた。「梨花、瑶子がお見舞いに来てくれたというのに、あいつのことを悪く言って……一体いつから、そんなに腐っちまったんだ?もう見舞いになんか来てやらないからな。一人で反省してろ!考え直して謝ってくるまで、俺は許さないし、ここから出しはしない」そう言い残し、圭佑は立ち上がると、瑶子を追って出て行った。こうやって、置き去りにされるのも百回目。しかし私は、落ち着いた気持ちのままスマホを取り出し、圭佑の連絡先をすべて消去した。その後すぐに退院手続きをし、荷物を引きずりながら、一度も振り返ることなく空港へと急いだ。圭佑、私たちはこれで
Read more

第7話

「え?そんなはずはありません!」看護師の言葉に、圭佑は雷に打たれたような衝撃を受けた。頭が真っ白になり、耳鳴りまでしてくる。「冗談ですよね?梨花のおばあさんはあんなに元気だったんですよ。なのに、いきなり亡くなるなんて。そんなわけありません!」梨花が国外へ旅立ったと知った瑶子は、内心では得意げに笑いながらも、心配そうな表情を浮かべ言った。「圭佑さん。谷口さんは、きっと意地を張ってるから、わざわざおばあさんを連れていなくなったんだよ。それにしても、あなたを信じ込ませるために、おばあさんのことまで使うなんて……ひどいよね。さらには、看護師まで抱き込むなんて。圭佑さんはここずっと仕事で忙しいのに、谷口さんはそんなことも考えないで、あなたに心配かけるようなことばっかりして、本当なんなのかしら?」瑶子の煽りに圭佑は表情を曇らせ、看護師を冷たく睨みつける。「俺は梨花を少し甘く見ていたようです。まさか、こんなことまでするなんて。梨花にいくらもらったんですか?その倍を払いますから、梨花がどこにいるのか教えてください」看護師はあきれたように溜息をついた。「いい加減にしてください。谷口さんは退院したんです。こっちは、本当のことを言ってるのに。まあ、信じるか信じないかは自由ですが、これ以上仕事の邪魔をしないでいただけますか?」プライドの高い圭佑は看護師の対応に怒り、どうせ梨花は逃げているだけだろうと、腹立ち紛れに電話を取り出した。メッセージは無視できても、電話なら出るだろうと踏んだのだ。電話に出たら、今の身勝手な振る舞いをしっかりと叱ってやろう、圭佑はそう意気込んだ。呼び出し音が鳴り、少しだけ希望が見えた瞬間、無機質な機械音が冷たく返ってきた。「おかけになった番号は、現在使われて……」何度も繰り返されるアナウンスに、圭佑の表情は暗く沈んでいく。まさか、梨花が自分を着信拒否するなんて……今まで梨花を着信拒否にするのはいつも自分の方だったのに。些細な喧嘩のたびに、圭佑は梨花を着信拒否にしては削除し、梨花を懲らしめる方法として使用していた。しかし、今、圭佑は初めて、自分がブロックされるということを味わったのだった。瑶子はその動揺を見逃さず、さらに煽る。「谷口さんったらこんなことまでしてるの?看護師さん
Read more

第8話

その瞬間、圭佑の中で、言い表すことのできない嫌な予感がよぎった。しかしすぐにその考えを打ち消し、自分に言い聞かせるように首を横に振る。「梨花は俺なしでは生きていけない。俺のためなら将来を捨てることだって厭わないし、結婚するためにどんな困難な条件だってこなしてきた。梨花が俺から離れるはずなんてないんだ」しかし、圭佑は知らない。梨花の祖母が息を引き取ったその瞬間、梨花の心から彼が完全に消え去っていたことを……「梨花はただ意地を張って隠れているだけ。隠れるなら、俺がどこまでも追いかけてやる」圭佑はすぐに部下へと電話をかけ、梨花たちを探し出すように命じた。その横で、瑶子が何かを思いついたように圭佑の袖を引いて、狡猾な笑みを浮かべる。「圭佑さん、そんな手間をかける必要はないと思うよ。いっそ私と結婚式を挙げるところを、全国に配信しちゃえば?だって、谷口さん、やきもち焼きでしょ?だから、ライブ映像を見れば、きっと居ても立ってもいられなくなって姿を現すはずじゃないかな?」圭佑は少し考え、頷いた。「言われてみれば、確かにそうかもしれない。前も、君と一つの串焼きを一緒に食べただけで、梨花はひどく拗ねていた。結婚を知れば、きっと式場まで乗り込んできて止めに来るはずだ。よし、その作戦でいこう」それからの数日間、圭佑は梨花を探すことより、結婚式の準備に熱中した。梨花に知らせるため、あらゆるメディアに高額な広告を出し、瑶子と結婚するというニュースを宣伝させた。それだけではない。式の準備過程をネットで公開する動画まで始めた。引き出物選びや、手書きの招待状を作る姿をわざとらしく撮影する。さらには、業者まで雇い、二人の結婚がいかに豪華で壮大なものかを大々的に宣伝させた。圭佑の願い通り、遠く離れた場所でも、二人が結婚するというニュースは梨花の耳にも届いた。……その時、私は現地の会社で働いていた。仕事を終えた時、同僚たちがグループチャットに動画を送り合い、興味津々で盛り上がっている。【最近のトップニュース見た?あの社長さん、めちゃくちゃ奥さん思いらしくて、十億超えの結婚指輪を即決したり、自分自身で結婚式をプロデュースしてるらしいよ!】【しかも、結婚式場に飾られるフラワーアレンジメントは全て輸入品らしくて、かなりの値が
Read more

第9話

この二人が、私の祖母をどうやって死に追いやったのか……忘れたことは一度もない。瑶子が直接的に殺人を犯したという証拠がなかったから、警察は動いてくれなかった。それでも、二人が祖母の命を奪った犯人だということはずっと忘れていない。結婚式を派手にライブ配信までするなんて。せっかくだから、とびきりの結婚祝いを贈ってあげよう。そう思って、私は半休を取った。自宅のマンションに戻り、あの時持ち出した祖母のカルテと、瑶子が私を挑発した時の録音データを箱に詰めて、圭佑宛てに郵送した。会社を辞める時、何があるか分からないと思って念のために録音しておいたものだ。思わぬところで、瑶子の本性を録音できたのだが。圭佑がこのプレゼントを受け取った時、どんな顔をするのか楽しみで仕方ない。2日後、圭佑と瑶子の結婚式が始まり、ライブ配信もスタートした。会場には、かつての同僚や瑶子の親戚がぎっしりと座り、異様なほど盛り上がっていた。金を惜しみなく使った宣伝の甲斐もあって、式の内容はニュースランキングのトップに躍り出ている。私も当然のように配信をクリックし、ショーの始まりを待った。モニターに映る瑶子の瞳には、勝ち誇った喜びが渦巻いている。一方で、圭佑はどこかそわそわしていて、しきりに入り口へと視線を向けていた。予定の時間が来たらしく、司会者が式を進めていく。しかし、牧師の前での誓いの言葉になり、瑶子を妻として愛すと誓うか聞かれると、圭佑は黙り込んでしまった。現場の空気が張り詰める中、瑶子が彼の手を引く。「圭佑さん、みんなが見てるよ。お願いだから答えて」圭佑は瑶子の手を振り払うと、カメラの正面に立ち、真っ赤な目で叫んだ。「梨花!今、君がこれを見てるのは分かっている!俺が瑶子と結婚してしまうんだぞ?なのに、どうして出てこないんだ?連絡もつかないなんて。本気で何も思ってないのか?君はそんな人じゃなかったはずなのに……」確かに、かつての私は違った。圭佑と瑶子が少し言葉を交わしただけで機嫌を損ねて、距離を置くよう警告したこともあった。すると、圭佑は私を疑心暗鬼で独占欲の強い重い女だと罵り、私に窒息しそうだと漏らした。だから今、彼の望み通りにすべてを許して二人を成就させてあげたというのに、それでもまだ文句を言うのか
Read more

第10話

圭佑は私からのメッセージだと気づき一瞬喜んだが、内容を読み終えるとすぐに顔を真っ青にした。すぐに、私を自分のライブに招待し、叫ぶように言った。「海外だと?いつの間に?まだ退職もしていないのに、どうやってビザを取ったんだよ!ビザなしで働くなんて違法だぞ!今すぐ戻ってこい。そうすれば情に免じて告発はしないでおいてやる。さもなければ……」しかし、脅し文句を吐かれる前に私は鼻で笑って、それを遮った。「さもなければ、何?圭佑、その脅しはもう通用しないよ。だって、私、1か月前に退職しているから」それを聞いた圭佑は言葉を失い、慌てて人事部の方に目を向ける。人事部の人間から「退職しています」という回答を得た圭佑の顔はみるみるうちに青ざめていった。「そんなはずは……」彼は苦悶に満ちた表情でカメラに向かって言った。「梨花、俺が海外に行けないと知っているのに、あえてこうやって俺を追い詰めるつもりなのか?」圭佑は家庭のトラウマから海外渡航を極端に拒んでいた。だからこそ、二度と関わらないために、私はあえて海外への移住を決意したのだった。だからこうすれば、私に帰国を促す考えを諦めてくれると思っていた。しかし、圭佑はまだ執着を捨てていなかった。「梨花、今どの国にいるんだ?詳しい場所を送ってくれ。今すぐチケットを買って迎えに行くから。どうしても外国がいいなら、俺もそこについていくよ」なんと、私と一緒にいるために、圭佑は過去のトラウマを乗り越えてでも、海外に来ると言い出したのだ。前の私なら感動したかもしれない。でも今の私は、何も思わなかった。「教えるわけないでしょ?二度と会いたくないんだもの。圭佑、以前言った別れ話は冗談じゃないから。本気だよ。私たちもう終わってるの」圭佑は絶句し、なんとか言葉を絞り出す。「いや、俺たちは終わってない。別れるなんて、俺は認めないぞ!梨花、心の中では君がまだ俺のことを好きなのはわかってる。じゃなきゃライブ配信になんか来ないもんな?俺が本当に悪かった。これからは、精一杯償うから。もう機嫌を直して、やり直そう、な?」圭佑の自分勝手さにあきれていると、会場の入り口の方から配達員の声が聞こえてきた。「鈴木様。谷口様からの贈り物をお届けに上がりました。サインをお願いします」
Read more
PREV
12
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status