翌朝。 目を覚ました時。 最初に思い出したのは。 昨夜、隼人くんから届いた言葉だった。 『俺がいい時は』 『遠慮しないで呼んで』 枕元のスマホへ手を伸ばす。 画面を開くと。 最後のやり取りが、そのまま残っていた。 『会いたくなるから』 思い出しただけで。 胸の奥が、少しだけ温かくなる。 けれど。 今日は。 いつまでも、その余韻に浸っているわけにはいかなかった。 午後。 石川先生と大貴に会う予定がある。 以前。 久しぶりに研究室へ顔を出した時。 石川先生と。 また研究について話す機会を持った。 クリニックで患者を診るようになってから。 大学病院にいた頃とは違う疑問を持つようになったこと。 優から依頼されて参加したプロジェクトで。 臨床側の医師として意見を出す中でも。 研究につながりそうな問いが、いくつか見えてきたこと。 大貴とも。 また何か一緒に考えられるかもしれないと話した。 研究室へ行ったことは。 間違いではなかったと思う。 離れていた場所を。 必要以上に怖がらなくてよくなった。 研究をしていた頃の自分も。 そこで積み重ねた時間も。 全部なくなったわけではないと分かった。 でも。 だからこそ。 今の気持ちは。 きちんと伝えておきたかった。 *** 待ち合わせは。 大学病院の近くにある、小さなカフェだった。 店内へ入ると。 奥の席で、大貴が手を上げた。 向かいには。 石川先生が座っている。 「お疲れ」 「お疲れさま」 綾香が席へ着くと。 大貴が、テーブルの上の資料をこちらへ向けた。 「一応、ここまで整理した」 プロジェクトで出てきた論点。 そこから研究として検討できそうなこと。 大貴と石川先生が。 簡単にまとめたものだった。 綾香はページをめくる。 以前なら。 すぐに考え始めていた。 どのデータが使えるのか。 何を比較するのか。 どこまでなら一つの問いとして成立するのか。 今も。 考えようと思えば考えられる。 興味がないわけではない。 むしろ。 見ているうちに。 少しずつ頭が動き始める。 その感覚に。 懐かしさもあった。 「綾香」 大貴が、資料の一部を指で示す。 「この前話してたところ」 「うん」 「石川先生とも見たけど
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