Alle Kapitel von 壊したいほど好きだから、: Kapitel 11 – Kapitel 16

16 Kapitel

第1章:009

※ ※ ※ 金曜日の夕暮れ、玲は渚の好きな焼き菓子を手に提げて、渚の会社近くの駐車場に向かった。 渚がいつも停めている区画に目をやるも、白い軽自動車がなかった。 (……?) もう一度、確認する。間違いない――渚の車が、ない。 残業中なら、車はここにある筈だ。 玲は近くのコインパーキングに車を止めると、迷いのない足取りで渚の会社の入口へ向かった。ビルのエントランスから、退社する従業員達が出てくる。女性ばかり。 玲は入口で立ち塞がる守衛に、玲はビジネスマンらしい、隙のない微笑を向けた。 「すみません、営業の者なんですが、今から中に入ることはできますか?」 守衛が時計を一瞥した。 「この時間はちょっと難しいですね。それと、弊社は働き方改革で残業は基本的にないので、ご用件があれば明るい時間帯にいらしていただいた方がいいですよ」 「……そうですか。失礼しました」 玲は頭を下げ、その場を離れた。 夜風が冷たかった。 手の中の焼き菓子の袋が、やけに重かった。 渚のために用意したそれが、急に意味のないものに変わった。 (残業は、基本的にない) 渚が言っていた。毎週金曜日、残業が入ると。 (嘘だった) それだけだった。それだけのことだった。 なのに。 玲は歩きながら、その言葉を何度も頭の中で繰り返した。繰り返す度に、胸の奥で何かがゆっくりと形を変えていく。 (どこに行った?) 誰と? 何をしている? 玲は答えを出すことなく、夜の中を歩き続けた。どこへ向かうのかも決めないまま。 ※ 玲の部屋のドアが開く音がして、玲はいつものように穏やかな微笑みで渚を迎え入れた。だが、その胸中には、数時間前に自分の目で確かめてしまった「事実」が、冷たい澱のように沈んでいる。 駐車場に渚の車はなく、守衛からは「残業などない」と告げられた。 それなのに、渚は少し疲れたような顔をして、玲のために買ってきたというコンビニの袋を差し出した。 「玲、お疲れ様。……これ、プリン。帰りにコンビニで買ってきたの」 玲は「ありがとう」と礼を言い、その黄色いパッケージを受け取った。 夕食は、もはや砂を噛んでいるようだった。ここは自分の家で、目の前には愛する女がいて、彼女は自分のためにプリンを買
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-05-25
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第1章:010

「……っ、」 小さく息を呑んで、渚が指を引こうとする。玲はそれを逃さなかった。 指先を軽く唇で挟んで、それから離した。 渚の耳まで赤くなっている。そのあどけない反応が、さっきまで胸の奥に沈んでいた冷たいものを、じわりと溶かしていく。 (……やっぱり、渚だけだ) 玲は渚の顔をじっと見た。 「いい?」 渚は答えなかった。ただ、ゆっくりと、小さく頷いた。 顔が赤いまま、視線だけが玲を見ている。 玲は渚の顎に手を添えて、ゆっくりと顔を近付けた。 触れるか触れないかの距離で、一度止まった。 渚が目を閉じた。 それを確認してから、玲はそっと唇を重ねた。 柔らかい唇をゆっくりと喰む。さっきのプリンの甘さと、渚が塗っているリップクリームの香りが混ざって、舌先に滲んだ。 彼女の甘さを味わってから、玲はゆっくりと名残惜しそうに唇を離した。 渚の額に己の額を軽く当てて、瞳を真っ直ぐに見つめた。軽く触れるだけのキスで、渚の瞳が潤む。その顔を見る度に――もし深くしてしまえば、渚はどのように乱れてくれるのだろう。 「……いい?」呼吸を整えようと、渚は肩を小さく上下させていた。 「……シャワー、まだ浴びてないから……」 それは拒絶ではなく、彼女なりの照れや躊躇いだった。玲もそれは分かっている。いつもなら「いいよ、待ってるね」と、穏やかに彼女の髪を撫でて送り出すはずだった。けれど、今の玲にその余裕はなかった。 (渚は、どこにいた) 誰と。何をしていた。自分の知らない時間の中で、渚は笑っていたのか。 一秒でも早く、彼女を自分の一部にしたい。彼女の肌に刻まれた、自分の知らない一日の痕跡をすべて塗り潰したい。 「終わっても入るから、同じだよ」玲はそう囁き、渚の唇を再び塞いだ。浅く、角度を変えながら、何度も。渚の吐息が乱れていく。 「……あっ、」 玲はソファに座る渚の膝裏に腕を差し入れ、軽々とその身体を持ち上げた。 突然の浮遊感に、渚が驚いて玲の首に腕を回す。その腕の力が、玲の独占欲を激しく刺激した。(このまま、離さないでくれ)玲は渚を抱き上げたまま、寝室へと歩を進める。 一歩踏み出すたびに、腕の中の温もりが自分のものだという実感が強まっていく。 ベッドに横たえられた渚は、不揃いなミディアムストレートの髪をシーツに散らし、恥ずかしそうに視線
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-05-25
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第1章:011

※シーツの海に沈んだまま、玲は隣で微睡む渚の、不揃いな毛先を指で弄んだ。確かめなければ、死んでしまいそうだった。言葉という、形のない、けれど今の玲にとっては唯一の命綱を。「……俺のこと、好き?」暗闇に、玲の掠れた声が落ちる。渚は瞳を閉じたまま、夢の淵から戻ってくるように小さく答えた。「うん」「……好き?」もう一度、念を押すように。縋り付くように。渚は玲の不安を打ち消そうとするかのように、熱を持った声で微笑んだ。「大好き」「俺は、愛してる」それは、告白というよりも独占の宣言だった。「うん」「俺のこと、愛してる?」玲の指先が、僅かに震える。渚は玲の首筋にそっと手を回し、引き寄せるように答えた。「愛してる」その言葉を聞いて、玲はやっと、肺に溜まっていた熱い空気を吐き出した。嘘でもいい、と一瞬思った。彼女の「残業」が偽りであっても、今この瞬間に自分を「愛している」と言ってくれるなら、それでいいはずだった。玲は愛おしさを抑えきれず、彼女の柔らかな頭を何度も、何度も撫でる。「……シャワー、浴びてくる?」先ほど、自分が強引に止めてしまったことを思い出し、優しく促した。だが、渚は玲の瞳をじっと見つめ返すと、子供のように首を横に振った。「……くっついていたい」そう言って、彼女は玲の胸元に顔を埋め、子猫のように甘えて擦り寄ってきた。玲はその細い肩を抱き寄せながら、充足感に包まれる。彼女は今、俺の胸の中にいる。俺の匂いを嗅ぎ、俺の体温を求めている。――けれど、どうして。こんなに密着しているのに、彼女が腕の間から擦り抜けて、どこか遠い場所へ消えてしまいそうな予感が、影のように玲を追いかけてくるのか。(俺に、言えないことがあるの
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-05-26
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第1章:012

※ 渚は携帯を手に取ると、オフィスを出て非常階段の踊り場へ向かった。 重いドアを押し開けると、冷たい空気が流れ込んでくる。渚はコンクリートの壁に背中を預けて、通話ボタンを押した。 「もしもし、渚。お昼中にごめんね」 低く、穏やかな声。 それだけで、さっきまで胸の奥に這い上がってきていたものが、すうっと引いていった。呼吸が、少しだけ楽になる。肩の力が抜けていく。 玲の声は、いつもそうだった。どんな時でも、この声を聞くと渚の中の何かが静かになる。 「ううん、大丈夫だよ」 自分でも驚くくらい、普通の声が出た。 「ちゃんと食べてる?」 「食べてる。玲こそ、お昼は?」 「俺は後で食べるよ。渚の声が聞きたくて」渚は笑った。 玲が自分を好いていてくれることが、嬉しくて。 優しくて、頼りがいがあって、思いやりがあって。 私にはもったいない最高の彼氏。 (本当に、私でいいの?) 「……玲」 「ん?」 「なんでもない」 何を言おうとしたのか、分からなかった。本当に私でいいのか訊こうとしたのか。 それとも、ありがとう、好きだよ、と伝えたかったのか。 名前を呼びたかっただけだったのか。 「渚?」 「うん」 「今日、仕事終わったら連絡して」 「うん」 「今週の金曜日、何が食べたい?」 「ふふっ。もう金曜日の話?」 「渚と会える金曜日が好きなんだ。毎日が金曜日だと嬉しい」 渚は笑った。 「玲のグラタンが毎日食べたい」 「ははっ」 嬉しそうな声だった。 渚も、つられて微笑む。 踊り場の冷たい空気が、少しだけ温かく感じた。 「今週の土曜日、外に食べに行かない? 美味しいパスタのお店教えてもらったんだ」 「うん、行きたい」 渚の返事を聞いて、玲の嬉しそうな声が渚の耳を擽った。 「渚、また後で。電話して」 「うん。後でね」 電話が切れた。 踊り場に、渚一人が残された。コンクリートの壁に背を預けたまま、暫く動けなかった。 玲から未来の話をされると安心する。私は一緒に居ていいと許されている気がするから。 ずっと、ずっと渚は考えていることがある。 本当に自分でいいのか。玲にはもっと相応しい人がいるのではないか。 高校三年生の夏、玲に告白をされた時に一度は振った。それで終わりにすべきだった。その後、彼に連絡をしてし
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-05-27
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第1章:013

※ 電話を切った直後、玲の頭の中は渚でいっぱいだった。 グラタン。土曜日のパスタ。渚の「ふふっ」という笑い声。 それだけで、今日一日乗り越えられる気がした。 エレベーターのドアが開く。玲はスマートフォンを内ポケットにしまい、フロアに踏み出した。 玲は自分のデスクに戻り、椅子に座った。 モニターに映るのは、仕事のデータ。 (渚、ちゃんと食べてるかな) そこまで考えて、すぐに別の考えが割り込んでくる。 (金曜日……どこに行っているんだ) 残業はない、と守衛は言った。毎週金曜日、渚は嘘をついている。理由が分からない。他の男と会っているのか。そんなはずはない。でも、そんなはずはないと思いながら、頭の中は最悪の想像で埋まっていく。 玲は引き出しを開けた。 二台目の携帯を取り出す。 マッチングアプリを開いた。 (渚が嘘をついている理由が分からない) 画面をスクロールしながら、玲はそれだけを考えていた。 自分が嘘にまみれた人間だということは、分かっている。それでも――渚の嘘だけは、耐えられなかった。 プロフィールが流れていく。顔。年齢。一言コメント。 どれも、見ていなかった。 「宮原さん、お時間よろしいですか」 声がして、玲は携帯を引き出しにしまった。 振り返ると、後輩の田中が書類を手に立っていた。 「あ、はい。どうぞ」 柔らかい笑顔。穏やかな声。 頭の中に残っていた渚の笑い声が、遠退いていく。 「先方からの修正依頼が三点ありまして」 「うん、見せて」 書類を受け取る。目を通す。的確にコメントを返す。 誰も、気付かない。 渚のことを考えながら、マッチングアプリでセックスの相手を探していたことも。この胸の奥に、誰にも見せない場所があることも。(俺の表面しか見ていない) 渚には、この裏面を知られてはいけないのだ。 「助かりました。宮原さん、いつも対応早いですね」 「そう? 田中さんがまとめてくれてるから助かってるよ」後輩が嬉しそうに頭を下げて去っていく。 玲は顔に笑みを貼り付けたまま、モニターに向かった。誰もいなくなった瞬間、笑みが消えた。 引き出しを開ける。二台目の携帯を取り出して、画面を見つめた。 暫く見つめた後、玲は携帯を中に戻し無言のまま引き出しを閉めた。 立ち上がり、上着を手に取る。 「外回り
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-05-27
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第1章:014

※ 自宅のマンションとは違う玄関ドア。黒いカードキーをタッチすると解錠音が鳴る。玲は勢いよく玄関ドアを開けた。 玄関に入ってすぐ、鞄と上着を投げ捨てる。靴は脱ぎ捨て、向かった先はシャワー音がする風呂場だった。 浴室のドアを勢いよく開けた。シャワーの音が、一気に大きくなる。 真央が振り返った。驚きで目が見開く。 玲は何も言わず、服のまま、風呂場へ踏み込んだ。シャワーの飛沫が、スーツを濡らした。 ベルトの金具を外しスラックスの前を寛げる。真央が言葉を発しようとしているのが視界に映ったが、玲はその声を聞きたくなかった。 真央の肩を掴んで、壁に押しつける。 「ちょっ――」 声を遮るように、玲は真央を前から貫いた。 真央の息が、詰まった。 シャワーの熱で温まったタイルと、真央の肌の熱。その境界線で、玲は荒い呼吸を繰り返しながら腰を叩きつけた。 真央の両手が玲の背中に回ってきた。落ちないように、必死にしがみ付かれ、耳元で真央の淫声が叫ばれる。 肉体同士が衝突する野卑な音と嬌声が、狭い室内にワンワンと反響する。 「……っ、ふ、あ……っ! 玲、っ……あぁぁっ!」真央の声が、濡れた壁に反射して玲の鼓膜を刺した。その艶めいた声は、玲が今最も拒絶したい渚以外の不純物だった。 「黙れっ」玲は真央の喉元を片手で抑え込み、逃げ場を奪うように壁へと押し付ける。だが、真央は挑発するように口角を上げ、更に高く、甘い声を張り上げた。 「……嫌。もっと、聴いてよ……っ、玲のっ、こんなに……っ、あぁぁ!」腹の底から湧き上がる苛立ちが、玲の理性を焼き切った。 彼は真央の腰を強引に抱え上げ、自身の剛柱を、更に深く、容赦なく突き立てた。 「っ、ひ、が……っ!!」言葉が悲鳴に変わる。玲はわざと速度を速め、最奥にある子宮口を亀頭で執拗に叩き始めた。 一突きごとにゴツリと鈍い衝撃が真央の身体を貫き、内側から強制的に声を奪っていく。 「あ、っ、ご……っ、あ、っ……!」叩きつけられるたびに、真央の視界は白く火花が散った。 声を出す余裕など、もうどこにもない。 子宮口をダイレクトに抉り抜かれる衝撃は、苦痛を通り越して脳を麻痺させるほどの快楽となり、彼女の身体を激しく痙攣させた。 「……そうだ。そのまま、何も喋るな」玲は冷徹な瞳で、絶頂のあまり白目を剥きかける真央
last updateZuletzt aktualisiert : 2026-05-28
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