เข้าสู่ระบบ知哉は明里を女子学生寮まで送り届け、自分も寮へと戻った。悠真から届いたあのメッセージを思い出し、知哉は思わず奥歯を噛みしめた。悠真にそこまでの力があるとは思っていない。ましてや海外にいて、向こうは真夜中の時間帯だったはずだ。それなのに、国内で起きたこんな小さな交通事故を、都合よく把握できるとは到底思えなかった。最も可能性が高いのは、前世でもこの時期に明里の両親が事故に遭い、それを知っている悠真が連絡してきたということだろう。自分の恋人が、自分には話してくれないことを他の誰かと共有している。そんな状況は、やはり面白くない。一方の明里は、そんな知哉の心の揺れなど知る由もなく、寮に戻った途端、他のルームメイトからの視線を浴びてギョッとした。「明里、お母さんたちが事故に遭ったんだって?大丈夫?」彼女たちの温かい言葉に胸が熱くなり、明里は首を横に振って、笑顔で答える。「かすり傷で、大したことはないの。数日も休めば良くなるみたい。みんな、心配してくれてありがとう」特に大きな事故ではなかったということに、ルームメイトたちも安堵し、それぞれ各自のことに戻っていった。その夜、ベッドに入った明里は、静かな夜を過ごしていた。両親の事故は結局起きてしまったけれど、二人とも無事だった。これはきっと、神様が助けてくれたのだろう。でも、本当に良かった。何よりも大切な人たちが、こうしてそばにいてくれる。……知哉は明里にプロポーズをした。それは卒業式の場で、学長が二人の証人となってくれた。教職員や生徒の見守る中、胸が熱くなるのを感じ、明里は涙をこらえきれなかった。実を言えば、知哉が舞台上に上がった瞬間から、明里には何か予感があったのだが、それでも、まさかこの場所でプロポーズされるとは、かなり予想外だった。ルームメイトが急いで頭にヴェールをのせ、化粧直しをしてくれる。そして、耳元でからかうように囁いてきた。「明里、泣かないで。メイクが崩れたら、記念動画が台無しになっちゃうでしょ?」その言葉で、明里は涙をこらえて笑った。何か言い返そうとしたが、ルームメイトたちはすでに舞台を降りていて、知哉と二人きりにしてくれた。ちょうどそこに知哉がやってきて、片膝をつき、手作りの指輪を震える手で差し出す。「明里、俺と結婚してくれないか?」明里は
悠真には、彼らが何を話しているのかまでは聞こえていなかった。ただ、二人がとても楽しそうにしていることだけは分かった。それは、今の彼女が自分の前では決して見せてくれない笑顔だ。悠真は苦い気持ちで視線をそらし、部屋の中を見回した。すでに白い布がかけられた大きな家具や入り口に並べられた荷物が、静かに別れを告げているようだった。明里、またな。……この年、明里は大学2年生になった。明里は知哉からの告白を受け入れ、二人は盛沢大学でも有名なカップルとして過ごしていたし、二人はお互いに深く愛し合っていて、勉強の面でも、それぞれの分野で優秀な成績を収めていた。そんな、周囲からは悩みなど一つもなさそうに見える明里だったが、最近ますます不安に駆られるようになっていた。なぜなら前世で、両親が交通事故で亡くなったのが、この時期だと思い出したからだ。その時期が近づけば近づくほど、明里の焦りは募っていく。明里は何度も念を押すように、外出するときは周囲の車に気をつけること、自分で運転するときも十分注意することを両親に言い聞かせた。父も母も「分かったから、大丈夫」と何度も頷き、気をつけると約束してくれた。それを聞いて、ようやく明里も少しだけ胸をなで下ろした。それでも、期末テストの準備で忙しいある日、両親が交通事故で入院したとの連絡を受けた。その瞬間、心臓がどくどくと音を立てて鳴る。ゼミの指導教員に連絡を入れた後、知哉に付き添ってもらい、急いで病院へ駆けつけた。病院に足を踏み入れた瞬間、膝から力が抜けていくような感覚に襲われた。とても怖かった。病室のドアを開ければそこに、もう息をしていない両親の姿があることを想像してしまったのだ。中へ入り、病室のベッドに腰掛けている両親を見た時、緊張の糸がほぐれ、明里の目からは涙が堰を切ったようにこぼれ落ちた。そんな明里の様子を見て、両親の方が慌てふためいてしまったくらいだった。「もう、何をそんなに泣いてるのよ。私たちは見ての通り平気だし、ただの足の擦り傷だから。それに、入院の必要もないってお医者さんも言ってくれて、あとは定期的に消毒に通えば大丈夫らしい。だから、そんなに心配しないでくれ」両親の優しい言葉に、明里はようやく涙をぬぐい、注意深く両親の身体の様子を確認した。「本当に、何ともない?」「本
電話越しの声に知哉は一瞬反応が追いつかなかったが、すぐに納得した。どうやら前世の自分は、留学を選んでいたらしい。知哉は短くうなずくと、優しい声で言った。「明里、俺はお前と一緒の大学に行きたいんだ」そして、ずっとそばにいたい。その後半の言葉は飲み込み、最初の部分だけを口にした。ほどなくして、明里の弾んだ声が耳に届く。「いいよ!じゃあ、一緒に行こう」蓮と文哉は盛沢市に残らず、自分たちの理想の大学へと進むことになった。卒業が近づき、バラバラになる前にと、明里たちは最後の集まりを開いた。将来の話に花を咲かせ、話題が一段落した頃、悠真の話になった。「あいつ、留学するらしいよ。悠真の両親はもう荷物の整理をしてて、この先戻ってくるかも分からないって」思いがけない名前に明里は硬直し、その決断を聞いて完全に固まってしまった。時を経ても、結局は違うルートで運命が重なろうとしている。あえて悠真と距離を置いていたのに、彼はカウントダウンのあの日に告白をしてきた。知哉が残る道を選んだ一方で、悠真は留学を選んだ。このグループだって、残ったのは結局4人。明里は言葉に詰まり、不安が胸をよぎる。また両親を救い出せず、あの日のようにただ見ていることしかできないなんてことになったらどうしよう……明里が服の裾をぎゅっと握りしめたとき、温かな手が重なった。その体温が心細さをかき消してくれる。大丈夫だ。お父さんとお母さんは、きっとこれからも無事でいてくれる。知哉が傍にいる今の世界は、前世とは違うはずだから。彼を見つめ返すと、不安で速くなっていた心拍数が落ち着いていった。隣で見守っていた蓮と文哉は呆れたように顔を見合わせ、二人とも小さくため息をついた。その空気に気づいて明里は顔を赤くし、手を引こうとしたが、力強く握られたままで、顔を上げると、勝ち誇ったような知哉が自分を見ていた。「さてと。腹もいっぱいになったし、そろそろお開きにするか」甘い空気に耐えきれなくなった蓮と文哉が、降参したように先を歩いていく。後に残された知哉は、愛おしげに明里を見つめていた。「行こう。送ってくよ」彼女は鼻で笑い、そっぽを向いた。「送るなんて大げさじゃない?家、同じ方向なんだから」すると彼はあっさりと言った。「それなら、俺を
席に戻ると、いつの間にか自分以外の四人の空気が変わっていて、悠真はふと、疎外感を覚えた。テーブルには注文した食べ物が並び、明里は知哉がすすめてくれる食事を美味しそうに食べている。特に美味しいものはみんなにも分けながら。以前と何一つ変わらない。蓮や文哉だって悠真に料理を勧めてくれるが、悠真にはどうしてもその輪の中に入っていけない違和感があった。結局、悠真は卒業旅行を予定より早く切り上げて帰ることにした。蓮や文哉は少し引き止めてくれたが、本人の意志が固いと分かると、無理強いはしなかった。悠真がいなくなると、残された四人はかえって一層楽しそうに遊び始めた。楽しげな写真をSNSにアップし続ける仲間の投稿を眺めながら、すでに帰宅していた悠真は、写真の中でますます距離を縮めていく明里と知哉を見て、ひどく落ち込んだ。そしてようやく思い出した。知哉も明里に想いを寄せていたことを。悠真は自分が今、怒っていいのかどうかすらも分からなかった。怒りたい気持ちはあった。なぜなら、これまで長年、誰が見ても自分たちはお似合いの二人だったから。前世の記憶がある悠真だからこそ知っている。最初の時間軸の通りなら、明里は自分の彼女になり、婚約者になるはずだった。だから、幼い頃から一緒に育った幼なじみとして、知哉が明里に恋心を抱くことなど、本来あり得なかったのだ。だが明里の態度を見る限り、今の彼女が自分を拒絶しているのは明らかで、むしろ知哉といることを望んでいる。そうなると、今さら自分が怒る資格などないようにも思えてくる。前世で明里は自分の婚約者だった。だが自ら別れを切り出し、あろうことか彼女を死に追い詰めた女との結婚を選んだのは紛れもなく自分だ。そして、この人生ではまだ何も起きてはいないが、今の彼女はもう自分の彼女ではなくなった。明里は、とうに自分を拒んでいるのだから。悠真は泣き叫びたい気持ちだったが、今の自分には、悲しむ資格すら与えられていないように感じる。一番愛していた人を、自らの手で捨てたのは誰でもない自分だ。自業自得だろう。……1週間ほどの卒業旅行に行っていた明里は、合否発表を前に盛沢市へと戻ってきた。結果が表示される画面を凝視し、何度もページを更新する。高鳴る心臓を抑え、768点という数字を見た瞬間、両親と抱き合って喜
明里は彼を部屋から押し出し、ドアを閉め、取り残された悠真は、魂が抜けたようにその場を後にした。その様子を廊下の角で見ていた知哉は、激しい衝撃を受けていた。とんでもない話を聞いてしまった。明里と悠真の会話からすると、二人は10年後の未来からやってきたようだ。どうやら、二人は10年連れ添っていたみたいだが、結局、悠真が明里を裏切り、他の誰かを好きになってしまったらしい。明里はそのせいで命まで落としていた。知哉は少し前まで自分の中にあった海外へ行こうという考えを思い出し、自分の頬を強くひっぱたきたくなった。何が身を引いて幸せを願うだ。そんなクズ男に明里を渡すなんて!怒りを必死に抑え、明里の閉ざされたドアを深く見つめた。彼はある決意を固めた。「明里。今度はもう、誰にもお前を渡さないよ」そして、悠真は当然知らない。彼が明里と二人きりで会ったことで、明里に想いを募らせていた知哉に、この人生では行動を起こさせるきっかけを作ったことを。それからの知哉は早かった。その夜、海辺で皆とバーベキューをすることになった。明里が席を選んで座った途端、知哉は電光石火の如く彼女の隣の席を確保した。そのあまりの素早さに、悠真と蓮、そして文哉は呆気にとられた。そんな周囲の目など気にも留めない様子だった知哉だが、驚く明里と目が合うと、耳まで瞬時に赤く染めた。彼はわざとらしく咳払いをして、明里にメニューを差し出す。「何か食べたいものある?」明里は素直に食べたいものをいくつか選んだ。すると知哉はそれを倍の量を頼み、蓮と文哉の意見も軽く聞くと、すぐに注文しに行った。残されたのは、ただ気まずそうに立ち尽くす悠真だけ。文哉は周りをキョロキョロと見ていたが、いたたまれなくなり知哉の元へ走っていき、肘で彼の肩を小突く。「おい、どうしたんだよ?今日はやけに変だぞ」明里の視界から離れた彼は、周りの視線など微塵も気にせず答えた。「そうか?別に普通だけど」知哉は焼きあがった肉を持って明里の元へ戻り、甲斐甲斐しくすべて彼女の前に差し出した。「熱いうちに、食べて」明里は、向かいで悠真の顔色がどんどん悪くなっていくことなど気にも留めず、知哉と一緒に肉を食べ始めた。その様子を見ていた蓮は羨ましくなったのか、自分も何本かもらおうと近寄ってくる。だが、知
大学入学共通テストが終わると、高校生活で一番気楽で、一番長い春休みが待っていた。クラスの打ち上げで、みんながそれぞれ仲のいいグループの友人と「卒業したらみんなで旅行に行こう」と話していた。大学生になったら、こうして集まれる時間はもう少なくなってしまうから、と。しかし、一度人生を経験していた明里は、知哉以外はみんな盛沢市に残ることを知っていた。留学を選んだ知哉でさえ、他の三人とは裏で連絡を取り合い、4年後には戻ってくるのだから、バラバラになることなんてない。けれど、知哉から旅行に誘われたとき、明里は断らなかった。3月というまだ冬の寒さが残る時期、彼らは南国のリゾート地を目指した。飛行機を降りて、そのままタクシーでホテルへ向かう。明里は唯一の女子だったので、一人部屋だ。その日の夜、部屋のドアが叩かれた。扉の前に行き、「どちら様ですか?」と尋ねる。すると、扉越しに聞き覚えのある声が聞こえてきた。「明里、俺だ」明里がドアを開けると、そこには悠真が立っていた。その瞳には、後悔と恋しさ、そして機嫌をうかがうような遠慮がちな色が浮かんでいる。その瞬間、明里は彼に、あるもう一人の影を重ねてしまった。理屈の上では、二人は同じ悠真のはずで、ただ、生きている時代が違い、置かれた時間軸が違うだけ。半年前、彼自身も過去……いや、未来の出来事を夢で見たと言っていた。けれど明里には、どうしてもそうは思えなかった。あのときの悠真は、ただ未来の10年間に起こる出来事を、一人の傍観者として眺めただけの悠真だったような気がしたのに、今、目の前にいるこの悠真は、まるですべてを実際に経験した人間のようだったから。少し黙ってから、明里は問いかけた。「なんか用事?」「明里、ごめん。お前も俺と同じで、時を遡ってきたんだ。だから、あれは夢なんかじゃない」悠真がためらいながらも、後悔の念をにじませ、明里を見つめた。「明里、もう一度だけ、チャンスをくれないか?絶対に、お前を大事にする。もうあんなことはしないって、誓うから!」呆れた明里が扉を閉めようとした瞬間、悠真が体を入れて必死に止めてきた。「本当にお前が好きなんだ!18歳の俺でも、28歳の俺でも、ずっと愛してるのはお前なんだよ。あの時はただ……誘惑に負けてしまった。なあ、もう一度だけ信じてくれないか?絶対に