ここは夢の中。クリスカさんのちょっぴり激しい吸血で眠らされてしまった私の頭の中の世界。 アンティーク家具が犇めくノスタルジックなお屋敷の寝室。多分、行ったことのない私の想像の産物です。 真っ白なシーツを乱すクリスカさんの手から力が抜けて、眠るように安らかな表情に変化していきます。知らない使用人がハンカチで目尻を撫でて、私は茫然と立ち尽くして冷たい手を必死に握っていました。「私を」 見捨てないで。言い募ろうとして唇が凍り付きました。 お願い。捨てないで。私も連れて行って。貴方が連れ出したのだから、連れて行ってください。先に逝かないで。私を、また一人にしないで。「クリスカさん!」 「わぁっ吃驚した!?」 掛けられていた厚手の布団を天井に突き飛ばした私は、現在地がいたはずのレストランではなく私達に宛がわれた部屋であることに気がつきます。後ろで控えていたはずの記憶が途中からは断片的に残されていたからか、この光景に既視感を抱きつつも時計の針が確実に進んでいるからタイムリープはしていない。 つまりここは紛う事のない現実で、あそこで寝てしまった可能性が高い。それを裏打ちするようにフリルの配された純白のエプロンは脱がされていました。「申し訳ありません! 私ったら寝てしまったみたいで!」 「ミイラかと思うくらいのお目覚めだったね。魘されてた?」 「……はい。クリスカさんが一人、天国へ旅立ってしまう……そんな夢を見ました」 アレが正夢にならないことを心の中で願いながら告げます。「そ、そう。吸血鬼が死ぬ夢なんて珍しいわね。殆ど永遠に近い命だというのに」 「そうですよね。あっでも、それって血の盟約を交わさないといけないって習った気がしますよ。見込まれた眷属が吸血鬼の主様と永遠を誓うための儀式とかって」 なんでも眷属と結ぶと吸血鬼は一生に近い命を得るらしい、と使用人に憧れていた私が家の者から習った知識です。 少しだけ狼狽えたようにも見えたクリスカさん。まさか私の口から吸血鬼が死ぬなんて単語が出て驚いただけで、すぐに平静な心持ちに戻りました。「熱でもあるのかな私。クリスカさんの前では失敗してしまうし、ましてこの服を着て寝るなんて」 「良い反応だったわ。主人の護衛についても申し分なしね」 「私を試されていたんですか?」 「まぁね」 顔が青ざめました
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