ラーシュが目を見開いた。怯えて後ずさるサラリアを見て、深く傷ついたような表情を浮かべる。その顔を見た瞬間、サラリアの胸が痛んだ。(……どうしてそんな顔をするの)傷ついたのは自分のほうだ。信じなかったのはラーシュだ。シーラの言葉を選び、自分を罪人として塔へ閉じ込めたのもラーシュだった。なのに。(どうしてあなたが傷ついた顔をするの?)理不尽だと思った。胸の奥が締め付けられる。苦しい。それでも、その苦しさは怒りだけではなかった。まだ好きだから。まだ、この人を完全には嫌いになれていないから。それが何より苦しかった。揺れる視界の向こうで、ラーシュの金色の瞳だけが滲んで見える。腹の痛みのせいなのか。込み上げる感情のせいなのか。自分でも分からない。目の奥が熱くなる。それでも涙だけは堪えた。もうこれ以上、この人の前で泣きたくなかった。「近づかない……だから」ラーシュの掠れた声に、サラリアの肩が震えた。反射的に首を横へ振る。そして、さらに一歩後ろへ下がる。「待て!」低い声が響く。サラリアはびくりと身体を震わせた。その反応を見たラーシュが動きを止める。その瞳に浮かんだのは痛みだった。「大きな声を出してすまない」苦しそうに息を吐く。「近づかないから……もう動くな」その声音は優しかった。甘く。柔らかく。サラリアが恋をした頃と同じ声。抱き締められながら何度も囁かれた声。 『本より俺を見ろ』そう拗ねて笑った声。眠る前、髪へ口づけを落としながら。 『愛している』そう囁いてくれた声。全部同じだった。だからこそ苦しい。(どうして……)どうして今さらその声を向けるの。嫌いになったはずだった。嫌いにならなければ生きていけなかった。それなのに、その優しさへ縋りたいと思ってしまう。そんな自分が惨めだった。.「話をしよう」ラーシュが静かに言う。壊れ物へ触れるような優しい声。その一言が、サラリアの心を静かに逆撫でした。「……話?」自分でも驚くほど冷たい声が出る。ラーシュが息を呑んだ。「ああ……」「私なんかと?」ラーシュの表情が凍る。その反応を見てサラリアは少しだけ胸がすいた。分かっているのだ、この人も。あの言葉がどれほどサラリアを傷つけたのか。 『人族なんか』あの
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