18歳の時、母親の治療費のために、鹿野寧々(しかの ねね)は10歳年上の男・御堂雅臣(みどう まさおみ)に自分を売り渡した。後になって知ったことだが、雅臣はあの御堂グループの社長だった。仕事では冷酷で誰もが恐れる存在なのに、寧々にだけは、信じられないほど優しかったのだ。雅臣はどこまでも彼女を甘やかした。それは、自分は愛されているのだと寧々に錯覚させてしまうほどだった。寧々が「南区にあるスイーツが好き」と何気なく言うと、翌日にはそのお店ごと雅臣に買い取られた。そして、寧々だけのためにスイーツを作らせるようになった。寧々が夜中に熱を出した時、雅臣は大切な国際会議を抜け出し、一晩かけて飛行機で戻ってきた。そしてベッドサイドで付き添い、何度も冷たいタオルを取り替えてくれた。寧々の20歳の誕生日に、雅臣は彼女をオーロラを見るために連れて行ってくれた。美しくきらめく光景の中で、寧々の指先に口づけを落とし、「寧々、これからは毎年の誕生日を一緒に過ごそう」と微笑みかけた。寧々はその言葉を本気で信じていた。ある見知らぬ女から、呼び出されるまでは。「自己紹介をしておくわ。私は椎名汐梨(しいな しおり)、雅臣の元カノよ。7年前、彼にプロポーズされたんだけど、私は仕事を選んで海外へ行ったの。それ以来ずっと連絡は取っていなかったけれど、私が戻れば、雅臣は必ず私のところへ帰ってくることは目に見えてるわ」そう言うと、汐梨は1枚の小切手を取り出し、寧々の目の前に置いた。「私は雅臣と復縁する。でもその前に、邪魔な女はすべて片付けたいの。ここに10億円あるわ。あなたみたいな囲われた女にとっては、十分すぎる金額でしょ。これを持って、雅臣の前から姿を消して」寧々はのどが引き裂かれそうに感じた。これまで、雅臣にどんな女性がいたのか、一切聞いたことがなかったのだ。まだ若かった寧々は、これまでの短い人生の中で雅臣のことだけを一途に思ってきた。けれど、彼は別の女性を深く想っていたのか。これまで一緒に紡いできた日々にすがるように、寧々は勇気を絞って言葉を絞り出した。「ですが、もう随分と昔の話です。雅臣さんは、あなたのことなど、とうに忘れているかもしれません……」汐梨はくすっと笑い声を上げた。「そっちは知らないでしょうね。かつて雅臣が、私をどれほど熱烈に愛していたの
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