王都が恐怖と胃痛の夜会から立ち直る間もなく。 大陸全土を揺るがす未曾有の凶報が、世界中を駆け巡った。 ――極北の防衛要塞国家『フロストヘイム』の完全沈黙。 永久凍土の過酷な環境にありながら、屈強な北方騎士団と堅牢な氷壁に守られていた小国家。 それが、ある一夜を境に、外部との一切の魔導通信を途絶させたのだ。 異変を察知した周辺国が放った先遣調査隊が目にしたのは。 国家の滅亡などという言葉では到底言い表せない、あまりにもおぞましい『世界の変貌』だった。 白銀の雪原は消え去り。 城壁も、民家も、針葉樹の森も、すべてが原形を留めぬほどに溶解。 見渡す限りの大地が、まるで巨大な生物の内臓のように赤黒く脈打ち、天を突く無数の半透明な触手がうねり狂う――地獄の繭と化していたという。 人間も、魔獣も、誰一人として生きて戻ってこない。 ただ、巨大な肉塊の海が、呼吸をするようにドクン、ドクンと音を立てて広がり続けている――。 大陸中の国家が「古代の邪神が復活したのではないか」と恐慌に陥る中。 その凶報は、我がノクス辺境伯爵邸のリビングにも届いていた。 ◇ ◇ ◇「……そ、そんな……! シルヴィアが……!?」 私は、アルファが差し出してきた最新の魔導通信の記録用紙を取り落としそうになりながら、青ざめた顔で叫んでいた。 フロストヘイム。 そこは、私の旧友であり、『絶対独身同盟』の盟友でもある『白銀の魔女』シルヴィアの研究塔――『氷嶺の牙』がそびえ立つ地だ。「ヴェラ様、落ち着いてください。お体に障ります」 私の背後から、温かい両手がそっと伸びてきた。 アシュが私の肩を優しく抱きしめ、心地よい魔力のぬくもりで私の強張った身体を包み込んでくれる。 けれど、今の私にはその温もりを呑気に楽しむ余裕すら
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