秋山が示したのは、倉庫の一角に置かれた低い台だった。そこには、帳場から持ってきた控え帳が一冊、荷札の束、細い筆、朱の印を押すための小さな台が置かれている。すぐそばには、出荷を待つ木箱や紙包みがいくつか並んでいた。紗和は、ただ見ていればよいのだと思っていた。秋山も、そういうつもりだったのだろう。彼は帳簿を開き、荷札を一枚取り、品物の前に置かれている札と見比べながら、ゆっくりと説明した。「まず、帳場で納入先と品目を確認いたします。こちらは本日午後に出す分です。納入先、品名、数、期日。帳簿と荷札が合っているかを見ます」秋山の指は、紙に直接触れず、少し浮かせるようにして行を示した。「このあと、倉庫側の品と数を確かめ、問題がなければ荷をまとめます。最後に、出荷控えへ印を入れる。大きな流れは、このようになります」紗和は頷いた。難しい手順ではないように聞こえる。けれど、目の前には似たような木箱があり、似たような荷札があり、帳簿には細かな文字が並んでいる。ひとつひとつを正しく合わせることが、どれほど神経を使うものなのか、すぐに分かった。秋山は、一つ目の荷を示した。「こちらは学校向けの帳面です。帳簿では五十冊。荷札も五十冊。束は十冊ずつ五つに分けてあります」芳蔵がその束を少しずつ動かし、紐の緩みを確かめる。紙束は整然としていて、紗和の目にも数えやすかった。秋山は次に、包帯の箱へ向かった。「こちらは病院向けの包帯です。帳簿では十箱。荷札にも十箱とございます」紗和は帳簿を見た。日付。納入先。包帯。十箱。隣に置かれた荷札にも、確かに同じ文字がある。秋山の説明は丁寧だった。芳蔵が木箱の蓋に貼られた札を見せる。そこにも同じ納入先の名が書かれていた。紗和は、目で追った。一箱、二箱、三箱。積まれた箱は、同じ大きさだった。二段に積まれている。上に四つ。下に五つ。紗和は、もう一度数えた。上に四つ。下に五つ。九つ。
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