家ごとの引っ越しは、驚くほどあっさり決まった。建物は取り壊すのではなく、建っている土地ごと切り取り、そのままドラコニアへ運ぶらしい。「今日中には住めるようになります」そう説明されたとき、サラリアは思わず聞き返してしまった。「……今日中に、ですか?」「ええ」オーレリウスはこともなげに頷く。「竜族は力仕事が得意ですので」得意。それだけで済ませるには、あまりにも規模が大きい。竜族の機動力に、サラリアはただ感心するしかなかった。◇「やっぱりねぇ」別れの挨拶へ向かったハンナは、サラリアを見るなり優しく笑った。「リアちゃんは、ずっとここにいる子じゃないと思ってたわ」「そんなふうに見えていましたか?」「見えてた見えてた」ハンナは笑いながら頷く。「どこか旅人みたいだったもの」サラリアは苦笑した。否定はできない。ずっと逃げ続けてきた。ようやく見つけた居場所だった。でも、それでも心のどこかでは、また離れる日が来るのではないかと思っていた。違う。来る―――そう確信していた。.「店まで持っていってしまって、ごめんなさい」「何を言ってるの」ハンナは軽くサラリアの手を叩いた。「気にしなくていいのよ」そして、店のあった場所へ視線を向ける。「更地になるなら、あそこに学校を建てようって話になってるの」「学校?」「ええ」嬉しそうに目を細める。「読書仲間と話してたの。本を読むだけじゃもったいないって」「せっかく覚えた文字なんだから、子どもたちにも教えようって」「計算もね」「お母さんたちには子育てや暮らしの知恵を教え合ったり」夢を語るハンナは、
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