All Chapters of 義姉に溺れる夫へ。私はあなたの従兄と再婚するわ: Chapter 171 - Chapter 180

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第171話

彼らは部屋に入るなり、素早く捜索を始め、一部屋ずつ中を探し回った。開かないドアは、容赦なく蹴破られた。「おい、一体何してるんだ!強盗と変わらねえぞ!やめろ!出て行け!」「きゃあ!!あんたたち誰よ!」罵声や女の悲鳴が次々と上がった。しかし、黒スーツの男たちの捜索のスピードは少しも落ちなかった。足音が乱れ、彼らは一部屋ずつドアを蹴り破って中を調べ、柚希たちがいる部屋へと徐々に近づいてきた。柚希はすぐにパソコンを閉じると同時に、足早にベッドへ向かって炎真を助け起こし、クローゼットへと急いだ。この部屋は狭く、ベッドと机の他には、身を隠せそうな古い木製のクローゼットが一つあるだけだった。彼女が炎真を支えながらクローゼットに潜り込み、どうにか扉を引いて閉めた直後、彼らの部屋の前に乱暴にドアを蹴りつける音が響いた。バンッ!ドアが蹴り開けられた。一人の黒スーツの男が中に入り、獲物を探す鷹のような鋭い視線で、この殺風景な部屋の中を見回した。先ほどリビングでゲームをしていた男が後ろからついてきて、不機嫌そうに言った。「この部屋はまだ借り手がいなくて空き部屋だ。誰も住んでないよ」一見したところ、確かにこの部屋には誰も住んでいないようだった。だが、男は慎重に部屋の中へ歩みを進め、目に見えない死角やバスルームまで念入りに調べた。続いて、クローゼットの方へと歩き出した。柚希はクローゼットの扉の隙間から、近づいてくるその人影を見て、瞬時に息を止め、心臓の鼓動さえも止まってしまったかのように感じた。クソッ、空き部屋なのにここまで念入りに調べるなんて!?ギィィ――耳障りな摩擦音が響いた。男が手を伸ばし、クローゼットの片側の扉を引き開けたのだ。外からの光が瞬時に狭い空間へと流れ込み、空になっている半分を明るく照らし出した。炎真の反応は極めて早かった。扉が開けられた瞬間、彼は腕に力を込め、柚希を自分の懐にきつく抱き寄せた。二人は、まだ開けられていないもう半分の暗がりの中で、隙間なくぴったりと体を重ね合わせて隠れた。体は密着し、わずかな隙間もなかった。柚希は、炎真の胸から伝わってくる落ち着いた心音と、彼の体から漂う清潔で心地よい香りをはっきりと感じ取っていた。彼女の心臓は制御不能なほど激しく高鳴り始めた
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第172話

「あーあ、勘弁してくれよ。そのクローゼットの扉は壊れてて、とうの昔に引っかかって開かないんだよ。大家がケチでずっと直そうとしないんだ。あんたが力任せに扉を壊したら、俺たちが弁償させられるじゃないか。勘弁してくれよ、家でゲームしてただけなのに、なんでこんな目に……」男はハエのように黒スーツの男の周りを飛び回りながら、ぶつぶつと文句を言い続けた。扉が開かない苛立ちも重なり、男はイライラしてクローゼットの扉を蹴りつけた。「分かった、黙れ!」そう言うと、彼は険しい顔つきで大股で外へ出て行った。数分後、乱雑な足音と捜索の音が次第に遠ざかり、家の中に再び静寂が戻った。柚希の張り詰めていた心も、ようやく落ち着きを取り戻した。彼女は長く息を吐き出し、少し気まずそうに炎真の腰に回していた手を離し、代わりに彼の腕を支えた。「彼ら、行ったみたいね。出ましょう」「……ああ」炎真は低く応じた。その声には、微かに名残惜しそうな響きが隠されているようだった。柚希が炎真をベッドに寝かせた直後、同居している他の五人が待ちきれない様子で部屋に入ってきた。先ほど口裏を合わせてくれた石川竜二(いしかわ りゅうじ)という男が最もせっかちで、手をこすり合わせながら媚びへつらうような笑みを浮かべていた。「社長さん、さっきは俺たちが上手くごまかしてやったぜ。約束の……お金……」柚希は頷き、隠れていたクローゼットの中から目立たない黒いリュックサックを取り出した。ジッパーを開けると、中には帯封のされた札束がぎっしりと詰まっていた。彼女は約束通り、一人につき十万円ずつを配った。「さっきは協力してくれてありがとう」「お安い御用だ。社長さん、太っ腹だな!」彼らはお金を受け取ると、たちまち満面の笑みを浮かべ、嬉しそうに数え始めた。だが竜二の目は、ハゲタカのように柚希のまだパンパンに膨らんでいるリュックに釘付けになり、強欲さが溢れ出ていた。彼は厚かましく一歩前に出た。「社長さん、あんたら金稼ぐの簡単なんだろ。あんたらにとっちゃ端金でも、俺たちの一年分の収入になるんだ……ほら、さっきは危なかっただろう?俺たちがあんたらの命を救ったようなもんだ。もう少し色をつけてくれないか?」「約束は約束よ。欲張らないで。出て行って!」柚希は瞬時に冷たい顔
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第173話

遊び仲間はもったいぶって人差し指を一本立ててみせた。「十万?」「一千万円だ!」「クソッ!」竜二は勢いよく立ち上がり、椅子の脚が床を擦って耳障りな音を立てた。欲に目が眩んで、その両目は完全に血走っていた。「俺はこれで大金持ちだ!」彼は躊躇うことなく飛び出し、街中を狂ったように走り回って黒スーツの男たちを探し出した。リーダーらしき男を見つけると、彼は興奮して相手の腕を掴んだ。「あんたらの探してる奴がどこにいるか知ってる!金をくれ、案内してやる!」二十分後。数台の黒い高級車が、不気味なほど音もなく、汚れきったスラム街の入り口に停車した。柊馬が先頭の車から降り立った。高級なオーダーメイドの革靴が、汚水にまみれた路面を踏みしめる。彼の視線は陰湿で冷たく、獲物を狙う毒蛇のように、少し離れたところにある古びた雑居ビルへ狙いを定めていた。部下が足早に近づき、声を潜めて報告した。「社長、情報提供を受けて、すでにこの建物の出入り口をすべて密かに封鎖しました。ネズミ一匹逃がさぬよう手配しております」柊馬はゆっくりと手を上げ、歯を食いしばりながら氷のように冷たい声で短く命じた。「やれ!」号令が下ると、数百人もの黒スーツの男たちが影の中から、路地から音もなく湧き出し、訓練された動きで標的の建物へと包囲網を縮めていった。その動きは素早く無音であり、致命的な威圧感を伴っていた。柊馬は腰から冷たい光を放つ短刀を抜き、指の関節が白くなるほど強く握りしめた。今日、彼はこの手で、炎真を殺す!バンッ!柚希たちのいる部屋のドアが暴力的に蹴り破られた。彼らの目的は明確だった。中に入るなり他の場所には目もくれず、あの古いクローゼットへと一直線に向かった。前回の捜索で徹底的に調べなかったせいで、奴らはクローゼットの中に隠れて危機を逃れたのだ。今回は、絶対に逃がさない!黒スーツの男が力ずくでクローゼットを破壊した。バキッ、メシャッ!扉が大きく開き、暗い内部が光に照らし出された。しかし、中はもぬけの殻だった。「人は?」柊馬は勢いよく振り返り、通報した竜二を氷のように冷たく鋭い視線で射抜いた。竜二は恐怖で腰を抜かしそうになった。「お、俺はずっと家の前で見張ってたんだ!絶対に逃げ出したりしてねえ!こ、こ
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第174話

柚希は指の関節が白くなるほど、車椅子の肘掛けを力いっぱい握りしめた。「あなたのそばに戻って、また監禁されるってこと?」彼女は不意に冷笑した。凄絶なまでの決意を滲ませたその笑みは、まるで崖っぷちに咲く一輪の花のようだった。「柊馬、それなら私は死んだ方がマシよ」「柚希、馬鹿なことを言うな」柊馬は一歩前へ出た。その姿は、すべてを掌握した支配者のそれだった。「お前にはもう他に選択肢はないだろう?現実を見ろ。お前は選ぶ相手を間違えたんだ。炎真、あいつは何の役にも立たない。自分の身すら守れず、お前を守り抜くことも、お前の望む生活を与えることもできない」「だから何?私は彼と一緒に死にたいのよ」柚希の目に決死の光が宿り、車椅子に座る炎真と視線を交わした。次の瞬間、彼女は力いっぱい炎真を支えて車椅子から立たせ、二人はまるで示し合わせていたかのように、一切の躊躇なく、荒れ狂う鳴江の濁流へと身を投げた。川の水は咆哮し、暗流が渦巻いている。飛び込めば、生きて戻る見込みなど万に一つもない!「柚希――!」柊馬は目を大きく見開き、信じられないというように絶叫した。彼はすべてを計算し尽くしたはずだったが、彼女が死を選ぶことだけは、どうしても予測できなかった!ザバーンッ!水しぶきが高く舞い上がった。柊馬は柵にしがみついた。勢い余って胸を柵に打ち付け、肋骨に激痛が走ったが、それでも身を乗り出し、間一髪のところで柚希の細い手首を死に物狂いで掴み取った。奇跡的に、彼の手は空を切ることなく彼女を掴み留めた!「柚希、しっかり掴まれ。引き上げてやる……!」「炎真!」しかし、柚希の目には、波に飲まれていく炎真の姿しか映っていなかった。彼女は激しくもがき暴れ、生きる意志など微塵も見せなかった。「柊馬、離して!手を離してよ!」「狂ってる!お前は本当に狂ってるぞ!」柊馬は目を真っ赤に血走らせ、額に青筋を浮かべた。彼はさらに強く彼女の手を握りしめ、全身の力を振り絞って、強引に彼女を岸へと引きずり上げた。柚希が地面に倒れ込むや否や、柊馬は彼女を胸にきつく抱き込み、その大きな体は極限の恐怖と後悔から激しく震えていた。「どうして飛び込んだ!?よくもこんな真似を!お前が死んだら俺はどうなる!?俺はどうすればいいんだ!」柚希は窒息し
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第175話

柚希は絶望したように目を閉じた。柊馬は彼女のその姿を見て、胸の中で怒りと苦痛が交錯したが、それ以上追い詰めることはしなかった。いいさ、どうせ彼女はすでに自分のそばに戻ってきたのだ。俺には一生という時間がある。少しずつ彼女を手なずけ、彼女が二度と炎真を思い出すことがなくなり、俺がそばにいることに慣れ、再び俺を愛するようになるまで。時間は、最高の調教師だ。彼は柚希の冷え切った手を強引に握り、有無を言わさず彼女を車の中に連れ込み、部下に冷たく命令を下した。「下流に人員を派遣し、全力を挙げて炎真の死体を回収しろ。同時に、奴の死の知らせを本邸に伝えろ」柚希は車のドアに寄りかかるように座り、顔を背けて窓の外をじっと見つめていた。激しく逆巻き流れる川の水を……彼女の背中は冷淡で悲しげに見えた。だが誰も気づいていなかった。車の窓ガラスに映る、血の気を失った彼女の口元に微かな笑みが浮かんでいたことに。その笑みには絶望もなく、悲しみもなく、ただ計画が成功した喜びだけがあった。……車が本邸へ戻る道を疾走している最中、カーオーディオの通信機から長老の切羽詰まった声が聞こえてきた。「柊馬、ご当主が炎真の転落死の知らせを聞き、ショックのあまり意識不明の重体に陥った!医師が蘇生させたが、容態は極めて悪く、もう長くは持ちそうにない。長老会は満場一致で決定した。すぐに戻り、大局を収拾し、桐生家を継承してほしいと!」「分かった!すぐに戻る!」柊馬の声には抑えきれない興奮が滲み出ていた。それは長年の宿願が叶い、もはや隠す必要のない狂喜だった。彼は横を向き、柚希を見た。「聞こえたか?柚希、桐生家は、俺のものだ」柚希は目を上げ、氷のように冷たい皮肉を込めて言った。「実のお祖父様でしょう。危篤の知らせを聞いても、あなたの目には権力と興奮しかないの?少しも悲しくないの?」「悲しいだと?」柊馬は目を沈ませ、指をきつく握りしめて拳を作った。「もちろん悲しいさ。だが、もしあのお方が長年炎真ばかりを贔屓し、俺を無きものとして扱わなければ、俺だってこんなにも早く、あのお方の死を待ち望む必要などなかったんだ」「お祖父様がなぜ炎真を贔屓するのか、本当にその理由が分からないの?」柚希は、刃のように鋭い眼差しで彼を射抜いた。「あなたの
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第176話

車が本邸のメインビルの前に停まった。「柚希、ここで待っててくれ……」柊馬は言いかけて、柚希が川へ飛び込んだ時の決絶した姿を思い出し、不安になってすぐに考えを変えた。「お前も一緒に来い」「行かないわ」柚希は車に座ったまま動かなかった。「お祖父様はかつてお前を厚遇してくれただろう。最期に顔を見て、見送ってやれ」柊馬は口では立派なことを言いながら、万力のような力で柚希の腕を掴み、強引に車から引きずり下ろした。寝室の中は、青白い光に照らされていた。医療機器が規則的で冷たい電子音を響かせ、まるで命のカウントダウンをしているかのようだった。茂雄は枯れ木のような顔色で大きなベッドに深く沈み込んでいた。枕元には咳き込んだ暗赤色の血の跡が残り、息も絶え絶えで、胸の起伏はかすかに動くのみ。次の瞬間には完全に静まり返ってしまいそうだった。大勢の長老たちがベッドを囲み、表面上は悲痛な面持ちを装いながらも、その目には権力移譲に対する焦りと打算がちらついていた。「柊馬、よくぞ戻られた」一人の長老がすぐに歩み寄り、声を潜めて早口で言った。「ご当主はもう長くない。意識がはっきりしているうちに、早く継承の書類にサインをさせてください。後々厄介なことにならぬよう」物音を聞きつけ、茂雄は極めて重い瞼をどうにか押し開けた。その濁った目には、巨大な苦痛と悲しみが満ちていた。彼は震える手を伸ばした。「柊馬……炎真……炎真は本当に……」柊馬はすぐさま沈痛な表情に切り替え、一歩前に出て茂雄の手を握り、声を詰まらせた。「お祖父様……炎真さんは以前から敵が多く、失脚した途端に仇が群がってきました。私も何とか助けようと手を尽くしたのですが、相手の数が多すぎて、私には炎真さんを守り切れませんでした……」「ゴボッ――!」茂雄の体が激しく震え、再び鮮血を吐き出した。顔色は目に見える速さで土気色になり、視線すら焦点が定まらなくなっていった。「ご当主!」「お祖父様!」「早く医者を!」茂雄は最後の力を振り絞り、弱々しく手を振って、慌てふためく人々を制止した。彼は老いた目に涙を浮かべ、ひどく掠れた声で言った。「いや……もういい……わしは……このままあの世へ行き、自ら炎真の……両親に……詫びよう……」彼は枯れ枝のように痩せ細った手を震えながら持
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第177話

柚希は理性的でありながらも、心優しい人間だった。柊馬はゆっくりと手を離した。「しっかりとお祖父様を見送ってやれ」柚希はベッドのそばへ行き、ゆっくりと身をかがめて、静かに声をかけた。「お祖父様」「柚希……」茂雄の声は蚊の鳴くように細かった。「お祖父様、何ておっしゃったの?よく聞こえないわ」柚希はさらに体をかがめ、耳を茂雄の唇のすぐそばまで近づけた。茂雄の唇が極めて微かに動き、二人にしか聞こえないようなかすかな吐息で尋ねた。「……炎真は……無事なのか?」柚希の目がわずかに動き、そっと相槌を打った。「ええ」川へ飛び込んだのは、綿密に計画された偽装死にすぎなかったのだ。あの夜、継承の儀式の宴会を後にした後、炎真は自分の計画をすべて彼女に明かしていた。柚希は驚愕した。「それじゃあ、わざと弱みを見せて、柊馬に桐生家を継がせたの?どうしてそれを早く言ってくれなかったのよ。知っていれば、わざわざ飛行機で戻ってきて継承の儀式をぶち壊したりしなかったのに」炎真は奥深い眼差しで彼女を見つめた。「君と柊馬がクルーズ船で抱き合ってキスをしているのを、俺は見たからだ」柚希は首を傾げた。「は?いや、私が柊馬にビンタしたところは見てないの?」炎真は一瞬呆然としたが、その後、椅子の背もたれに寄りかかり、手で目を覆った。だが、その薄い唇は抑えきれずに上を向いていた。柚希は彼のその様子を見て、遅ればせながらあることに気づき、思わず文句を言った。「つまり、それで誤解して、私と柊馬がグルだと思って、そのあと私にあんなに冷たくしたってわけ?炎真様、次からお芝居を覗き見する時は、どうか最後までしっかり見届けてもらえません?それに、私が柊馬とクルーズ船に食事に行ったのは、彼が嘘をついて、バイオニックロボット開発の資金を立て替えてやったって言ったからよ。私はただ借りを返そうとしただけ……返す相手を間違えたけど」話せば話すほど、柚希は憂鬱な気分になった。考えれば考えるほど、とんだ骨折り損だ。炎真の口元の笑みは、さらに抑えきれずに深まっていった。彼は横を向き、笑みを帯びた眼差しで柚希を深く見つめた。「本来俺がもらうはずだった食事なら、次はキャンドルディナーでおごってくれるか?」ただの食事だというのに、何をキャンドルディナーだ
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第178話

茂雄はほどなくして気力を失い、昏睡状態に陥った。医師が安静が必要だと告げ、全員を病室から退出させた。病室を出るや否や、先ほどまでの悲痛な空気は一瞬にして霧散した。柊馬を支持する長老たちは皆、喜びを顔に表し、眉間には肩の荷が下りたような得意げな色が浮かんでいた。五の長老である桐生康政(きりゅう やすまさ)が四の長老である桐生茂信(きりゅう しげのぶ)の前に歩み寄り、ひけらかすような、そして嘲笑するような口調で言った。「わしはとうに忠告したはずだぞ。もっと人を見る目を養い、柊馬について行くのが正道だとな。お前は意地でも炎真に肩入れしたが、結果はどうだ?結局のところ、お前の目は節穴だったと証明されたわけだ」茂信は怒りで顔に青筋を立てて、白髪交じりの髭を怒りで微かに震わせた。「実の血縁者に対してすら残酷な殺しをやってのける、あのような冷血で非情な男が当主の座に就いたところで、桐生家を奈落の底へと突き落とすだけだ!」「もう一度言ってみろ!」康政は瞬時に激怒し、声を荒げた。茂信は少しも怯むことなく、背筋を伸ばした。「千回でも、一万回でも言ってやる!あのような鬼畜の所業、誰も許しはせんぞ!」両者が一触即発の険悪な雰囲気になるのを見て、柊馬がついに冷たい声で口を開いた。「もういい」しかし康政は食い下がり、これ幸いとばかりに火に油を注いだ。「柊馬、そいつが目上だからといって寛容になりすぎてはいかん。これほど狂った口を利き、お前に対する畏敬の念の欠片もないのだ。みせしめのためにも厳罰に処すべきだ」茂信は冷笑し、鋭い視線を柊馬に向けた。「なんだ?耳に痛い言葉をいくつか並べたからといって、当主の権力を使って厳罰に処すというのか?桐生柊馬、たとえお前が当主になったとはいえ、桐生家はお前の独裁を許す場ではない。桐生家には桐生家の掟があるのだ。言葉や行動にはくれぐれも気をつけることだな。もし一歩でも踏み外し、わしに弱みを握られれば、絶対に黙ってはいないぞ」彼の背後には、七人の長老がはっきりと立ち並んでいた。彼らはいずれも強い権力を握っており、桐生家の半数とも言える勢力を誇り、かつては柊馬を牽制し炎真を擁護してきた中核勢力だった。柊馬の視線はゆっくりとその長老たちを舐めるように過ぎ、口元に氷のような弧を描いた。「茂信、年も年だ
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第179話

「景虎!辰夫!わしがこれほど信用していたというのに、お前たち……お前たちが裏切り者だったのか!?」景虎は得意げに唇の端を吊り上げた。「茂信、勝ち馬に乗るのが賢い生き方ってもんですよ。俺たちは最も賢明な選択をしたにすぎません」「おのれ!おのれたち!」茂信は怒りで震える指で、土壇場で寝返った者たちを一人ずつ指差した。「お前たちに、まともな末路など待ってはいないぞ!」すでに化けの皮が剥がれた以上、景虎も取り繕うのをやめ、横柄に鼻で笑った。「負け犬のように追い出されるのはあんたたちの方だ。さっさと失せな!」柚希は傍らに立ち、この茶番を冷静に見つめていたが、特に景虎の姿に一瞬視線を留めた。彼はかつて炎真に対して極めて忠誠心が厚いように見え、何度も柊馬の一家を敵に回すなど、炎真の側近中の側近だったのだ。まさか、彼こそが最も深く潜んでいた裏切り者だったとは。炎真が、彼らを暗闇から一人ずつ誘い出すために、あれほどの代償を払い、偽装死までしてのけたのも無理はない。柊馬は明らかにこの結果に大満足しており、景虎に向かって指令を下した。「景虎、炎真が残した人員や切り札については、あんたが一番よく知っているはずだ。一族の粛清は、あんたに一任する」景虎は恭しく頭を下げた。「はい、当主。必ずやご期待に応えてみせます」目障りな長老たちを処理し終え、柊馬は胸のつかえが下りたような爽快感を覚えた。彼は自然に手を伸ばし、傍らにいる柚希の肩を抱こうとし、その口調もずっと温和になっていた。「柚希、行こう。家に帰るぞ」柚希は無表情のまま、彼が触れる前にさっと体をかわし、真っ直ぐ正門の外へ向かって歩き出した。空を切った手を見て、柊馬の顔に一瞬、明らかな不快感がよぎった。だがそれはすぐに、目的を果たすためならどれだけでも待てるというような、異様な忍耐の色に取って代わられた。彼は唇の端を少し吊り上げ、大股で柚希の後を追った。……柚希は柊馬に連れられ、かつて自分が三年間住んでいたあの邸宅へと戻ってきた。車を降りた瞬間、吐き気を催すほどの強烈な生理的嫌悪感が押し寄せてきた。ここはかつて、彼女がすべての愛と憧れを注ぎ込んだ「家」だった。彼女はここで、希望に満ちて柊馬との結婚生活を築き、献身的に家庭を守り、彼の母親や義姉にさ
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第180話

「柚希!」柊馬は図星を突かれたように鋭く声を荒げ、怒りでその狼狽を覆い隠そうとした。「俺が悪かったって分かってる。何度も謝ったし、埋め合わせも全力でしている。いつまでも過去のことに執着するのはやめてくれないか?」柚希は無表情のまま彼を見つめた。その眼差しは恐ろしいほど静かだった。「私はとうの昔に吹っ切れているわ。柊馬、吹っ切れていないのは、最初から最後まであなたの方よ。本来なら、私たちはお互いすっきりと別れられたはずなのに」もし彼が潔く手を引いていれば、二人はとうにそれぞれの新しい生活を送っていたはずだ。だが今、彼は彼女を監禁している。彼女もまた、まもなく彼に血みどろの一撃を返し、彼のすべてを完全に失わせようとしていた。「すっきりと別れるだと?」柊馬はその言葉に痛いところを突かれたように歯を食いしばり、目を赤く血走らせた。「柚希、俺だって努力したさ。だが、できなかったんだ!お前がいない毎日、俺は歩く屍のようだった。呼吸をするだけで、心臓を抉られるような激痛が走ったんだ」彼は彼女の腕を掴んだ。骨が砕けるのではないかと思うほどの強い力で握りしめ、しゃがれた声で言った。「だから、この一生、俺は絶対にお前を手放さない!柚希、逃げ出そうなんて二度と妄想するな。今や、桐生家全体が俺のものだ。俺に歯向かえる人間などもうどこにもいないし、お前を俺のそばから奪い去れる人間もいない。たとえお前が地の果てまで逃げようと、俺にはお前を捕まえ戻す手段がいくらでもある」彼は彼女に顔を近づけ、灼熱の吐息を吹きかけた。その目には病的な執着が宿っていた。「お前がこれからすべきことはたった一つだ。俺を許し、そして……昔のように、もう一度俺を愛することだ……」柚希は力いっぱい彼の手を振り払った。「だったら、一生夢でも見ていなさい!」彼女は彼を避け、背を向けて早足で階段を上がり、真っ直ぐゲストルームに入ると、「バタン」と音を立ててドアを閉め、内側から鍵をかけた。柊馬は少し離れた場所に立ち、ゲストルームに入っていく彼女を陰鬱な目で見つめながら、指を一本一本折り曲げて拳を握りしめた。「柚希、癇癪を起こすのは許してやる。だが、お前にとって唯一の家は、ここしかないことを思い知るんだな……」ゲストルーム。柚希はベッドのそばまで行き、
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