――リンゼン帝国 帝都セント・レグナス 市民集会所―― 今日は法案が提出されたわけでも、官職選挙が行われる日でもありません。 しかし、市民集会所には選挙の時よりも多くの人々が詰めかけていました。「主食すら満足に買えないとはどういうことだ!」「これだけ食料価格が暴騰してどうやって食っていくんだ!」「政府はいったい何をしている!」「皇帝がいなくなった途端にこれか!」「何の役にも立たない軍隊に兵糧を支給する余裕があるなら市場に回せ!」 人々は生きていくうえで絶対に欠かせない『食料』を満足に確保できない政府に対し、その不満と怒りを爆発させているのです。 皇帝が帝都にいた時期には決して起きなかった緊急事態。 軍がなくても人は動けますが、食料がなくなれば国民の生命そのものが脅かされます。 古今東西、どこの国の最高権力者でも、権力を握る以上はそれを支持する民衆に対して絶対に守るべき責務があります。 一、安全保障。大規模な外敵の侵入を防ぐことは国家にしかできません。 一、治安維持。国外だけでなく、国内でも安心して暮らせる状況を作り上げること。 一、食料の安定供給。これは言うまでもなく市民の生命そのものに直結することです。 この三点は絶対的に死守するべき最高権力者の責務であり、これらを満たした上に富の蓄積や生活水準の向上、利便性などのインフラ設備が整ってくるのです。 ローゼンベルクは現在、その責務とは正反対の極致にいます。外部では法的に正当な地位にいる皇帝という人物を、自らの行いで敵に回し、国内では食料の供給がほぼ停止。その上でデモの頻発という、三大要素を全て壊滅的な状態にしてしまい、それに対する有効な手立てを打てないまま本格的に困窮していくのを待っているしかできない。 帝国の心臓部たる帝都は、わずか数か月の供給制限という包囲網によって息も絶え絶えといった様相を呈していました。 こんな状態では他国に向かって軍を進めるなど、到底不可能。国民の不満は日増しに高まっていきます。 ローゼンベルクは暴徒を恐れ、皇帝廟から一歩も出られ
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