目を覚ましたとき、サラリアがまず感じたのは金属が錆びたときのような臭いだった。ぼんやりした頭で体を起こし、ようやく自分が床に倒れていたことに気づいた。そのくらい、何が起きたのか理解できていなかった。顔にかかる髪を退けようとして、手のひらについた血に気づいた。真っ赤な血に対する反射的な恐怖心で動いたとき足が何かを蹴った。からんと金属音が響いた。視線をそちらに向けると短剣が床に転がっていた。その刃には血がべったりと付着していた。サラリアは一瞬呼吸が止まったが、視線はゆっくりと動いていた。「ひっ」血まみれのシーラが立っているのが見えた。白いドレスが赤く染まり一部は黒くなってもいたけれど、シーラは満足気だった。「お嬢様、異常はありませんか」そう問い掛けたのはサリンドラ家の魔法師だと紹介された男の一人だった。「気に入らない臭いだけど我慢するしかないわね。そろそろラーシュが戻る頃よ、急いで去りなさい」シーラの命令に従い、彼らはどこかへと消えていった。サラリアの頭は真っ白で、何があったのかは分からないが、シーラと二人きりという状況には怖さしかなかった。なにが。どうして。サラリアが混乱していると、「予定通りね」とシーラは小さく呟いた。何が予定通りなのか。サラリアがそう思った瞬間だった。バタバタと激しい足音が聞こえたと思った瞬間―――。「いやぁぁぁぁっ!!」シーラが突然、耳をつんざくような悲鳴を上げた。次の瞬間、扉が外から勢いよく開かれる。「サラッ!」ラーシュが部屋へ飛び込んできて、サラリアは反射的にラーシュに手を伸ばした。助けて、そう言いたかった。怖かったのだと、苦しかったのだと、ラーシュに抱き締めてほしかった。安心させてほしかった。けれどラーシュは、サラリアから少し離れたところで止まった。驚いてサラリア
Last Updated : 2026-05-24 Read more