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第3話

Author: べつに
私は背を向け、一度も振り返ることなく真司の家を後にした。

家へ帰る道中、スマホが鳴り続けていた。

真司からではなく、若葉からだ。

次から次へとメッセージの通知が表示される。

【寧々、本当にごめんなさい】

【気の迷いだったの。ただ、寧々と離れ離れになるのが怖くて……】

【許して、お願い……】

私は返信しなかった。

若葉のアイコンをタップして、プロフィール画面からブロックした。

家に帰ると、両親がリビングでテレビを見ていた。

母は私の姿を見るなり、笑みを浮かべて出迎えてくれた。

「寧々、おかえり。志望校登録はどうだった?真司くんと同じ大学にできた?」

私は母の顔を見つめた。

目尻の細かいシワ、白髪の混じり始めた髪、瞳の奥に隠しきれない期待の色。

私は口を開いた。「お母さん……」

そう呼んだだけで、外で必死に取り繕っていた冷静さが、一瞬にして崩れた。

私は泣きながら母の胸に飛び込んだ。「お母さん、私、行く大学がなくなっちゃった」

私はすべてを打ち明けた。

真司が若葉に自分の出願サイトのパスワードを教えたこと、若葉が私の志望校を勝手に書き換えたこと、それを傍観していた真司が若葉を可哀そうだと言ったことを。

話し終える頃には、私は全身を激しく震わせていた。

一人は6年間想い合ってきた人で、もう一人は私の親友。

その二人が結託して、私の今までの努力をただの笑い話に変えたのだ。

父は激怒し、警察に通報しようとした。

母は涙を拭いながら父をなだめた。「警察に突き出したところで何になるの?犯人を捕まえたって、もう志願は出せないわ……」

母は私を振り返り、声を震わせながら言った。

「寧々、お母さんが今すぐ大学に電話して、まだ間に合うかどうか聞いてみるから」

私は静かに首を振った。

「もう聞いたの……どうにもならないわ。他の大学を志望してることになってるし、それを変更できる期限も過ぎたの」

部屋は数秒ほど静まり返っていたが、突然鳴り響いたインターホンの音が、その静寂を破った。

私がドアを開けると、そこに立っていたのは真司だった。

「何しに来たの?私たち、もう別れたんでしょ」

私は扉を閉めようとしたが、真司が一歩踏み出してドアの隙間に身体を滑り込ませた。

彼は少し不快そうに言った。「寧々、そんなことを二度と口にするな。俺はそういう冗談が嫌いだ。

それから……」

真司は私を真っ直ぐ見据えた。「若葉ちゃんをブロックしたのか?彼女はずっと泣いてるぞ」

私は呆気にとられ、次の瞬間には笑っていた。

ほんの一瞬でも、真司が私に謝罪しに来てくれたのだと期待した自分が馬鹿だった。

結局のところ、すべては若葉のためなのだ。

「何?若葉の涙で心を痛めたわけ?

それともまた、可哀そうだと思った?今度は私に何を諦めさせて、若葉の機嫌を取るつもり?」

真司は目に見えて顔色を悪くした。

「寧々!俺と彼女の間には何もない!そんな言い方はひどいだろ!」

「私の志望校が勝手に変えられて、3年間の血の滲むような努力が全部無駄になったのに、私にひどいことを言う権利すらないの?

真司、私はもっとひどい言葉だって吐き出せるわよ。聞いてみる?」

真司は私を見つめ、がっかりしたような表情になった。

「寧々、お前はいつからそんなに器の狭い女になったんだ?若葉ちゃんはお前の親友だろう?」

親友。

その言葉が、まるで鋭利な刃となって私の心に突き刺さった。

高校1年の時、若葉が学費を払えなかったから、私は1年間貯めた奨学金をすべて彼女に差し出した。

高校2年の時、若葉の両親が学校に怒鳴り込み、若葉に学校をやめさせて金持ちの男と結婚させようとしたのを、私が身を挺して警察に通報した。

その結果、私は逆恨みされた。若葉の両親は不良を雇い、私の左目を失明寸前までに痛めつけた。

高校3年の時、若葉が総合型選抜に失敗したから、私は自分の恋人に彼女に勉強を教えてほしいとお願いした。

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