親友の中野若葉(なかの わかば)は、学力にまったく自信がなかった。だから、大学受験では総合型選抜に望みを託していた。しかし受験した大学はすべて不合格となり、一般入試での学力勝負から逃げることはできなかった。私・山田寧々(やまだ ねね)は学年1位の彼氏・中山真司(なかやま しんじ)に、彼女に勉強を教えてほしいと頼んだ。いつも優しい真司は、珍しく嫌そうな顔をした。「寧々、お前は今まであいつの面倒を見すぎだよ。あいつが支払えなかった学費だって、お前が自分の奨学金を使って助けてあげたじゃないか。家庭問題に苦しむあいつのために、お前が警察に連絡した後、あいつの両親に殺されそうになったのを忘れたのか?あいつの成績じゃあ、高卒でバイトしたほうが、一番現実的だろ」付き合って3年、私は初めて真司に怒った。「若葉は私の親友なの。大切な人なんだから、そんな言い方しないで!もし手伝ってくれないなら、別れる!」私と別れたくなかった真司は、仕方なく頷いた。その後、若葉の成績はどんどん伸びていった。私の努力もようやく実を結び、共通テストの自己採点が予想以上に高かった。手応えもきちんとあるから、真司と同じ難関国立大学を狙えるはずだ。しかし、WEB出願の締切直前、若葉は私の志望校を、絶対に届くはずのない東都中央大学へ勝手に変更した。そして真司は、それを横で見ているだけで止めようとしなかった。志望校変更の締め切り時刻は17時ちょうど。今は、17時02分。若葉のクリック一つだけで、私の3年間の努力が、一瞬で水の泡となった。私は振り返り、声を震わせながら尋ねた。「どうして?」若葉は私の親友のはずなのに。共通テストが終わった日には、私を抱きしめて「お疲れ!」と笑顔で言ってくれたのに。今、私の志望校を勝手に変えて、進学の道を断つなんて。若葉は青ざめ、涙をこぼした。真司が、そんな若葉の前に立ちはだかって、私を見つめながら、どこまでも冷静な声で言った。「寧々。お前のWEB出願サイトのパスワードは、俺が若葉ちゃんに教えたんだ」説明や言い訳ではなく、ただ事実を淡々と述べただけだった。さっき若葉が私の志望校を変更している時も、真司はすぐ傍らに立っていた。私が画面を確認しようとするのを、わざと邪魔するみたい
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