日曜日。外はよく晴れていた。歩道の白さが少し眩しい。車のドアを、優が開けてくれた。今日はスーツではない。白いシャツに暗めのパンツ。仕事の時より少しだけ柔らかい印象で、私は一瞬だけ目を逸らした。『行こうか』『……うん』返事をしながら、どこか妙な気分になる。夫婦なのに。四年も同じ家に住んでいたのに。こうして休日に二人で出かけることが、まるで初めてみたいにぎこちなかった。『車で大丈夫?』優が助手席のドアを開きながら聞く。『うん』『途中で気分悪くなったら言って。少し走るから』その言い方が丁寧すぎて戸惑う。昔はこんなふうに確認されたことがあっただろうか。記憶を探そうとして、すぐにやめた。探したところで見つからない気がしたからだ。助手席に座ると、車内にはほのかな清潔感のある香りが漂っていた。優がエンジンをかける。少しだけ沈黙が落ちた。けれど、不思議と息苦しくはない。ただ二人とも、何を話せばいいのか探している。そんな静けさだった。『寒くない?』しばらく走ったあと、優が聞いた。『大丈夫』『暑かったら温度下げるけど』『本当に大丈夫』そう答えてから、自分の声が少し硬かったことに気づく。優はそれ以上何も言わなかった。昔なら、こんなやり取りすらなかった。私は寒くても黙っていたし、優も気づかなかった。そう思うと、今の優の小さな気遣いが胸に引っかかる。今さら。そう思う。でも今さらだからこそ、どう受け取ればいいのか分からない。車は都心を抜け、少しずつ景色を変えていった。ビルの隙間から見える空が広くなり、道路の先に青が見える。海だ。そう気づいた瞬間、胸の奥が小さく動いた。『……海?』『前に好きだって言ってたから』『私が?』『うん。海を見ると頭が静かになるって』その言葉に息を止める。覚えていたのか。そんな話をした記憶がある。結婚して間もない頃だった。大学病院を辞め、急に時間だけができた頃。何をしていいか分からず、部屋の中で息が詰まっていた時期だ。その時、何気なく言った。海が好き。音があるのに静かだから。頭の中が少しだけ片付く気がするから。優は相槌を打っただけだった。興味があるようには見えなかった。だから忘れていると思っていた。『覚えてたんだ』『覚えてるよ』短い返事。それだけな
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