梅鈴は、膝から力が抜けるように床へ崩れ落ちた。地に伏せた額は冷たく、そこに触れるたび胸の奥の不安が形を持って迫り上がってくる。「李婆さん……どうか、もう少しだけここで働かせてください……」声は震え、言葉の端がかすれていた。追い出されるかもしれないという恐怖は、彼女の心を長く締めつけていた。この場所を失えば、自分の居場所はどこにもない――その思いが、背中を押しつぶすほど重かった。李婆は、その姿を見た瞬間、胸の奥がぎゅっと痛んだ。長年の経験で、誰かが必死に耐えてきた時間の重さは、目を見ればわかる。梅鈴の肩は細く、震えは小さく、それでも必死に堪えているのが伝わってきた。老いた手を伸ばし、そっと抱き寄せる。「梅鈴……。まったく、馬鹿だねえ、この子は」呆れたように言いながらも、その声には深い慈しみが滲んでいた。彼女は人を追い出すような性分ではない。むしろ、誰かが自分を頼ってくれることが、どこか嬉しくもあった。それでも、梅鈴がここまで怯えていることに気づけなかった自分を、少し責めてもいた。「いつまでだって、ここにいていいんだよ」その言葉が、梅鈴の胸の奥に静かに落ちていく。張りつめていた心がほどけ、息が深く吸えるようになる。安堵は涙となって頬を伝い、彼女は顔を上げられぬまま、李婆の温もりに身を委ねた。李婆はその涙を見て、ようやく理解した。 この子は、ただ働きたいのではない。ここに「居たい」のだ。 誰かに必要とされたいのだ。その願いがどれほど切実だったか、ようやく胸に届いた。「ほんとに……どこまでお人よしなんだい」呟いた声は、呆れよりも愛しさに近かった。数日が過ぎたある昼下がり、店の喧騒の中に陽光の姿があった。昼時の忙しさは最高潮で、梅鈴は相変わらず細い体を惜しげもなく使い、客の間を風のように立ち回っていた。だが、その動きにはどこか影が差しているように、陽光には見えた。やがて客足が落ち着き、店内の空気がようやく深呼吸を許した頃。李婆が椅子に腰を下ろし、湯気の立つ茶碗を手にひと息ついたその瞬間、陽光はそっと近づいた。「なあ、李婆……梅鈴、何かあったのか」その声は、普段の軽さを潜めていた。 陽光は人の変化に敏い。梅鈴の笑顔が、ほんの少しだけ遅れて咲くようになったこと。返事の声が、以前よりも小さくなったこと。 それらを見
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