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第6話

作者: マンゴー
退院の日、寧々のルームメイトたちが彼女に付き添って、クラスの親睦会へ行くことになった。

会場は若者に大人気のおしゃれなレストランだった。店内に入ると、刺さるような鋭い視線がすぐに寧々へ向けられた。

「あら、成績トップの有名人が、よくこんなところに来たわね。寮から何も言わず引っ越したかと思ったら。今日はいつものスポンサーを放っておいて大丈夫なのかしら?」

「どうせあのスポンサーに飽きられたんでしょ。清楚なふりをして、腹の底で何を企んでいるか分からないわよ。お金のためにオジサンを選ぶような女だし」

「うわ、本当あざとい。私たちにはそんな真似できないわ!」

日頃から寧々を疎ましく思っている数人の女子がコソコソ悪口を言うと、ルームメイトたちはカッとなって強く言い返した。

「デタラメ言わないで!寧々ちゃんは彼氏さんと暮らすために部屋を出たの!オジサンなんて勝手な言いがかりはやめて!」

「ウソでしょ?夜中に高級車に乗り込むところなんて、みんな見てるよ。これが体を売ってるんじゃなくて、一体何なの?庇うより早く目を覚まさせなさいよ。本当にS大学の恥だわ!」

これ以上ない侮辱的な態度に、ルームメイトたちの怒りはいよいよ引き返せないところまできてしまった。

相手の女子たちをとことんやっつけてやろうとしたとき、不意に窓の外に見慣れた姿があるのを発見し、ルームメイトたちはハッと声を弾ませた。

「言いたい放題言っているそこのアバズレども、しっかり目を開けて外を見なさい。あれが寧々ちゃんの彼氏さんだよ!」

室内にいた全員がその大声に反応し、いっせいに窓の方へ顔を向けた。

雅臣の顔を見るなり、先ほどまで言いたい放題だった女子たち全員が信じられないというふうに絶句した。

「あれ、御堂社長?冗談はやめなさいよ。あの御堂社長が何で鹿野さんみたいな地味な子に興味を持つのよ!釣り合うわけないでしょ?」

「そんなのあんたたちが決めることじゃない。今からちゃんと証明してやるわ!」

雅臣を見かけた安心感からか、ルームメイトたちは胸を張り、嫌がる寧々の手を引いて彼のもとへ駆けていこうとした。

好奇の目にさらされる中、振り返ると雅臣が助手席に回り、一人の女性が降りるのをサポートしていた。

二人の距離はあまりにも近く、ただの友人ではない雰囲気を漂わせていた。

そばでからかうようになりゆきを見守っていた別の女子が、降りてきた汐梨に気が付いた。

「あの人は、たしか御堂社長の元恋人の椎名さんだわ!うちのお兄ちゃんと同じ学校の出身よ。当時はあの二人の噂でもちきりで、コンクールで一緒にトロフィーをもらった写真が学校の展示パネルにあるの」

「そういうこと。御堂社長のような素敵な人が鹿野さんと遊んでいるはずなんてないわよね。誰かがあんなふうに御堂社長の名前にすり替えて、本当に愛人を囲う生活をひた隠しにしたのね」

空気が一転し、取り巻きを含めた周囲から浴びせられる蔑みの視線に、寧々は追い詰められていった。

重たい空気の中で雅臣が視線だけをレストランへと滑らせると、すぐ近くに立つ圭太へと指示を与えた。

雅臣の指示を受けると、圭太がまっすぐに寧々たちの方へと近づいてきた。

まだ何か別の展開があるのではないかと錯覚したルームメイトたちは、ただおとなしく寧々の手を強く握って立ち尽くした。

しかし圭太は四人の前を通り過ぎ、止まることなくオーナーの方へと向かった。

「雅臣様と汐梨様が今日ここでランチをするのですが、貸切にしていただけませんか?お二人は静かな空間がお好みなので」

超有名人が顧客だと知った店長は満面に笑みを浮かべて、大慌てでサービス品の補償と共に、顧客へ撤収を案内させた。

寧々たちも追い出されることになり、大勢で外へ出た瞬間、雅臣が汐梨を連れて歩いてくるのが見えた。

何事もないようすぐに避けてやりたくて、寧々は視線を伏せ、急いでその場から逸れようとした。

だが例の女子たちはチャンスとばかりに声を上げた。

「御堂社長!S大学デザイン学部の寧々って知ってますか?」

その名前を聞き、雅臣は歩みを止め、周囲を見渡した。

汐梨は隅っこにいた寧々を見つけ、彼が口を開く前に先制してこう言った。

「どうかした?」

「いやあ、大した話ではないですが、あの鹿野さんが身の程知らず、周囲に自分は御堂社長の恋人だと言いふらしているのを聞いたんです。本当に噂通りなのか知りたいと思いまして」

それを聞いて、雅臣の手を引いていた汐梨の指先から少し力が抜け、じっと彼を見つめた。

「雅臣、鹿野さんと何かあるの?」

そう問われ、雅臣はそっと目線を上げた。

汐梨は、二人の関係を知らないわけではない。

雅臣にも、この場にいる全員が寧々を辱めているのは明らかだった。

それでも汐梨は、あえて全員の前で問い詰めたのだ。

おそらく彼女は試していたのだろう。寧々が、彼の中でどれほどの存在なのかを。

もしここで彼が認めてしまえば、自身の復縁が難しくなる。

そう考えて、雅臣は冷ややかに答えた。「知らないな」

その突き放すような言葉に学生たちは嘲笑し、寧々へ視線を向けた。

容赦ない悪意を前に、寧々は静かに目を閉じた。

嘲笑が飛ぶ中、スマホが震え、そこには汐梨からの通知が表示されていた。

【雅臣は最初からあなたを愛してなんていない。だから、あなたに正式な立場を与えることもしないし、あなたの気持ちを気にかけることもない。

4年の奉仕も、彼にしてみれば何も意味がない。どれだけ可愛がられようと、所詮は籠の中の鳥にすぎないわ。あなたがどんなに望んでも、羽を広げて羽ばたくことはできないの】

寧々はそのメッセージを黙って見つめ、2年前、ルームメイトたちに雅臣とのキスを見られた、大学正門での出来事を思い出した。

その時、ルームメイトたちが雅臣との仲を執拗に問い詰めていた。

彼女が答えるより先に、雅臣が肩を抱き寄せ、冷淡に言ったのだ。「恋人同士だよ」

あの時から、寧々は自分が大切な恋人だと信じていた。

けれど今やっと理解した。全ては、自分の一方的な思い込みにすぎなかったのだ。

彼は最初から汐梨の帰りを待っており、恋人の座はずっと彼女のものだった。

自分はただ、失恋を癒やすための道具に過ぎず、心を紛らわせるだけの対象だった。

そして、出会った時から道ですれ違うだけの、取るに足らない存在だったのだ。

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