「ごめんくださーい! エヴリン、いるかしら?」 王都にある、エヴリンの屋敷。 私は、まだ熱々のシチューが入った大きなお鍋を両手で抱えながら、玄関の扉をノックした。「は、はーい……今、開けるわ」 ガチャリ、と重厚な扉が開く。 そこには、部屋着姿のエヴリンが、少し怯えたような顔で立っていた。「あら、ヴェラ。どうしたの、こんな時間に……って」 エヴリンは、私の顔を見た後。 私の後ろにピタリと張り付いている、完璧な微笑みを浮かべた銀髪の青年――アシュの姿を見て、ビクンッと肩を跳ねさせた。「や、やあ。アシュ君も一緒なのね……。 ……って、ちょっと待って。その首」 エヴリンの視線が、アシュの首元に釘付けになる。 無理もない。 帝国の最高級の仕立て屋で作らせた、上品でエレガントな貴公子の服。 その首元に、禍々しい黒い宝石が埋め込まれた『絶対隷属の首輪』が、これ見よがしに輝いているのだから。「あ、これ? 帝都の市場で、アシュに似合いそうだったから買ってあげたのよ」 私が無邪気に答えると。「ヴェラ様からいただいた、俺の命より重い『永遠の愛の証』です」 アシュが、誇らしげに胸を張り、首輪を見せつけるように微笑んだ。 その顔は、完全に「ご主人様に買ってもらった首輪を自慢する大型犬」そのものだ。(バ、バカァァァァッ!!) エヴリンは、心の中で特大のツッコミを入れた。(それ、古代の呪物でしょ!? なんでこの悪魔、そんなものを喜んで着けてるのよ!! しかも、ヴェラもヴェラで、ただのアクセサリー感覚で着けさせてるし!! あんたたち、本当に狂ってるわよ!!) エヴリンの顔面が、みるみるうちに蒼白になっていく。「エヴリン? どうしたの、顔色が悪いわよ。 風邪でも引いたのかしら?」「い、いいえ! 絶好調よ!! アハハハハ!! そ、それで? 今日はどうしたの?」 エヴリンは、引きつった笑顔を顔に貼り付け、必死に話題を変えた。「ふふっ。実はね、今日、私……初めてお料理をしたのよ!」 私は、抱えていたお鍋を誇らしげに見せた。「ヴェラが!? 料理を!?」「ええ。アシュが手伝ってくれたおかげで、とっても上手にできたの。 だから、エヴリンにもお裾分けしようと思って、持ってきたのよ。一緒に食べましょう!」 私が満面の笑みで提案した、その瞬間
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