その時、動画の中から、切羽詰まった琴羽の叫び声が響いた。「やめてください!警察呼びますよ!」突然大きくなった声に、その場にいた全員の意識が引き戻される。一斉にスマホへ視線が集まり、静子は奪うようにスマホを手に取ると、音量を最大まで上げた。そして次の瞬間――「いいか?俺は青森家のお嬢様に頼まれてきたんだ。お前を犯してほしいってな……」その一言が流れた途端、病室の空気が凍りついた。聞こえるのは動画の音声と、薫の取り乱した声だけ。「違う!そんなの嘘よ!私はそんな頼みしてない!」だが、もう誰もその言い訳を信じなかった。正樹でさえ、隠しきれない失望を顔に浮かべていた。幼い頃から自分の後を追いかけ、「正樹お兄ちゃん」と甘えるように呼んでいた少女。その記憶と、今目の前にいる薫の姿がどうしても重ならない。正樹はゆっくりと薫をかばっていた手を下ろし、無言のまま離れた場所へ腰を下ろした。冷え切った視線だけが、スマホの画面へ向けられている。動画はそのまま続いた。画面には、琴羽に助けを求められながらも冷たく突き放す正樹と智則の姿が映し出される。泣きながら訴える琴羽に、二人は耳を貸そうともしない。むしろ嘲るような言葉まで投げかけていた。コメント欄も騒然となった。【は?この二人何なの?自分の貞操を犠牲にしてまで同情を引こうとする人間がいると思ってるの?】【さすがにひどいよ。普通、赤の他人でも助けるだろ?この二人、琴羽さんのことがそんなに嫌い?】【この二人、家族を琴羽さんに殺されてもした?なんであんな態度なの?それに、二人とも大手会社の社長さんだよね?こんな判断力で会社経営してる方が怖いわ】【青森グループも藤井グループも西沢グループも徹底調査してくれ!】智則の呼吸が目に見えて荒くなる。気づけば、隣にいた薫の手首を強く握り締めていた。「智則……痛い……」弱々しい声に我に返り、智則は弾かれたように手を離す。「……悪い。力が入ってた」謝罪の言葉とは裏腹に、その手は小刻みに震えていた。心の動揺を隠しきれていない。やがて動画の中で、琴羽が花瓶を振り下ろし、男を気絶させる場面が映る。それを見て初めて、智則は深く息を吐いた。正樹の表情からも、張り詰めていた緊張がわずかに消える。動画はさらに先へ進んでいき、薫は何とか
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