目を覚ました時。最初に感じたのは鉄が錆びたような臭いだった。ぼんやりとした意識のまま身体を起こす。頭が重い。視界も霞んでいる。何が起きたのか分からない。自分が床へ倒れていたことに気づくまで数秒かかった。顔にかかった髪を払おうとして、サラリアは手を止める。手のひらが赤かった。血。その色を認識した瞬間、心臓が大きく跳ねた。反射的に身体を動かす。その拍子に何かを蹴った。からん、と乾いた金属音が響く。床に転がっていたのは短剣だった。刃には血がこびりついている。嫌な予感がした。呼吸が浅くなる。ゆっくりと顔を上げた。そして。「ひっ……」シーラが立っていた。白いドレスは血に染まっている。腕も。胸元も。頬にまで血が飛んでいた。それなのに。シーラは笑っていた。満足そうに。まるで望んだ結果を手に入れたかのように。「お嬢様、異常はありませんか」男の声がする。サリンドラ家の魔法師たちだった。「少し臭いが気に入らないけれど我慢するしかないわね」シーラは平然と答える。「そろそろラーシュ兄様が戻る頃よ。急ぎなさい」その言葉に男たちは去っていく。サラリアの頭は真っ白だった。何が起きたのか分からない。分からないのに。シーラと二人きりでいることだけは恐ろしかった。逃げたい。けれど身体が動かない。「予定通りね」シーラが小さく呟く。その意味を考えるより早く。突然。廊下から激しい足音が聞こえた。.「いやぁぁぁぁっ!」シーラが悲鳴を上げた。耳を裂くような悲鳴だった。次の瞬間。扉が勢いよく開く。「サラ!」ラーシュだった。サラリアは反射的に手を伸ばした。助けて。そう言いたかった。怖かった。苦しかった。抱き締めてほしかった。いつものように大丈夫だと言ってほしかった。けれど。ラーシュは止まった。サラリアへ駆け寄らなかった。その場で立ち尽くした。サラリアは顔を上げる。そして。ラーシュの表情を見た。驚愕。混乱。信じられないものを見る目。その視線にサラリアの胸がざわつく。嫌な予感がする。「サラ……」ラーシュが呟く。その声は震えていた。「シーラに何をした?」世界が止まった。何を言われたのか理解できない。血まみれのシーラ。短剣。床に座り込む自分。状況だけ見ればそ
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