「患者さんの状態が」看護師の声は。必要以上に大きくはなかった。けれど。昼間とは違う緊張が含まれていた。歩きながら続きを聞いた。先ほどまで会話ができていた患者が。急に強い痛みを訴え。顔色も悪くなっている。血圧も。少しずつ下がっている。「担当の先生には?」「連絡しています」「今、別の対応に入っていて」「分かりました」足を速めた。廊下の窓は。夜の色へ変わっている。外の街には。まだたくさんの明かりが見えた。けれど。病棟の中は。昼間よりも静かだった。人が少ない。だからこそ。何かが起きた時の音が。はっきりと聞こえる。病室へ入る。ベッドの上で。患者が身体を小さく丸めていた。額には。細かい汗が浮かんでいる。「白松です」声をかける。患者が。ゆっくりと目を開けた。「痛いですか」「……はい」短い返事。昼間に見た時とは。明らかに違う。患者の表情と。呼吸の速さを確認した。看護師が。直前までの変化を伝える。一つずつ聞く。痛みが始まった時間。場所。強さ。吐き気。意識の変化。答えを急がない。けれど。止まらない。必要なことだけを。順番に確認する。頭の奥では。いくつかの可能性が浮かんでいた。久しぶりの夜間勤務。何年ぶりかの急変対応。それでも。患者の前へ立った瞬間。怖さだけを考えている余裕はなかった。今。目の前にいる人が。昼間とは違う。その変化を。見落とさないこと。まず。それだけに集中する。「追加で確認をお願いします」看護師へ伝える。自分でも。必要な診察を進める。患者の身体へ触れた時。一か所だけ。強く反応が出た。「ここが一番痛いですか」患者が。小さく頷く。もう一度。表情を見る。怖い。そう言葉にしなくても。患者が不安を感じていることは分かった。「今、原因を確認しています」落ち着いて、伝えた。「一人にはしませんから」患者の目が。少しだけこちらを向く。看護師へ視線を移した。「担当の先生へ」「今の状態と」「私が確認した所見を伝えてください」「はい」「画像も」言いかけて。一度止まる。この病院で。夜間にどの順番で動くのか。まだ。完全には身についていない。分かったふりをせず。看護師へ確認する。「夜間の手順は」「
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