Se connecter私・谷口梨花(たにぐち りか)が恋人・鈴木圭佑(すずき けいすけ)の100個目の願いをようやく叶えたとき、やっと彼は結婚の話を進めることに同意してくれた。 しかし、結婚式当日、社長である彼の秘書・杉本瑶子(すぎもと ようこ)がステージに乱入してきて、堂々と彼ら二人の婚姻届受理証明書を突き出したのだった。 「谷口さん、圭佑さんは私の夫なんです!人の夫を奪うなんて、恥ずかしくないんですか?」 私が圭佑に問いただす間もなく、彼は指輪を外して私の顔に投げつけてきた。 「言っただろ?結婚はあともう少し待てって。なのに、君が聞かないからこうなるんだよ。これで満足か?」 どうやら、瑶子の親が強引に決めた縁談をやり過ごすために、私たちが結婚する1週間前にこっそり婚姻届を出していたらしい。 会場では、私の結婚式のためにわざわざ来ていた祖母の谷口和子(たにぐち かずこ)がショックのあまり意識を失い、そのまま病院へ搬送された。 私は祖母の治療費を払おうとしたが、共同口座の残高はゼロ。わずか1分前、圭佑がその口座の最後の200万円を使い切っていた。 祖母はそのまま帰らぬ人となってしまった。しかし、次の瞬間、私は瑶子のインスタを目にした。 【機嫌が悪かった私に、圭佑さんが200万円のブレスレットを買ってくれた!】 私が呆れて「いいね」を押すと、ほどなくして圭佑から冷たい声で電話がかかってきた。 「また何してるんだ?すぐにそのいいねを消せ。瑶子の親対応が終わったらすぐ結婚してやるから。そうすれば、君も君のおばあさんも満足だろ、な?」 だが圭佑は知らない。祖母はもう死んだし、私と彼に未来なんてないことを……
Voir plus「本当に悪かったと思ってる。でも、おばあさんを死なせるつもりはなかったんだ。瑶子に騙されていただけなんだよ。過ちを犯さない人間なんていないだろう?やったことはもちろん謝る。だから、やり直すチャンスを一度だけくれないか?なんで、やり直すチャンスすら与えてくれずに、一方的に俺を見捨てるんだ?梨花、5年の付き合いだろ?過去はもう水に流して、またゼロからやり直そうよ」私は冷ややかな目で、圭佑を突き放す。「圭佑、私たちはもう別れたの。いまさら情なんてあるわけないでしょ?それに、過去をなかったことにはできない。私たちには、失われた命という絶対に超えられない壁があるの。なのに、やり直したいなんて、あまりにも勝手だとは思わない?言いたいことは言った。もう二度と私の前に現れないで」それでも圭佑は諦めようとしなかった。「いや、俺たちはきっとやり直せる。本当は、まだ俺を愛してるんだろ?じゃなきゃ、どうして今も独り身なんだ?俺のことを忘れられないからだろ!」言葉を失った私が返事に困っていると、背後から落ち着いた男性の声が聞こえてきた。「梨花が独り身だなんて誰が言った?梨花は俺の彼女だけど?」振り返ると、現在の恋人である柴田彰人(しばた あきと)が歩み寄ってきて、私を抱き寄せた。彰人は私の直属の上司で、この国に来てからずっと私を支えてくれていた。共に時間を過ごすうちに、私たちは互いに欠かせない存在となり、恋人同士になったのだ。先日、パーティーの後に彰人から告白されて、私たちは交際を始めたばかりだった。しかし、圭佑は信じようとしない。「彼女?ふざけるな、そんなわけあるか!梨花、どうせ俺を怒らせるために連れてきた男だろ?俺を愛している君が、他の誰かと付き合うなんてあり得ない」私は彰人と手を組み、わざと見せつけるように言った。「あの日、あなたがおばあちゃんを殺した時から、私の心からあなたは完全に消え去った。彰人が私の唯一の恋人なの」圭佑は目に涙を溜め、何かを言いかけようとしたが、その時ちょうどスマホが鳴った。電話に出た圭佑は、慌てた様子でその場から去っていった。圭佑について再び知ったのは、それから1週間後のことだった。どうやらその電話は秘書からで、瑶子が出所後に会社へ現れ、圭佑が海外にいる間に全ての
「結局、お前ら全員で俺を騙してたんだな?よくも、そんなことしやがって!」全く皮肉なものだ。圭佑は杉本一家にこれだけ大金を注ぎ込んでいたくせに、私の祖母に金のブレスレットひとつ買ってくれず、最後には祖母の命を救うためのお金まで奪い去っていったなんて。圭佑は杉本一家を恩知らずと罵っているが、彼自身はどうなのだ?画面の中で、美優は圭佑の顔面に勢いよく唾を吐きかけた。「これ以上そんなこと言うなら、その口を潰してやるから!私たちを恩知らず呼ばわりしてるようだけど、あんたも大差ないからね。谷口さんとそのおばあさんにあれほど大切にしてもらってたのに、裏切って追い出すだけじゃ飽き足らず、あんな酷いことするなんて。うちの娘と離婚してもらって正解だったわ。あんたみたいな婿と結婚してたら、不運でしかなかったから!」圭佑は悔しさを目に浮かべながら、当時の自分の振る舞いを心の底から後悔した。「全部お前らのせいだ。お前らがいなければ、梨花のおばあさんは死なずに済んだし、梨花もいなくなることはなかった!俺の人生を滅茶苦茶にしやがって……全員、償ってもらうからな!」圭佑が平手打ちを見舞おうとしたが、瑶子に逆に突き飛ばされた。「勘違いしないで。谷口さんの祖母の治療費を使ったのはあなたよ、私じゃない。もっと言えば、谷口さんを追い出したのだって、あなたでしょ?」二人は激しく言い争い、揉み合いになったが、駆けつけた警察によってその騒ぎはようやく収められ、そのまま二人とも連行されていった。一連の騒ぎを満足に見届けた私は、配信を閉じる。気分転換にと同僚が食事に誘ってくれた。食事を終え、自宅に戻るともう深夜になっていた。車を降りてスマホの電源を入れる。電源が入った瞬間、99件以上の通知が届いた。すべて圭佑が新しくアカウントを作って送ってきたもので、内容は後悔を綴るものばかりだった。【梨花、警察が捜査してくれたんだ。瑶子が故意に君のおばあさんに危害を加えたとして、当分収監されることになった。本当に申し訳ない。すべては俺が人を見る目がなかったから。じゃなきゃ、おばあさんが死ぬこともなかった……】【君が俺に送っていた助けを求めるメールや着信、全部あの女に消されていたんだ。梨花、おばあさんがそんな状況だったなんて……それにお金が必要だったなんて全然
瑶子という女は、私を陥れるのがとにかく得意らしい。いつもそうやって、ありもしないことを言いふらし、圭佑がそれを信じ込むことで、瑶子の悪巧みは成功してきた。案の定、今回も圭佑は期待を裏切らず、私に失望した目で見つめる。「梨花。いくらなんでもやりすぎだ!」その様子を見た瑶子は勝ち誇ったように笑みを浮かべ、今回も私をこっぴどく叩きのめして、自分の株を上げるつもりでいた。でも今回は、そうはいかせない。「圭佑、まあそんなに焦らないでよ。プレゼントは二つあるんだから、私に文句を言うのは、もう一つを確認してからでもいいんじゃない?」私の言葉を聞き、圭佑はプレゼントの箱の中にあったボイスレコーダーを手に取った。瑶子は何かを察したのか、真っ青な顔で慌てて止めようとしたが、時すでに遅し。圭佑が再生ボタンを押した瞬間、瑶子が祖母を死に追いやったと告白するその声が、式場に響き渡る。「谷口さん。私、圭佑さんのスマホのロック番号知ってるんです。だから、あの時あなたが圭佑さんに送ったメッセージも、着信履歴も、全部私が消してあげたんですよ。おばあさんの入院費だって、わざと圭佑さんに使い切らせたんですから」「あなたが祖母を死に追いやったんですか?一体、何のために?」「そんなの、あなたが自分の立場もわきまえず、いつまでも圭佑さんの周りをうろうろしているからですよ?あなたを追い出すためなら、どんな手だって使いま……」すると、ライブ配信のチャット欄は瞬時に荒れ、先ほどまで私を罵っていた人々が一斉に瑶子を批判し始めた。【最低!人のおばあさんを殺しておいて、あんなこと言えるなんて!】【もし自分の家族が殺されたら、私だってそいつを殺してやりたい!】圭佑もまた、顔を強張らせていた。祖母が死んだのが嘘ではないうえに、瑶子と彼のせいで祖母が亡くなったようなものだと気づいたからだった。当時のやり取りを思い出し、圭佑はようやく自分が私や祖母にどれほどひどいことをしてきたかを理解したらしい。祖母の治療費を奪って瑶子へのブレスレットに換えたことも、瑶子の言うことだけを信じて、私を悪者だと決めつけ、無理やり謝罪させたことも。あの病院で、瑶子に謝れと言った時の私の激しい抵抗を思い出し、なぜあんなに拒絶したのかを、圭佑も今ようやく悟ったみたいだ。た
圭佑は私からのメッセージだと気づき一瞬喜んだが、内容を読み終えるとすぐに顔を真っ青にした。すぐに、私を自分のライブに招待し、叫ぶように言った。「海外だと?いつの間に?まだ退職もしていないのに、どうやってビザを取ったんだよ!ビザなしで働くなんて違法だぞ!今すぐ戻ってこい。そうすれば情に免じて告発はしないでおいてやる。さもなければ……」しかし、脅し文句を吐かれる前に私は鼻で笑って、それを遮った。「さもなければ、何?圭佑、その脅しはもう通用しないよ。だって、私、1か月前に退職しているから」それを聞いた圭佑は言葉を失い、慌てて人事部の方に目を向ける。人事部の人間から「退職しています」という回答を得た圭佑の顔はみるみるうちに青ざめていった。「そんなはずは……」彼は苦悶に満ちた表情でカメラに向かって言った。「梨花、俺が海外に行けないと知っているのに、あえてこうやって俺を追い詰めるつもりなのか?」圭佑は家庭のトラウマから海外渡航を極端に拒んでいた。だからこそ、二度と関わらないために、私はあえて海外への移住を決意したのだった。だからこうすれば、私に帰国を促す考えを諦めてくれると思っていた。しかし、圭佑はまだ執着を捨てていなかった。「梨花、今どの国にいるんだ?詳しい場所を送ってくれ。今すぐチケットを買って迎えに行くから。どうしても外国がいいなら、俺もそこについていくよ」なんと、私と一緒にいるために、圭佑は過去のトラウマを乗り越えてでも、海外に来ると言い出したのだ。前の私なら感動したかもしれない。でも今の私は、何も思わなかった。「教えるわけないでしょ?二度と会いたくないんだもの。圭佑、以前言った別れ話は冗談じゃないから。本気だよ。私たちもう終わってるの」圭佑は絶句し、なんとか言葉を絞り出す。「いや、俺たちは終わってない。別れるなんて、俺は認めないぞ!梨花、心の中では君がまだ俺のことを好きなのはわかってる。じゃなきゃライブ配信になんか来ないもんな?俺が本当に悪かった。これからは、精一杯償うから。もう機嫌を直して、やり直そう、な?」圭佑の自分勝手さにあきれていると、会場の入り口の方から配達員の声が聞こえてきた。「鈴木様。谷口様からの贈り物をお届けに上がりました。サインをお願いします」