炎真は薄い唇を冷たく引き結び、しばらく黙ってから、ゆっくり口を開いた。「構わない。どうせ柊馬が好き勝手できる時間も、そう長くはない」そう言いながら、炎真は手を伸ばして茂雄の部屋のドアを押し開けた。室内では、医療機器が規則正しく電子音を刻んでいる。茂雄は青白い顔で病床に横たわり、両目を閉じ、か細い呼吸を繰り返していた。重い病に侵され、いつ息を引き取ってもおかしくない姿だった。ベッド脇にいた医師は炎真を見ると、すぐに恭しく腰を折った。「炎真様」炎真はわずかに頷き、外へ出るよう促した。医師は声を落とした。「ご当主の病状は重く、長時間おそばを離れるわけにはいきません。炎真様、どうかご理解ください。十分後には戻ります」医師は夜隼とともに部屋を出て、静かにドアを閉めた。室内に二人だけが残ると、炎真は車椅子に座ったまま、病床を淡々と見つめ、静かに口を開いた。「もう芝居はいい」その声が落ちた瞬間、今にも死にそうだった茂雄が、ぱっと目を開いた。その目には鋭い光が宿っている。病人らしさなど、どこにもなかった。茂雄は勢いよく上体を起こした。死を待つ老人とは思えないほど、動きはしっかりしている。薄い毛布が掛けられた炎真の両脚へ震える手を伸ばすと、老いた目をみるみる赤く滲ませ、声を詰まらせた。「炎真……わしが不甲斐ないばかりに、お前を守りきれなかった……父親が死ぬ前に託した願いまで、裏切ってしまった……」炎真は表情を変えなかった。「表に出てきた連中は、何人だ?」「お前は、それしか気にしないのか!?」茂雄は怒りと焦りに声を震わせた。「自分がどれほどの傷を負ったか見てみろ!それはお前の両脚だぞ。そんなものまで賭けに使うとは、どういうつもりだ!」あの事故は、本来なら炎真にとっても避けることができたはずだった。それでも最も過酷な道を選び、相手の計略を逆手に取ったのだ。炎真の目が一気に冷える。その奥で、十年以上押し殺してきた憎しみが渦を巻いた。「俺が生きているのは、あの時、両親を死に追いやった者どもを、一人残らず地獄へ引きずり下ろすためだ」茂雄は重くため息をつき、その顔に深い憂慮の色を滲ませた。炎真の両親が不慮の死を遂げた時、彼はまだ十代だった。だが一夜にして大人になり、その日から、すべての犯人をあ
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