All Chapters of ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる: Chapter 11 - Chapter 20

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第11話:闘技場②

 闘技場に通うようになってから面白いことに気付いた。カジノの時はまったく余裕がなかったから気づけなかったとも言える。 多種多様な人種がこの街に住んでいるのだ。ニンゲンはもちろんのこと、半獣半人が存在する。さらに魔族と呼ばれる肌が紫色の人種までもが存在していた。 女神から邪龍、邪神、魔王の存在を聞かされていた。ならば、魔族はニンゲン族に仇為す存在であるはずだ。だというのに闘技場で平然と魔族たちが賭け事に混ざっていた。 本来ならいがみ合い、殴り合う存在であるはずなのに、お互いに酒杯を掲げていた。(なんてカオスな空間なんだ。俺も混ざりたいよぉ!) 自分は残念ながら16歳。身分証では20歳と偽っているが、それでもお酒は女神から止められている。大人しくミルクで喉の渇きを潤している。そして、こういう場でミルクを飲むということはからかわれる対象になってしまうということだ。「おい、アルトの坊や。賭け事は得意だけど、酒はこれっぽちもダメなのかーい?」 「う、うるせー! 俺は酒癖が悪すぎるからってことで女に止められてんだよっ!」 もちろん大ウソだ。酔っぱらって身ぐるみ剥がされないように用心しているだけだ。闘技場の面白いところは賭け事に強くても、そこまでちやほやされないことだった。 カジノなら勝者が王様であることは間違いない。だが、ここでは酒を奢ってくれるやつこそが王様だ。アルトはここまで一切、この場に集まるメンバーに酒を奢ったことはない。しょせん、一期一会の間柄で終わるんだと相手にしなかった。(さすがはボッチの俺。こんなんだから、高校生活でも河原でエロ本拾ってるスクールカースト最底辺のボッチだったんだろうな) 生まれ変わるなら、今この時なのかもしれない。ちょっとだけ勇気を出して、皆に向かって「奢ってやるぜ、お前ら!」と叫ぶだけでいい。 だが、どうしても自分の中のちっぽけなプライドがそれを許してくれなかった。闘技場はカオスであるがゆえに最底辺のやつらが集まる最底辺の社交場であった。 正直、同じバカになれたら最高に楽しいんだろうなとは思う。でも自分はそんな連中と同じ場所に居たいとは思わ
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第12話:ギルド長①

 河原でエロ本を拾っている陰キャな自分にはわかる。このリリーという娘も陰キャ属性だと。陰キャと陰キャは惹かれ合うという法則があるとかないとか。 丸眼鏡にぽわぽわのピンク髪。スラッとした体つきで貧乳と言うこと無しの美少女だ。なんとしてもお近づきになりたい。 どうにかして、共通の話題を見つけたい。まずは先ほど出てきていたギルド長の話を振ってみる。「えっと……リリーとギルド長はどんな関係なんだ? 良かったら教えてくれないか?」 「うーーーん。しゃべっていいのかどうかわかりません。無関係の人ですから……」 「がーーーん! 無関係って言われたーーー! ショックすぎて、夜しか眠れないよぉぉぉ」 「はわわっ。傷つけるつもりで言ったんじゃないですぅ。ただ……言いづらいことがありまして」 リリーは良い子なのだろう。ギルド長がお忍びで闘技場にやってきて、さらに参加までしている。何か大きな秘密が隠されているのだろう。 そして、自分とリリーは出会ったばかりだ。浅い関係でしかない自分に秘密を教えることなどできようもない。 ということで、ここでエスパー能力の透視の出番だ。透視でリリーの秘密を暴く。さすがエスパー汚い。関係を深めるためなら、何でもやってみせる。「喋れないってのなら、当ててみせるよ。リリー、キミはギルドの受付嬢だ」 「へっ!? なんでわかるんですぅ!?」 「ははっ。大当たりだ……ぜ。俺、人間観察が得意だから☆彡」 決め顔で言ってみせる。しかし、せっかくの決めポーズもしてみせたというのにリリーはおどおどとしている。そこは「惚れました……(ぽっ)」ってなるところじゃないのか? と訝しんでしまう。 ゴホンと咳払いをする。彼女は陰キャだ。突然のアプローチに戸惑っているに違いない。彼女の警戒心を解くためにさらに透視能力を発揮させる。「えっと……日々の業務でストレスが溜まっていたギルド長が冒険者ギルドを飛び出して、ストレス発散に闘技場に飛び込んでいったって感じ?」 「なんでわかるんですぅ!?」 「それは俺が……えっと……ああ、そうだ。占い師だからだ!」
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第13話:ギルド長②

 ギルド長のゲイリーに1分間ほどじっくりよしよしされた。照れくさい話だが、存外、気持ちがよかった。よしよしされ終わった後、リリーがこちらに近づいてくる。「ギルド長って、悲しい過去を持っている人を見ると、こうやっちゃうんですぅ」 「なるほど……ははっ! こりゃ1本取られたぜ。こりゃ、お返しに無料で占うしかなくなっちまったなぁ?」 「うふふ……ギルド長って、人たらしですよ、ほんと」 なんだか優しい風が自分たちの間に流れていた。こちらの世界にやってきてから、初めて人の優しさに触れた気がしてしまう。 改めて、ギルド長に手を差し伸べる。ギルド長が訝しんでいるのが見て取れる。こちらはにっこりとほほ笑み、「怖くないですよぉ」とあやしてみせる。 ギルド長は「びびってるわけじゃねーよ!」と捨て台詞を吐いた後、こちらの手を取ってくれる。これで肉体の繋がりが出来た。透視しやすい状況が出来上がった。 まずは身体のあちこちを透視する。それで判明したことは身体のどこかに異常があるわけではなさそうだった。 身体に不具合が見えないということは、心の方に問題があるのだろうと予想がついた。「えっと……突然ですが、俺に心を開いてくれますか?」 「ふむ? どうやればいいのだ?」 「そう……ですね。俺に秘密を教えてもいいと心で念じてもらえると助かります」 「ああ、わかった。念じるだけでいいのだな?」 透視で心を覗こうとしたら、大きな鉄扉が目の前に立ちはだかった。これは心の壁なのだろう。この扉を開けてもらわなければ、心の中を透視するのは難しいと感じた。 だからこそ、信頼してもらうしかない。ギシギシゴゴゴ……と音を奏で、ギルド長の心の扉がゆっくりと開き始める。 ほっと安堵するしかない。少なくともギルド長は自分に悩みを打ち明けたいと思っていてくれているのが伝わってくる。 だからこそ、その信頼に答えたくなってしまった。(なんだこの空間。イバラだらけじゃないかっ!) ギルド長の心の中を透視して驚いた。一面が緑色のイバラで支配されていたことだ。
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第14話:ギルド長③

 闘技場を後にして、自分、リリー、そしてギルド長のゲイルの3人で洒落た店に入る。そこは割烹料理屋だった。 ゲイルが店長に「奥を使わせてもらうぞ」というと、店長から「へいっ」と返事が返ってくる。二人は知った間柄だというのが伝わってくる。「秘密の相談によく使わせてもらってる店だ。ほら、遠慮なく何か頼むといい」 「じゃあ、俺はサーロインステーキで!」 「そんなもん、注文してもでてこねえよ!?」 しばらく真面目モードだったので、久しぶりに一発かましてみせた。お品書きを見る感じ、この店は魚料理を主に提供してくれる。 それを否定するように肉が食いたい! と言ってのけた。滑り出しは上々。あとは畳みかけるだけだ。「じゃあ、リリーにクリームソーダ―を奢るぜ」 「だから、ここは割烹料理屋だと言ってるだろ!?」 「がんばれば出てくるんじゃねえの?」 「店の雰囲気がぶち壊しだわっ! もういい。ワシが適当に全部頼んでおく」 ありがたい話だ。こちらはまだ16歳。この手の店で何を注文していいのかが実のところ、よくわからない。ゲイルがメニューを片手に持って手際よく店員に注文をしてくれている。「とりあえず生中ふたつにミルクがひとつ」 「……? 俺は酒を飲めませんよ?」 「そうだ。だから、ワシとリリーの分だ」 「……え? リリーってこう見えて20歳超えてるの!?」 「女子の年齢を探るのはマナー違反だぞっ!」 驚きを隠せなかった。リリーは見た目は美少女なのに20歳を超えているようだ。これではキレッキレに可愛い女子と言い換えなければならない。 困ったことになってしまった。リリーに入れ込んでいいのかわからない。実は10歳差ありますとかになったら、さすがに考えてしまう。「何をそんなにうろたえてるんだ。リリーは20歳になったばかりだぞ」 「ほっ……心底安心しました」 「あのぉ。私の年齢って、今この場面で重要なことなんですぅ?」 「超重要!」 「言い切りましたぁ!?」 歳の差は4つ。ホッと胸を撫でおろしてし
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第15話:ギルド長④

◆ ◆ ◆ 宴もたけなわになってきた。ゲイルだけでなくリリーもお酒の力によって、ほっぺたが赤く染まっている。二人ともかなり打ち解けてきたという自信がある。そして、ついに爆弾発言を投入することにした。「帳簿を見せてください」 単刀直入に言った。ゲイルが眉をひそめた。そして、手に持っていたジョッキをゆっくりとテーブルの上に乗せている。そうした後、こちらに身体を寄せてきた。相当な威圧感を感じてしまう。「あれを見る気か?」 ゲイルから怒りは感じない。ただ不思議そうな雰囲気が伝わってくる。何故にお前がそれに興味があるのか? と聞きたがっている感じがした。自分は臆せずにゲイルをまっすぐと見る。「はい」 「後悔するぞ」 「しません」 「……そうか」 ゲイルが何かを諦めたかのように大きなため息をつく。リリーが「はわわ……」と慌てふためいている。自分とゲイルが一触即発な雰囲気を出している中、リリーは癒し枠であった。「リリー。帳簿を見せてやれ」 「いいんですかぁ!?」 「ワシの座右の銘は『酒杯を交わした相手はズッ友』だろ」 「そんなの初めて聞きましたぁ!?」 「おや? 違ったかな?」 ここでリリーに代わってツッコミを入れるべきなのだろう。すかさず「リリーが戸惑ってるやんかー!」とゲイルに合いの手を入れてあげた。 そうするとゲイルが「がーははっ!」と盛大に笑い出す。「リリーよ。もしかするとアルトは悪いやつなのかもしれん。だがな? ワシは疲れた。ギルドの腐敗をどうにもできずにいる愚か者のひとりよ」 「まあそうなんですけどぉ」 「そこは否定してくれ。少しでも……だっ」 「いや、事実ですしぃ?」 「リリー。ワシ、泣いちゃうよ!?」 ゲイルは相当酔いが進んでいるのか、リリーと漫才を始めてしまった。このままでは話があっちこっちに飛んでしまう。「ごほん」と咳払いをして、場を整えることにした。「泣き出して、リリーにあやしてもらってるところ申し訳ないです、ゲイルさん。俺にギルドの帳簿を
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第16話:女神の採点

 帳簿を見れば終わる。そう思っていた。 この時の俺はまだ知らなかった。 冒険者ギルドの腐敗が、想像より遥かに深刻だったことを。 ギルド長のゲイルたちと別れた後、自分はカジノ系列のホテルへと戻る。そこでは女神がにっこにこの笑顔で待っていやがった。「はい。アルトの初恋、ばっちりとのぞき見してたわよ♪」 「見られてたぁぁぁ!? いつから!?」 「闘技場の外に出てきたところくらいから」 「いやだぁ! 俺とリリーの仲は女神様が引き裂くんだぁ!」 「そんなことしないわよ、うふふっ」 女神はそう言うがこちらは生きた心地がしない。女神にとって自分は相当面白いおもちゃなのだろう。下手に歯向かえば、女神に人生をめちゃくちゃにされる気がしてならない。 ここは大人しく従順な振りをしておく。「俺、リリーとは本気なので、変なことしないでください、何でもしますから、お願いしますからぁ!」 「今、何でもするって言った?」 「どきり……」 「じゃあ、働いてばかりのお姉さんにマッサージをお願いするわっ」 「ええ!? それ、俺にとってはご褒美ですが!?」 「ふふっ。リリーへの感情を私へのマッサージで上書きしてあげる♪」 「こいつ、女神じゃない! 悪魔や!」 女というのは恐ろしい。他の女の存在を決して許してくれないようだ。嫌々ながらもマッサージの準備をする。女神はふかふかのベッドの上でうつぶせに寝ていた。 まずはふくらはぎからだ。女神のふくらはぎを丁寧に両手でマッサージする。つきたてのお餅をこねているような感触だ。 ごくりっ! と息を飲むしかない。ふくらはぎの次は太腿だ。むっちりとしており、手で触るとそのまま吸い込まれそうになってしまう。「うほっ! 女神様ぁ!」 「ふふっ。アルトくん、興奮してるぅ~♪」 「くあああ! 静まれ、俺のおちんちん! こいつは女神じゃない。悪魔だ!」 まさに地獄の時間だった。女神から見れば自分はペットにしかすぎないのだろう。身体を触らせようが、それはペットがじゃれつい
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第17話:ギルド会館①

 カジノ系列のホテルで一夜を過ごした後、朝食も取らずに急いで冒険者ギルドへ走る。リリーのことが心配でたまらなかった。 あまりにも早くギルド会館に来てしまったのか、入り口は開いていなかった。やきもきとしてしまう。 リリーが帳簿を集めると言ってくれたのは嬉しいが、リリーが危険に巻き込まれることを考慮していなかった。 リリーが行動に出る前に彼女を止めたかった。その願いが天に通じたのか、彼女の声が後ろから聞こえてきた。こちらは安堵して、腰砕けになってしまう。「おはようございます? って、なんでへたりこんでるんですぅ!?」 「よかったーーー。もう間に合わないかと思ってたから」 「よしよし。泣き虫さんですね、アルトさんは」 早朝からボロボロと涙を流してしまった。それくらいリリーのことを好きになってしまったのだろう。「ごめん。俺、浅はかだった」 「何がですぅ?」 「リリーが汚い陰謀に巻き込まれることをまったく考えてなかった。俺はバカすぎるっ」 「ああ。帳簿のことですね? 大丈夫ですぅ。何かあったらアルトさんに責任取ってもらうんで♪」 「天使や、天使様がここにおられるぞぉ!」 リリーに頭が上がらなくなってしまう。リリーは危険を理解しているというより、それでもやる覚悟を決めているようだった。危険を顧みずに今日もギルドへと出勤してきたのだ。 絶対に彼女を守らなければならない。男として当然の義務だと感じる。「リリー。俺がリリーを守るからっ」 「うふふっ。期待していいのぉ?」 「ああっ! 俺を信じてくれっ」 「じゃあ、私の騎士様……入り口に立たれると邪魔なので横にどいてもらえますぅ?」 「いきなり邪魔扱いされたぁ!?」 「私、今日の鍵開け当番なのですぅ」 「あっはい」 自分は横に移動する。すると、リリーが入り口に近づき、バッグから鍵を取り出す。そして、鍵穴に鍵を差し込み、入り口を開ける。 リリーが先にギルド会館へと入る。自分はリリーの後ろをこそこそとついていく。ギルド会館にひと気は無かった。そ
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第18話:ギルド会館②

 リリーの案内で過去の帳簿が収められている資料室へとやってくる。古書独特の匂いが鼻につーんとする。「へっぷし! いっぷし! 俺、この匂い、苦手だな」 「クスクス。私は好きですけどね。アルトさんは私とは違うんですね?」 「お、おう!? 今からこの匂い、好きになりまーす!」 リリーにからかわれている。それが心地よい。にこやかな笑顔のリリーが「はい、どうぞ」と分厚い帳簿らしきものを手渡してきた。それを手に取るとゾクッ! と嫌な予感が背中に走ることになる。 今までのほんわかとした空気が一気に冷めた。見たくないものを渡されてしまったという気持ちになるが、後の祭りだ。「ほら、アルト。さっさと透視♪」 「ちょ、女神様! リリーの前でそれを!?」 「ん? まずった?」 「俺、占い師ってリリーには説明してるんで」 「あは~ん。アルトったら賢い♪」 肝が冷えてしまう。こちらがエスパーだということをリリーには知られたくない。あくまでも占い師として『視る』能力を持っているとリリーには説明している。 聖女の時の二の舞はごめんだ。追放されるのは一度だけでいい。 リリーは「トーシ?」ときょとんとした顔をしている。ホッと胸を撫でおろすしかない。この世界ではエスパーという職業はレアもレア、ウルトラレアなのかもしれない。 しかし、自分の横にはうっかり口を滑らせまくる女神がいる。安心してはいられない。さっさと帳簿を透視能力でじっくりと見る。 ページを1枚、また1枚とめくる。ついでに、ほんにゃらはんにゃらほわわ~と口ずさんでおく。占い師らしく、それっぽく振る舞っておく。「視えた。って、口にしていいのかわからないっ」 「アルトの知ってること、教えてほしい、そーれ♪」 「ぐははっ! ちょっと、女神様! わき腹をくすぐるんじゃない!」 「やめてほしかったら、視えたもの、教えなさいー?」 「わかりましたって。ちょっと、手をどけてくださいよぉ!」 透視で見えたもの。それは金の流れであった。数字を追っていると金色の砂粒が
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第19話:ギルド会館③

 王弟だろうがなんだろうが関係ない「リリー安心してくれ。リリーの日常は俺が守る」 そう決め台詞を吐いた瞬間だった。バーン! というけたたましい音と共に資料室の扉が勢いよく開いた。「何を調べているかはわからないが、おとなしくしてもらおうか!」 低い男の声が響く。俺とリリーは同時に振り返った。そこにはメガネをかけた青年が立っていた。見た目の年齢は30後半といったところだろう。 その青年はこの部屋の奥へと入り込んできた。そして、リリーが手にしている帳簿を奪い取る。彼は帳簿とこちらを交互に見た後、ギリギリと歯ぎしりをし始める。「何故、帳簿を調べている? 答えようによっては……」 「答えようでは俺たちをどうするってんだ!?」 「警察に突き出す!」 「普通の反応すぎだろっ。しかも他力本願っ!」 早急にツッコんでやった。しかし、青年はクイッとメガネをかけ直し、眼鏡のレンズをキラリと光らせる。「ふっ。私はモブだ。そんなモブ男が実力行使でどうにかできるとでも?」 「自分からモブ発言しやがっただと!? こいつ、もしかしてただのモブじゃない!?」 「ふははっ。本当にただの一般人だよっ! 残念だったな!」 「ご退場願いまーす!」 エスパー能力で時間を止める。青年からメガネを分捕り、それをテーブルの上に置く。そして、時間停止が終わる。青年は「メガネ、メガネ!」と言いながら慌てふためくことになった。 その隙にリリーと揃って、その部屋から抜け出す。気づけば他の従業員が出社してくる時間となっていたのだろう。 リリーとこれからどうするか相談することにした。「私はそろそろ始業の時間なのですが」 「そういえばリリーの仕事って何? もしかして受付嬢?」 「はい! よくわかりましたね? ヒントも何も言ってないのですが」 「それは俺が占い師だからかな?」 「うふふ。そんなことまでわかっちゃうんですね? アルトさんには隠し事、できないかも」 もちろん、当てずっぽうで言ってみただけだ。ギルド会館で女性が勤
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第20話:ギルド会館④

 リリーは未だに他の受付嬢にもみくちゃにされている。そろそろこの騒ぎを終わりにしたい。女子たちの波にズイッと身体を潜り込ませ、リリーと対峙する。「リリー。ギルド長のゲイルさんに会いたいんだ。取り次いでもらえるかな?」 「は、はいっ」 こちらを囲む受付嬢たちの目の色は好奇心でいっぱいだったが、それに応えている時間は自分にはなかった。 帳簿を調べたことで得た情報を一刻も早くゲイルと共有しておきたい。リリーが忙しなく動いている。それを目で追いながら、思案に暮れることになる。(王弟のパウロ・ジェームズ。俺が手にする冒険者ギルドから手を引いてもらわないとなっ) (しかし国王様の弟なのに冒険者ギルドと裏で繋がってるってのはどういことなんだ?) (まるでわからん。ただ金を受け取ってるだけならいいけど……俺の嫌な予感って悪い方に働くからなぁ) 頭の中は真面目なことを考えていた。しかし、だんだん身体が本能的にそれを嫌がり始めたのか、自分の目は忙しなく動いているリリーに釘付けになっていた。さらに言えば、リリーのお尻を注目してまくっている。(安産型だな) (健康な子を産んでくれそうよね) (うんうん。って、女神様ぁ!? 俺の脳内に直接話しかけてきてる!?) (アルトくんだって、エスパーとしての訓練を積めばできるようになるわよ?) (えっと……念話でしたっけ) (そうよ。ファミチキくださいって口に出さなくてよくなるわよ) (いや、それ、ただのエスパー能力の無駄遣いっ!) 女神アテナは遅れて、この場にやってきていた。周りの受付嬢たちがぺこぺこと頭を下げる中、女神は軽く手を振って応えていやがる。 それだけで「キャー!」という黄色い声が上がる。どんだけ人気者なんだとびっくりしてしまうしかない。(女神様って女性にも人気なんですね) (なんか棘がある言い方ぁ~) (俺もモテたいですよトホホ) (リリーちゃんって可愛い娘がいるのに?) (リリーとは別腹でモテたいってのは無しですか?) (男
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