二階へ上がる階段は、前に来た時と同じだった。 けれど、今日は少しだけ違って見える。 白い壁に貼られた小さな案内。 階段の途中に置かれた、展示名の書かれた紙。『小さな器と暮らしの写真展』 その文字を見ながら一段ずつ上がる。 胸は少し速く鳴っていた。 朝倉さんに会えるかもしれない。 それは、確かにある。 でも、それだけではない。 器を見る。 写真を見る。 自分の生活の中にあるものを、少し違う角度から見てみる。 今日はそのために来た。 そう思い直すと、足元が少し落ち着いた。◇◇◇◇ 展示室に入ると、前回とは空気が少し違っていた。 白い壁に写真が並び、その下や横に、小さな器が置かれている。 木の台。 淡い布。 湯のみ。 小皿。 深い鉢。 どれも、飾り物というより、誰かの生活の中から少しだけ持ってこられたように見えた。 受付にいた書店員さんが、私に気づいて微笑んだ。「いらっしゃいませ」「こんにちは」「どうぞ、ごゆっくり」 私は軽く頭を下げて、最初の展示へ向かった。 そこには、朝のテーブルを写した写真があった。 窓から光が入り、白い皿にトーストがのっている。 隣には小さなカップ。 テーブルの端に、読みかけの本。 特別な料理ではない。 豪華な朝食でもない。 でも、誰かがちゃんと朝を始めようとしている写真だった。 横には、写真に写っているものと同じらしい小さな白い皿が置かれていた。 手作りなのか、縁が少しだけ揺れている。 私はその皿をじっと見た。 完璧な丸ではない。 でも、そこがいいと思った。 毎日使うものが、少しだけ不揃いでいい
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