「あの子たち、白紙の意味をしっかり理解したかな?」 「大丈夫よ。そんなに鈍感じゃないわよあの二人」 夕方の湯楽屋の一室。日当たりが悪く滅多に客の入らないその和室は、数十年前から専らクリスカ用になっている。 横長の座卓に茶を淹れて向き合うクリスカと美喜恵。「たまには事前に連絡したらどう?」 「連絡しているわよ。何か不満?」 「もっと前から連絡しろってことよ。カレンダーに印付けて、待ち遠しいなってソワソワできないから」 「いいわよそんなことしなくて。年甲斐にもない」 「あら、こんな体にしたのは誰の」 「はいはい私のせいです。もう耳にタコが出来てるわよ、美喜恵っていつも意地悪」 「ふふーん。好きな子には強情張れないのよね。そこが憎くも可愛いけれど」 「うっさい!」 ガサツな返事でクリスカは茶を啜る。それからしばらく黙りこくって美喜恵が茶を一口飲むと苦しそうな引き絞る声色で尋ねる。「盟約の日まで、あと何日?」 虫の報せというには、タイミングが計られ過ぎていた。美喜恵にさえ打ち明けていなかったのだが、ただ知っていても不思議ではない。「……そうね。あと月が何周かした頃だと思うよ」 「はぐらかさないで。わかるのよ。前よりやつれてる。多分これが最後でしょう?」 「馬鹿ね。まだ死ぬ気は毛頭」 「無理して、誰かを安心させようとするのはもうやめてよ。クリスカのそういうところが嫌いよ」 「そりゃどうも。でもね、どうしようもない。天寿よ」 濁すに濁せず、視線を泳がせながらクリスカは言う。「天からのではないでしょう。貴方が、ただ助かる道を、生きる道を放棄しているだけよ。そんなの」 「そうよ。私にとって、もうこの世界は居るべきところじゃないの。ずっと旅を続けながら考えてきた。もう百年も生きたのだから終わらせてほしいって」 いつも身勝手な彼女だが、美喜恵は言い淀む。望み通りにすべきなのは重々理解している。人の人生なのだから、過干渉は避けるべきだ。 その信念を貫き、前々から心に留め置いていた。彼女自身の人生、鬼生ともいうべき一生なのだから。 けれど死を望んでいる、すでに見切りをつけているからと言って目の前で大切な人に死なれるのはあまり良い気分ではない。死の瞬間を明確に知っていれば尚更だ。「遺される人の気も知らずに……」 「……ごめんなさい。死に
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