豆沙包をそっと唇へ運んだ梅鈴は、まるで未知の世界へ踏み出すかのように一瞬ためらった。だが、ひと口含んだ途端、ふわりとほどける甘さが花の香りのように口中へ広がり、胸の奥まで温かく満たしていく。「……美味しい。こんなに優しくて、甘くて、幸せな味を口にしたのは、生まれて初めてだわ!」思わず声が弾み、頬が紅潮する。外皮は雲のように柔らかく、指先で触れれば崩れてしまいそうなほどふわふわ。中の餡はしっとりと舌に寄り添い、ほのかな甘味が余韻となって残る。「都には、こんな食べ物があるのね……」驚きと感嘆が入り混じった瞳で梅鈴が呟くと、店主は目尻を下げて笑った。「お前さんの故郷には、甘いものやご馳走はなかったのかい?」問いかけは柔らかく、まるで彼女の過去をそっと撫でるようだった。梅鈴は、遠い記憶の引き出しをそっと開くように目を伏せた。「お嬢様は……果物や焼き菓子をよく召し上がっていたわ。でも、こんなふうに真っ白で、ふわふわした甘味は見たことがなかったの」言葉には、羨望でも劣等でもない、ただ淡い過去の影が揺れていた。豆沙包を半分ほど食べ進めたところで、梅鈴の手がふいに止まった。指先がわずかに震え、視線は残りの半月形に落ちたまま動かない。「……どうしたんだい?」李婆が怪訝そうに眉を寄せる。梅鈴は、胸の奥に浮かんだ想いをそっと掬い上げるように、か細い声で呟いた。「これ……とっておけないかしら。弟にも、食べさせてあげたいの」その言葉は、甘味よりもずっと柔らかく、切なく、まるで遠く離れた弟への想いそのものだった。梅鈴の言葉を聞いた瞬間、李婆はまるで胸の奥をつかまれたように、ふっと言葉を失った。だが次の瞬間には、長年の暮らしで身についた、照れ隠しのような笑いを浮かべ、自分の前にあった豆沙包をそっと梅鈴のほうへ押しやった。「これはねぇ、そんなに日持ちする菓子じゃないよ」皺の刻まれた指先が、まるで子に食べ物を分ける母のようにやさしい。「故郷へ戻るときは、もっと日持ちするのを土産に買えばいいさ。よかったら、これもお食べ」「えっ……でも、それは李婆さんの分じゃ……」梅鈴が慌てて手を引こうとすると、李婆は湯気の向こうで、どこか誇らしげに笑った。「あたしはね、もう腹がいっぱいなんだよ。もったいないから、お前さんが食べな」豆沙包を食べ
閱讀更多