ホテルの大宴会場。タイミングを見計らったように、五人の給仕スタッフが銀色のフードカバーを持ったまま一列に並んで入場してきた。その中の一人、口元をマスクで隠した女性スタッフが、静々とした足取りで朔也の座る主賓席へと向かう。そして、朔也の目の前でゆっくりと銀色のカバーを持ち上げた。皿の上に「ご馳走」など乗っていなかった。そこにあったのは、丁寧に揃えられた四束の書類のコピーだけだ。突然の異様な配膳に、同じ円卓に座っていた招待客たちが一斉に目を丸くした。そのざわめきは波紋のように広がり、隣のテーブル、さらに隣のテーブルの客までもが首を伸ばして覗き込んでくる。「なんだあれ?料理じゃないぞ」「書類みたいだが……また何かヤバい暴露が始まるんじゃないか?」不穏な空気を察知した栞奈が、慌てて皿の上の書類を奪い取ろうと手を伸ばす。しかし、それよりも早く朔也が一番上にあった『健康診断書』を掴み取った。【氏名:瀬崎朔也】【性別:男】【診断結果:男性不妊症(重度の無精子症)】その文字を見た瞬間、朔也は極限まで目を見開き、手の中の紙をビリッと音が鳴るほど握り潰した。顔からスーッと血の気が引き、土気色になった顔で、カタカタと震える指を動かして二枚目の書類――『DNA鑑定書』を引き抜く。【鑑定結果:提供された検体およびDNA解析の結果、瀬崎朔也が被鑑定人(赤ん坊)の生物学的父親である可能性は0%であり、これを完全に排除する】さらに三枚目。これも同じく『DNA鑑定書』だ。【鑑定结果:提供された検体およびDNA解析の結果、小宮山陸が被鑑定人(赤ん坊)の生物学的父親であることを99.9%の確率で肯定する】そして最後の四枚目。そこには、栞奈と小宮山陸が全裸でベッドに絡み合い、生々しく密会している決定的な不倫写真が何枚も連なっていた。「…………ッ!!」朔也の顔はどす黒く変色し、氷のように冷たく濁った視線がゆっくりと栞奈に向けられた。その全身から噴き出す凄まじい殺気と怒りは、まるで悪鬼のようだった。「このガキは……俺の子じゃないだと?」地を這うような低い声が響く。栞奈の顔面は蒼白なんてものじゃなく、もはや死人のように白くなっていた。「ち、違う!これは誰かの悪質な罠よ!私を陥れようとして、こんなデタラメな書類を…
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