All Chapters of ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる: Chapter 21 - Chapter 30

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第21話:王弟パウロ①

「ゲイルの胃に大きな穴を開けるかもしれないけれど、聞いてほしい」 「アルト、何をそんなに思い詰めた顔をしてるんだ? まさか……裏金の流れを掴んだのか!?」 「その通りだ、ゲイルさん。聞いて驚くなよ……裏金の最終地点は……王弟のパウロ・ジェームズだ」 「グエーーーいっそ殺してくれんンゴねぇ?」 「気をしっかりもって!? ゲイルさん!?」 椅子に座っていたゲイルがその場で崩れ落ちた。リリーもリアクションが大きかったが、ゲイルは彼女の10倍のリアクションを見せてくれた。 自分は王弟のパウロがどれほどの大物かがわかっていない。ある意味、自分は幸せ者なのもかもしれない。 しかし、相手が誰であれ、冒険者ギルドを手に入れるのは変わらない。邪魔をするというのであれば、王弟をぶん殴ってやるつもりである、こちらは。 鼻息をフンスフンス! と荒げていると、ようやくゲイルが復活して、椅子に座り直していた。「とんでもない名前が出てきて、つい情けない姿を見せてしまった」 「本当ですよ。てか、リリーもそうだけど、そこまで厄介な相手なんですか?」 「うむ……王弟のパウロ様は冒険者ギルドの庇護者なのだ」 「えっと? 庇護者がなんで裏金を受け取ってるんですかね!?」 「灯台下暗しとはまさにこのことだ。パウロ様を公然と非難すれば、間違いなく私とリリーは職を追われる」 「リリーは俺が幸せにするからいいけど、ゲイルさんは本当の意味で無職になりますね?」 「こいつぅ!」 ゲイルがこちらの身体を掴んできて、さらに前後にぶんぶんと揺らしてきた。こちらはまったく……とため息をつくしかない。 とりあえず、事情は見えてきた。王弟のパウロは冒険者ギルドの庇護者であることを良いことに、裏金作りの組織として、冒険者ギルドを利用している。 まさに癒着と言ってもよい行いをしている。そして、何のために裏金をせこせこ作っているかが問題となる。「俺の予想としては……国王への反逆ってところかな」 「あはは……私腹をただ肥やしてるってだけで勘弁願いたい」 
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第22話:王弟パウロ②

 やるべきことは決まった。今すぐにでも王弟パウロのところへ乗り込んでやりたい気持ちでいっぱいだ。 だが、ここで待ったをかけてきた人物がいた。ギルド長のゲイルである。ゲイルは胃のあたりを手で押さえながら、椅子から立ち上がる。ホワイトボードの前まで移動し、そこでペンを取る。 ゲイルは忙しなくホワイトボードに何かを書いている。しばらくするとそれがこの国における権力相関図であった。「国王と教会が繋がり、王弟と冒険者ギルドが繋がっている。王弟がもしも国王に喧嘩を売るとなれば、その渦中に身を置くことになるのだぞ、アルトよ」 「なるほど? 下手をすれば国王にも睨まれると」 「ああ……巻き込まれ損になる可能性が高い」 「ふむ? それがどうしたんですか?」 「なん……だと!?」 「俺は……聖女たちにザマァ! できて、かつ、リリーと幸せになれるならどうだっていいんです(きっぱり)」 「言い切ったぁ!?」 ゲイルは心底驚いている。こちらとしては国王と王弟の諍いなどどうでもいい。好きなだけやってろと言ってしまいたいくらいだ。 肝心なのは冒険者ギルドを手中に収めること。そして、冒険者ギルドを頼ってくるであろう聖女パーティにザマァ! してやることだ。 まったくもってゲイルは勘違いしている。何度でも言いたいのだが、王弟の企みに関して、なんら興味がない。 王弟のことを路傍の石程度にしか思えない自分がいる。そんな不遜な自分に対して、ゲイルがわなわなと身体を震わせ始めた。こちらはきょとんと首を傾げてしまうしかない。「パウロ様は冒険者ギルドの庇護者なのだ。そのパウロ様が命じれば、冒険者ギルドはアルト、キミの敵になるということだぞっ! 発言には気をつけるんだ」 「それはあくまでもパウロ何某が冒険者ギルドの庇護者のままだったらの場合でしょ?」 「言わんとしていることはわかる。だが……金の卵を産む冒険者ギルドをパウロ様がそう簡単に手放すとは思えない」 こちらとしては交渉で冒険者ギルドを譲ってもらいたい。だが、相手が嫌だとごねてきた場合は実力行使も辞さないつもりでいる。
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第23話:王弟パウロ③

 腹は決まった。王弟パウロに会いにいく。そして、彼に一言、冒険者ギルドから手を引けと命令する。言うだけなら簡単だ。しかし、いざ実行するとなれば途方もない苦労が待ち受けているだろう。 だが、こちらには女神がついている。彼女に頼み込めば、王弟に会うためのステップをいくつかはキャンセルできるはずだ。「というわけで、俺、王弟パウロに会いたいんだけど。女神様、何か策はありますか?」 「策ってほどもないけど……とりあえず屋敷に行けばいいと思うわよ」 「あはは……俺、何のコネもありませんけど!?」 「まーた、わたくしに貸しを作るつもり~? 少しは返してほしいんだけど~?」 「そこは俺の可愛さに免じて!」 「じゃあ、許す!」 「許すのかよ!」 こんな情けない男のどこが可愛いのか、さっぱりわからない。もしかすると女神という超越者視点からすれば、自分みたいな情けなさで溢れる男は可愛いの範疇に収まっているのかもしれない。 真相は謎だ。しかし、齧れるものは親のスネでも齧ってやる。一時の恥を忍ぶことこそが肝心だ。大局を見失うほうがよっぽど愚かだ。 甘えられるうちが花という言葉もある。女神に頼りっきりだが、女神の指示に従うことになる。「じゃあ、まずは身なりを整えないとね。屋敷を訪ねるなり、無礼者! で斬られたら洒落にならないし」 「この制服姿じゃダメなんですか?」 日本の学生服は冠婚葬祭や式典に出席する際、間違いのない服装だ。しかし、女神は言う。それだけでは足りないと。 むむむ……と口をへの字にしてしまう。今からぶん殴りに行く相手にそこまで礼を尽くすべきなのかという疑問があった。「いきなり敵対するわけにはいかないじゃない。相手の話を聞く度量も必要よ?」 「そんなもんなんですかね? 裏金を受け取ってる悪いやつなんて、ぶっとばしちゃえばいいと思うけど?」 「それは獣に対してだけ。相手と言葉が通じるのなら、まずは言葉を交わしてみなさい」 「めんどくさいなあ?」 「面倒くさがらない♪ わたくしはアルトが立派な男になってほしい
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第24話:王弟パウロ④

 王弟パウロの屋敷の前まで来たはいいが、女神の御威光が強すぎて屋敷は大騒ぎ。どうしたものかとこりこりと指で頬を掻くしかない。 どこかで時間を潰してくるくらいなら、屋敷の前で待っていた方がマシだというくらい、時間を潰せる場所がない。「どうします? 女神様」 「手ぶらで帰るわけにはいかないわよ。このまま待たせてもらうわよ」 「立ちっぱなしで?」 「もちろ~ん♪」 やれやれと肩をすくめるしかない。屋敷の中からどったんばったんという音がこちらに響いてくる。あちらも今、懸命におもてなしの準備を整えている真っ最中なのだろう。 彼らの努力を無駄にはできない。ここで何も言わずに帰れば、逆恨みされてしまう可能性だってある。 手持ちぶたさを感じながらも、リリー、女神、そして自分の3人は屋敷の前でつっ立って待つことになる。 しかし、この状況に5分もせずに飽きてしまった人物がいた。当然女神である。ふわぁ~~~と大きなあくびをし始めた。そして、こちらに向かって無茶ぶりを展開する。「アルト。お茶とおつまみ買ってきて?」 「俺が準備しなきゃならんの!?」 「瞬間移動の練習だと思って♪」 「修得してねえよ!?」 「ハリーハリー♪」 女神の言う通り、瞬間移動さえ取得していれば、女神のパシリになれたであろう。それが口惜しくてたまらない。いや、全然、そんなことはない。むしろ、修得してなくてよかったとさえ思えてしまう。 次に女神の無茶ぶりの対象になったのはリリーであった。リリーは「いやですぅ!」と拒否しまくっている。「なんで、私がこの場で踊らなきゃならないんですぅ!?」 「目の保養にいいかなって♪」 「そんなこというなら、麗しき女神様が躍ったほうが皆の目の保養になるのですぅ」 「わたくしが踊っても、それをわたくしが見れないじゃない」 なんとも傲岸不遜な女神であった。女神から見れば、ニンゲンは等しく女神のオモチャなのかもしれない。(おー怖い怖い。機嫌を損ねないように注意しとかないとな。カエルとかに変えられそう)
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第25話:王弟パウロ⑤

「さて、女神様。いったいどんな用件でオレのところにやってきたのですかな?」 椅子に座ったままの王弟パウロがジロリと女神を睨んでいる。女神はにっこりとほほ笑み、金貨が詰まった革袋をパウロの目の前に投げた。こちらとしては驚くしかなかった。「ちょっと女神様!?」 「交渉ってのは最初にガツンと行くのがいいのよっ」 「そんな交渉方法、聞いたことないですけどぉ!?」 女神が叩きつけた革袋に見覚えがある。それには女神に渡した200万ゴリアテが入っているはずである。女神は惜しげもなく、交渉のテーブルにこちらの資金を披露してみせた。 ごくり……と息を飲む音が耳に届く。今まで悠然と構えていた王弟パウロの眉がピクピクと動いた。金貨1枚で1万ゴリアテ。それが200枚も入っている革袋だ。誰だって息を飲むに決まっている。「こんな大金、いったいどこで?」 「ふふふ。カジノで稼いできたの。こっちには優秀な占い師がいるのよ」 「ほほう……では、その占い師殿が何かの予言でもしたのですかな?」 「そうよ。あなた、冒険者ギルドから裏金を受け取っているそうじゃない? 困るのよね。わたくしが手を出そうとしている冒険者ギルドにあなたが関わっているのは」 ここで一拍。王弟パウロが「失礼」と言い、懐から黄金のケースを取り出す。それをテーブルの上に置き、そこから葉巻を取り出した。そして、葉巻にマッチで火を付けて、スパスパと吸い始めた。 紫色の煙が部屋に漂う。女神がめんどくさそうにその紫煙を手でかき消す。「ふむ……要は手切れ金を渡すから、冒険者ギルドを女神様に譲れということですかな?」 「そういうこと。話が早くて助かるぅ~」 「まだ誰も譲るとは言ってませんがね?」 「あら、いけず~。アルト、出番よ」 「へっ!?」 「あなたの能力、ぞんぶんに見せてあげなさい♪」 いきなり出番が回ってきた。こちらは心の準備が出来ていない。全部、女神がやってくれそうな雰囲気だった。チッと心の中で舌打ちしてしまう。 女神がどこかで自分に話を振ってくることくらい想定に入れておかなけれ
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第26話:王弟パウロ⑥

 ギルド長のゲイルが剣の柄に手を置いている。居合斬りの構えだ。こちらが少しでも不審な動きを見せれば、斬る気なのだろう。 ゴクリ……と息を飲む。動けずにいるとリリーが一歩前に出る。慌ててリリーを止めに入るや否や、ズシャッ! と背中に熱が走った。「いったーーーー!」 「みね打ちだ」 「警告にしてはやりすぎじゃね!? 背骨が折れるかと思ったよ!?」 「もう一度言う。みね打ちだっ」 「大事なことだから二度言った!?」 今のゲイルは異常と言えた。リリーと言えども斬る気満々である。何故、こうなってしまったのかよくわからない。 背中が痛むためにその場に膝をつくことになった。鈍い汗が身体全体から溢れてくる。今の一撃は鞘で打たれた。白刃を喰らっていたら横に真っ二つにされていた可能性がある。 怖気と痛みに耐えながら、どうにか立ち上がる。リリーが心配そうにこちらの顔を覗き込んでいる。「あのぉ……私のわがままを聞いてもらえますぅ?」 「な……に?」 「ギルド長のゲイル様を傷つけてほしくないのですぅ」 「……その心は?」 「ゲイル様は仕方なくパウロ様を守っているからですぅ」 「……善処します」 リリーの頼みとなれば、火の中、水の中だ。あえて火中の栗を拾いにいくことくらい、どうということはない。 ちらりと女神の方へ視線を向ける。女神が「やっちゃいなさい♪」と言ってきた。やれやれ……とため息をつくしかない。 ゲイルの後ろにはパウロがいる。自分の後ろには女神とリリーがいる。どちらも引けない。戦うしか選択肢は残されていなかった。「どうしても引かぬというのだな? アルトくん」 「ああ……俺はどうしても冒険者ギルドを手に入れたいからな。ゲイルさん。あなた相手でも手加減しないぜ?」 「手加減して勝てる相手だと思われたくないなっ!」 ゲイルがそう言い放つや否や、一気にこちらとの距離を詰めてきた。目にも止まらぬ早業とはまさにこのことだった。 剣を鞘から抜くことなく、鞘で散々にこちらを殴ってきやがった。
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第27話:王弟パウロ⑦

 ギルド長のゲイルとの対決は千年戦争状態となっていた。どちらも決定打を欠いている。この状態を嫌がった自分はついに新しい動きを見せる。 まずは透明化して、ゲイルの目の前から消える。ゲイルはその場で剣を収め、目を閉じ、居合い抜きの構えを取る。 俗に言う気配で相手の動きを捉えるつもりなのだろう。ゲイルの取った行動は正しい。こちらは超高速で動いている振りをしているが、実のところ、透明化でそう見せているだけだ。 ゲイルの間合いに入れば確実に斬られるだろう。だからこそ、透明人間になった状態で、ゲイルの間合いに入らないように遠回りして、パウロの後ろへと回り込む。 そこで透明化を解いた。リリーが「あっ!」と大声をあげた。それに合わせるようにゲイルも目を開けて、後ろへと振り向いてきた。 しかし、後の祭りであった。こちらはしっかりとパウロを左手で拘束していた。そして、空いた右手にはナイフを持ち、それをパウロの首筋に当てている。「勝負ありだね、ゲイルさん」 「ぬぐぐ……1vs1の対決で人質を取るとは卑怯な」 「残念。俺はゲイルさんとちがって、武人じゃないからね。使える手はなんでも使わせてもらうよ」 「ふん……確かにその通りだな。ワシもリリーを人質に取るべきだった」 「今からでもそうする?」 「ぬかせ。ワシは武人ぞ」 一瞬、ドキリとしてしまった。ゲイルほどの達人ならいとも簡単にリリーを捕らえることが出来たであろう。だが、ゲイル自身がそうすることを否定した。ホッと胸を撫でおろすしかなかった。 ゲイルが剣の柄から手を離す。そして、降参の意を示すように両手をあげてきた。「まずは質問なんだけど……パウロとゲイルさんはどんな関係なんだ? ゲイルさんはギルド長の立場からすれば、裏金を吸い上げているパウロとは敵対していてもおかしくないはずだ」 ゲイルは冒険者ギルドの腐敗に頭を悩ませて、心を痛めていた。そして、冒険者ギルドが作った裏金の届け先がこの王弟パウロである。 ギルド長のゲイルから見れば、真に斬るべき相手は王弟パウロのはずである。なのに、ゲイルは彼の守護者として現れた。つ
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第28話:聖女ヴィオレッタの視点その1

▼聖女ヴィオレッタ・フリューリンク 私の人生は狂ってしまった。私は聖女。そのはずだった。邪龍の生贄に選ばれるまでは。 だが、それに抗えと女神アテナが言ってくれた。女神は仲間を紹介してくれた。毅然とした聖騎士シャイン・ゾンマー。知らぬひとがいないと言っていい大魔導士ミカ・ヘルブスト。 彼女たちの存在は頼もしかった。彼女たちがいれば邪龍に打ち勝てると信じられた。 だが、女神は言った。このメンバーでも邪龍には勝てないと。まるで信じられなかった。 邪龍が遣わしたグリーンドラゴンを自分たち3人で倒したのだ。それでも邪龍に届かないときっぱり言われてしまう。 そして、女神は自分たちの意見を無視して、勇者召喚の儀式を執り行った。不満が口から飛び出しそうだった。 自分たちは3人で完成されている。ここにお邪魔虫などいらない。異世界から勇者が召喚されたとしても、いちゃもんをつけてパーティから追い出してやろうと3人で打ち合わせしておいた。 勇者追放の話をすると聖騎士シャインは乗り気だった。さすが一番気が合う仲間だ。次に大魔導士ミカの方を見た。ミカは勇者を見てから判断すると言ってきた。 ミカは公平を装っているが、要は女神が怖いのだろう。女神は私たちを助けてくれると言ってくれているが、本心はいまいち掴めないとミカ本人が言っていた。 私たちと邪龍をぶつけることで女神は利を得ようとしている節があるとミカは推理している。そのため、勇者追放もうまく運ぶとは思えないと助言してくれた。 それでも勇者追放を実行してやった。 召喚された勇者は下半身スッポンポンだった。思わず二度見してしまうくらいに衝撃を受けてしまう。「あの……女神様。この人が勇者様なのですか?」 自分でも驚くほどに冷たい声で言ってしまった。だが、それほどまでにマヌケ面を晒している勇者が許せなかった。 怒りがふつふつと沸いてくる。こんな虫けらが自分たちのパーティに混ざってくると思うと怖気が走る。 どうにかして怒りを抑えて、女神の説明を聞く。「勇者アルト・キサラギが聖女の旅
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第29話:聖女にザマァ①

▼アルト・キサラギ 冒険者ギルドのオーナーになってから早1カ月が過ぎようとしていた。この1カ月、大変すぎた。 冒険者ギルドの腐敗は根深く、職員の半数を解雇するに至った。証拠を突き付けてもしらばくれる奴ならまだマシな方で、ひどい奴になるとあいつがやっているから俺もやらなきゃ損だというわけのわからない暴論を振りまきやがった。 斬首にしてやろうかと思ったが、いくら冒険者ギルドのオーナーと言えども、そこまでの権限はない。 代わりにお尻叩き100回の刑と退職勧告で済ませることになった。 がんばったおかげで、ずいぶんと風通しの良い組織に生まれ変わった。共同オーナーの王弟パウロはそこまでする必要があったのか? と問うてきたが、こちらは真っ当な仕事がしたいのである。 従業員の誰しもが気持ちよく働ける職場。それがリリーにとっての幸せだと思っている。「おはようございますぅ。アルトさん♪」 「おはよう、リリー。今日は一段とご機嫌だね?」 「はいっ! これも全部、アルトさんのおかげなのですぅ」 「リリーの笑顔が俺にとっての一番のご褒美だよ」 「えへへっ。では、私は受付嬢のお仕事があるのでっ」 ギルド会館の中でばったりとリリーに出くわした。お互い、おはようの挨拶をして、その場から立ち去る。 惜しむ気持ちはあったが、リリーと職場恋愛していることを誰かに教えるわけにはいかない。公私混同しないようにと自分の気持ちを抑えておく。 リリーと別れた後、自分はギルド長室へと向かう。そこにいるはずのゲイルに用があったからだ。 ギルド長室の前まで来て、足を止める。こほんと咳払いをした後、ドアをノックする。「どうぞ」と部屋の中から声がした。 それに合わせて、ドアノブを回してドアを開ける。こちらに気付いたゲイルが椅子から急いで立ち上がろうとした。軽く手を振ることで彼のその動作を止める。中腰になっているゲイルが恐る恐る椅子に尻を戻した。「こちらに訪問せずにそちらに呼んでくださればいいものを」 「オーナー室だと他の仕事が入ってきて、ゆっくりできないからね」
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第30話:聖女にザマァ②

 ゲイルに邪龍調査依頼を出した後、ギルド長室から退出する。オーナー室に戻って、ゆっくりお茶を飲んでいた。 すると突然、ドアが開かれた。部屋の入口に真っ青な顔になっているリリーが立っていた。今にも泣き出しそうな表情だ。すぐさま椅子から立ち上がり、リリーを抱きしめる。「うぅ……とんでもないお客様がきたのですぅ」 「よし、俺がそいつらを懲らしめてきてやろう」 「やめておいたほうがいいのですぅ! 相手は聖女様なのですぅ!」 「ん? 聖女? どこの聖女のことを指しているんだ?」 「女神アテナ様が邪龍討伐に指名した聖女ヴィオレッタ・フリューリンク様なのですぅ」 「ほほう? 俺の可愛いリリーをイジメたのはあいつらかぁ!」 怒りが身体の奥底からあふれ出す。聖女たちを今すぐにでも裸にひん剥きたくなってしまう。自分だけならまだしも、リリーを泣かせたことが許せない。 だが、怒りに飲み込まれたまま、対処してはいけない。今から行うのは裁きなのだ。冷静さこそが人々の共感を生む。 桶に水差しで水を入れて、それでジャブジャブと顔を洗う。タオルでしっかりと顔を拭う。気分が落ち着いた。リリーににっこりとほほ笑む。リリーもホッと安堵の息をついていた。 現状確認を行う。リリーが言うには聖女たちは「お前ら下っ端じゃ話にならないから、責任者を出してこい」と一方的にこちらを叱責してきたのだという。 責任者となれば、ギルド長のゲイルが適任だ。リリーはまずはゲイルに相談に行ったそうだ。そして、ゲイルが聖女たちとやりとりをしていると、一触即発の雰囲気になってしまったという。 皺が寄ってきた眉間に指を添える。質実剛直のゲイルでも腹立たしい態度を取られたようだ。 それで人選を間違えたと察したリリーがオーナーである自分のところへとすっ飛んできたということだった。 リリーの頭をよしよしとしっかりと撫でておく。「リリーは悪くない。そして、ゲイルも悪くない。悪いのは無理難題を突き付けてきた聖女たちのほうだ」 「追い返してもいいかと思ったんですが、あらぬことを街で吹聴されても困るので」
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