携帯を持つ玲の手が震えた。 玲は空いている手で口元を覆い隠す。 画面に並ぶ文字が、一瞬、現実のものとして脳で処理されない。 実家にいるはずの渚が、予定を切り上げて戻ってきた。それどころか、他の誰でもない『宮原君』に会いたいと、自分から予定を訊ねてきている。 (こんなこと、初めてだ) その事実を理解した瞬間、玲の脳内の回路が、歓喜と衝動で一気にショートしそうだった。 渚の声を、今すぐにでも聴きたかった。 彼女がどんな気持ちでこの文章を打ったのか、何故自分に会いたいのか、理由を今すぐ知りたい。 気付けば玲は、渚に電話していた。 コール音が止まり、渚の声が聞こえるより早く、玲は食い気味に声を張り上げた。「――渚!? 今、もうこっちに戻ってるの!?」 玲が携帯の向こうへ放った叫びは、自分でも驚くほど高揚していた。 背後で「玲? どうしたの急に大声出して……」と怪訝な顔をしている母親の視線など、今の玲には一切届いていなかった。 玲の鼓膜を支配しているのは、コール音が切れた後に繋がった渚の声だった。「会えるよ、もちろん会える!」 玲は捲し立てるように言葉を重ねる。『宮原君の暇な日ってい』 「毎日暇! 今から会いに行けるよ!」 聞こえかけた渚の言葉を、玲は完全に遮って言い放った。「今すぐ渚に会いたい」という純粋な熱量と衝動だけが、言葉になって溢れ出す。 「今からいく! いつもの校門の前で待ってて!」 『うん、待ってる』 その言葉を聞いただけで、玲の胸になんとも言えない感情が胸に湧きあがった。 自分の胸を、こんなにも甘く苦しめるのは、渚しかいない――玲は目頭を熱くさせた。「あっ! 暑いから外で待たないでね! 着いたら連絡するから!」 炎天下の中、渚が外で待っている情景が浮かんで玲は付け足した。『ふふ、分かった。ありがとう』 通話を切ると、玲はまだ激しく脈打つ心臓を押さえた。視界が霞んでしまうほどの興奮で指先が震えて
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