――リンゼン帝国 帝都セント・レグナス 市民集会所――「おい、皇帝勅令で暫定措置法が可決されたようだぞ」 「なになに? 元老院議員の補充と拡大? ちょうどいいんじゃねーか?」 「国が大きくなってんのに何百年も前の制度のままってのもな」 「金持ちどもが国政の責任を負うってのも気分がいいしな!」 一般市民にとっては元老院議員というのは雲の上の存在だったので、さしたる興味もなく迎え入れられました。直接自分たちの生活に関係のないこと、普段から感じていた富裕層に対する嫉妬も相まって、皇帝と宰相どちらに与する意見を持っているかに関わらずすんなりと受け入れられることが出来たのです。 ローゼンベルクを中心とする好戦派も、皇帝の次の出方を伺っているのか、特に抗議の声を上げることもありません。「これは希釈だな」 ローゼンベルクだけは真意を見抜いていましたが、民意の半分はまだこちら側にある状態。元老院議会といえども、議場の外を埋め尽くす民衆の声を完全に無視して議論を進めることはできません。まだ民意を操ることが出来ると考えた彼は、今のところ表立って対立するのではなく静観を選びました。 こうしてイストリアの描く図面の第一段階は、実に好調な滑り出しを見せました。そして彼女とヴィルヘルム、二人で考えた権力奪還作戦は第二段階を迎えます。 ――リンゼン帝国 帝都セント・レグナス 元老院議会―― イストリアが皇帝専用の一段高い議席に座って緊張した面持ちで見守る中、議会は静かに開幕を告げました。 その日、元老院会議の冒頭で発言をしたのは八人いる護民官の中でも筆頭に位置する若者です。彼は以前からはっきりと皇帝寄りの立場を取っており、それに目をつけたヴィルヘルムが今回の法案提出者として白羽の矢を立てたのです。まだローゼンベルクと表立っての対決を避けたい皇帝側にとっては願ってもない人材でした。 彼は自身の親ほど年上の議員が居並ぶ議場でも怯むことなく、堂々と演説を開始しました。「我が帝国はローゼンベルク大臣を始めとする功労者たちの功績もあって国力を取り戻しつつあり、先の戦争でも強大かつ勇猛果敢なハワード王国を相手に、真っ向から戦い敢闘出来るまでに強くなりました。これも帝国の父ともいえる元老院議員たちが力を結集した結果だと考え、ここに敬意を表します」 そう言って彼は優雅な
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