空気が変わった。 目には見えない何かが室内に満ち、周囲の空気が重みを増していくようだった。 肩甲骨のあいだを、熱の波がゆっくりと走り抜けた。そこは、暗闇の中で彼の指先が幾度も模様を描いた場所だった。 私はほとんど気づかれないほど微かに身体をこわばらせ、手にしたペンを強く握りしめた。 彼が席へ戻ってくると、白檀と革の香りが私の鼻腔を満たした。控えめでありながら、決して間違えようのない香りだった。 それは、窓の鎧戸が閉ざされたあの部屋の香りだった。 服従の記憶と結びついた香り。 私の腹の奥が、きつく締めつけられた。 そこには恐怖があった。 そして、その恐怖と分かちがたく絡み合い、私自身の理性を脅かすほどの、純粋な興奮があった。 二つの感情が身体の内側でぶつかり合い、私が必死に維持している仮面を、今にも内側から砕こうとしていた。 彼は数字について話していた。 それなのに、彼の言葉の一つひとつには、別の意味が潜んでいるように感じられた。 「短期的には、ある程度の主導権を手放すことを受け入れなければならない場合もあります。その代わり、長期的には、はるかに大きな利益を手にすることができる。そうは思いませんか、ヴァンスさん?」 私は彼を見た。 彼は何事もなかったかのように、事業計画について説明を続けていた。 その後、別の条項について議論していたとき、彼は再び私の目をまっすぐに見つめながら、静かな声で言った。 「重要なのは規律です。自分で定めた規則に、絶対的に従うこと。それこそが、人を非常に遠くまで到達させるための条件なのです」 その言葉が私の耳に届いた瞬間、背筋に冷たいものが走った。
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