All Chapters of ハズレ職業『エスパー』によって追放された俺、魔王すら超える力を手に入れる: Chapter 31 - Chapter 40

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第31話:聖女にザマァ③

 静かに鼻で笑ってやった。「では、こちらから条件を提示しましょうか」 聖女たちの顔色が変わった。あちらも都合の良いことを言っている自覚があるようだ。わなわなと身体を震わせている。 彼女たちを見ていると嗜虐心が刺激されてしまう。勃起してしまいそうなところをなんとか律する。リリーが近くにいるのだ。恋人以外の女性に勃起するのは倫理観に欠けてしまう行為である。 すぅと息を吸い、ふぅと息を吐く。自分を追放した聖女たちに鉄槌を下す時がやってきた。昂りすぎないようにしなければならない。驕りは禁物だ。手痛いカウンターを喰らう場合があるからだ。「聖女ヴィオレッタ・フリューリンク」 「な、なによ」 「裸踊りを披露してもらおうか」 「ちょっと!? 何を言っているの!?」 「100万ゴリアテをたったそれだけで貸してやるといっているんだ。安い条件だろ?」 「異議あり! なんで私が脱がなきゃならないのっ!」 当然のように聖女が拒否してきた。ククッ! と声がうわずってしまう。こっちもお前の裸踊りに興味なんてこれっぽっちもない。ただ、恥をかかせてやりたいだけの嫌がらせである。「ではこうしよう。お前が出来ないというのであれば、聖騎士様に裸踊りしてもらおう」 「シャインになにさせようとしてんの! それも許さないわよっ!」 「では……二人揃って裸踊りなら倍の200万ゴリアテを融資してやろう」 「200万!? 倍も出してくれるっていうの!?」 「ああ、無利子無担保、さらに言えば返済期限も無しだっ」 「そんな……返済期限すらないなんて」 さすがは200万ゴリアテの破壊力だった。聖女はどうしたものかと戸惑っている。こちらはさらにククッ! とあくどく笑みを零してみせた。 聖女がどんどん赤面していく。さらには俯いていた。しかし、聖女は立派だった。伏せていた顔をこちらに向けてきて、キッと唇を噛みしめていた。「わかった。裸踊りでいいのね?」 「ほほう? してくれるというのか?」 「その前に200万ゴリアテを出せる証拠を出
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第32話:聖女にザマァ④

 聖女ヴィオレッタを十分に追い詰めた。彼女の一番の相棒である聖騎士シャインも繩で縛り上げた。聖女パーティでフリーなのは大魔導士ミカ・ヘルブストであった。 大魔導士ミカは未だに動きを見せない。藪をつついて蛇が出る恐れもある。ミカからはわざとらしく視線を外しておく。 しかし、めざといミカはこちらが行動を取った隙を見逃さず、前に進みでてきやがった。ぬるっとこちらの懐に入ってくる。嫌な感覚に包まれてしまう。「何かな? 大魔導士様」 牽制するように言葉で大魔導士の動きを静止させようとした。それでも彼女は進み出てくる。そして、懐から白い紙と筆を取り出し、紙に何かをつらつらと書き連ねてきた。 大魔導士ミカは書き終わると、その紙をこちらに渡してきた。受け取るしかなかった。それほどの圧を彼女が発していたからだ。 額から汗が流れ出てくる。とんでもないことを書かれている気がする。恐る恐る紙に書かれていることを確認した。「ひとつ。あちきたちは女神より神託を受けていますのじゃ。そのあちきたちに危害を加えるということは女神の名誉を傷つけることになる」 「ほほう? 女神をここで出してくるかっ」 「さらにひとつ。邪龍を倒すことはこの世界を救うことになりますのじゃ。その事業に冒険者ギルドが関われることは大いなる名誉ではござらぬか?」 「ふむ。筋は通っている」 「最後にひとつ。金でひとの尊厳を踏みにじるのは大悪党のやることでございます。アルト殿は大悪党と罵られることに抵抗はないと?」 ごくりと息を飲む。さすがは聖女パーティの軍師のミカ・ヘルブストだ。痛いところをついてきやがった。 女神の名前を挙げてこられたのは不味い。女神からは「お灸を据える程度にね?」と言われている。 裸踊りの強制は女神にとってセーフかアウトかの確認をそもそも行っていない。なので、最終的には裸踊り以外で決着をつけることになるだろう。 だが、現時点で提示している条件は裸踊りのみである。女神がやってきたら、ピンチに陥るのはこちら側となる。 次に邪龍を倒すことは聖女たちだけでなく、多くのひとに恵みがある行
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第33話:聖女にザマァ⑤

 女の敵は女とはよく言ったものだ。聖女パーティの醜態ぶりは見ていられない。最初は3回勝負のじゃんけんだと言っていたのに、そこにルールを捻じ曲げて、あっちむいてほいが追加された。 旗色が悪かった大魔導士ミカが提案したものだった。そして、さすがは軍師なだけはあり、そこから大逆転を決めて、一抜けを決めてしまう。 残されたのは聖女ヴィオレッタと聖騎士シャインである。聖騎士シャインは力技をねじ込んできた。「じゃんけんぽい! あっち向いて( ‘д‘⊂彡☆))Д´) パーン!」 その掛け声と同時に聖騎士が聖女にビンタしやがった。ビンタされた側の聖女の顔が横を向くのは当然だ。 聖騎士のこの行動はさすがに審議入りとなる。聖騎士の勝ちは取り消された。二度目はないと忠告もする。「じゃんけんぽい! あっち向いてアッパーカット!」 聖女の聖なる拳が唸る。聖騎士の顎にヒットし、聖騎士の顔が上へと勝ちあげられた。「……ひとってここまでするものなのですぅ?」 「……ひどいな」 「やったーーー! 私の勝ちだわっ! 裸踊りはシャインに決まりよっ! おーほほっ」 勝ち誇っている聖女様には悪いが反則だ。二度目は無いと忠告していたというのに聖女は自分がルールかのように振舞った。「なんで!? 私はまだ一度目ですわよ!?」 「ダメです。二人揃って、もう一度は無しです。当たり前でしょ?」 「そんな……私の反則負けってことになりますの!?」 「察しがよくて助かります」 「いやーーーーーーーー!」 聖女の悲鳴がギルドホール全体に響き渡る。鼓膜が破れそうになった。いったい、悲鳴にどんな力を込めてやがるのかと辟易してしまう。 とりあえず、じゃんけん勝負の結果が発表された。聖女ヴィオレッタが反則負けで最下位となる。 大魔導士ミカと聖騎士シャインは胸を張って踏ん反り返っていた。さぞかし気持ち良かったのだろう。 対する聖女ヴィオレッタは奥歯をカチカチ慣らして、頭を手で押さえ、その場でへたり込んでいた。「嘘よ……私は女神様に選
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第34話:一難去ってまた一難①

§ 聖女パーティと和解してから、1週間が過ぎようとしていた。資金難から回復した聖女たちは意気揚々と邪龍退治のための準備を進めてくれている。 冒険者ギルドのオーナーとなっている自分は邪龍の生態調査を冒険者にクエストとして発布した。 全てが正しく回ろうとしていた。そんな矢先に聖女パーティがトラブルを抱えて、こちらに泣きついてきやがった。「……えっと、今度はどんな事件ですかね?」 「そんな冷たい目しなくていいじゃない! 今回は私が発端じゃなくてよ!?」 一応、トラブルメーカーという自覚はありそうだ。裸踊りの罰を与えそうになったが辞めておく。事情をまずは聞くべきだと感じたからだ。 みんなでギルド長室へと集まる。リリーがお茶を出してくれた。右手に聖女ヴィオレッタ、正面に大魔導士ミカ、左手にギルド長のゲイルが座る。四角いテーブルを挟んで、各々が情報交換を始めるのであった。「でね? 最初に言っておくけど、今回、私が悪いわけじゃないんだからねっ!」 「はいはい、わかりました。本題に移ってください」 「んもう。信じてないのね。私って本当に不幸」 「ですから、本題どうぞ」 「あーあー。これが白馬の王子様だったら、私のことをかばってくれるっていうのに」 「……裸踊りの刑」 「ひいいい! 話します、話しますから!」 前置きが長すぎて困ってしまう。給仕係となっているリリーが「あはは……」と苦笑いしている。彼女が置いてくれたお茶に手を付ける。ずずず……とお茶を飲んでいると聖女ヴィオレッタがとんでもないことを言いだした。 思わず、お茶を噴き出してしまうことになった。噴き出したお茶は正面の大魔導士ミカの方へ飛んでいく。だが、彼女は素早く魔法陣を展開し、マジックバリアを展開し、お茶を防いでしまう。「ばっちいわね!」 「うるせえ! ヴィオさんがとんでもないことを言ったからだろ!」 「そうよ! まさか王子様から求婚されるなんて思わなかったわよ!」 基本的に聖女は忙しい。邪龍討伐の準備のために各方面から支援をもらってこなければならない。あ
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第35話:一難去ってまた一難②

 ゲイルが魅力的な話をしているが、却下しておく。現国王がどうであれ、自分には関係ないと思いたい。 第一優先は囚われの身となっている聖騎士シャインを助け出すこと。国王の件は二の次だ。ここで軍師役の大魔導士ミカに意見を聞く。 ミカはくせ毛をいじりながら、さも面倒くさそうにこちらと受け答えしていた。ムムム……と唸るしかなかった。「そんなに俺が国王排除を却下したのが気に入らねえのか!」 「あちきはまず最善策を示しましたのじゃ。それを却下しておいて、一粒で二度美味しい策を出せと言われましても?」 「でも、大魔導士と呼ばれるほどのミカなら、策は出せるんだよね?」 「はい、出せます。出したくないだけなので」 「グヌヌ……見返りに欲しいものなんだ?」 「ブランド物のバッグですなぁ」 「もってけ泥棒!」 大魔導士ミカのやる気を削いだのは他でもない自分だった。本来なら、カノジョ以外の女性にプレゼントを贈りたくない。だが、背に腹は替えられない。 さすが大魔導士。ポンコツで粗忽な聖女とは違う。しっかりと念書を書かされた。念書を懐にしまった大魔導士ミカは「こほん……」と小さく咳払いをする。「では策を示そうぞ。国王様は末っ子の第3王子に激アマじゃ。だから、それでいいのかと叱り飛ばす」 「それ、俺たちが斬首されませんかね」 「凡といっても愚ではない。丁寧に言葉を重ねれば、きっと聞き入れてくれるであろう。ただし、この策にはひとつ欠陥がある」 「どんな欠陥が?」 「第3王子は愚だということじゃ」 「なるほど? 国王様はまだまともだけど、第3王子が暴れたら、策が通じないってことね」 「さすがアルト殿。理解が早くて助かる」 「じゃあ、その策、却下で」 「なんじゃとーーー!?」 大魔導士が狼狽していた。こちらとしてはもっと良い策をひねりだしてほしい。ブランド物のバッグに見合うだけの策が欲しいのだ。 今度は大魔導士ミカのほうが「グヌヌ……」と唸り始めた。親指の爪を噛みつつ、なんとか策をひねり出そうとしていることが伺い知れた。
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第36話:一難去ってまた一難③

 聖騎士シャインを取り戻すための策は決まった。ならば、次にするべきことは王都に行くことである。 王都は今滞在している街から西に馬車で三日ほど行ったところにある。善は急げとばかりに皆が動き出す。 駅馬車に向かい、そこで王都行きの乗合馬車に乗り込んだ。荷台に8人が乗り込めるほどのビッグサイズである。「8人乗りの乗合馬車を貸し切りって、ほんとアルトはお金持ちね」 聖女から軽く嫌味を言われた。しかしながら、気にもしない体で言い返す。「そりゃ腐っても冒険者ギルドのオーナーだからね」 「そんなにお金が余ってるなら、私に無条件でお金を貸してくれればよかったのに」 「そりゃ御免被る。俺は聖女様に追放されたことを未だに恨んでいるからね」 「器の小さい男で困るわ」 嫌味には嫌味で返す。醜い争いが馬車の上で展開されていた。隣に座るギルド長のゲイルがヤレヤレ……と肩をすくめていた。 ゲイルの気持ちはわからないでもない。聖騎士シャインを助けにいく仲間だというのに仲違いしてどうすると言いたげな仕草を取っている。 ゲイルはさすが大人であった。水筒を取り出し、キャップを外す。そのキャップを湯呑みにして、中身を注ぐ。それを聖女の方へと手渡すのであった。「あーーー。うちのオーナーがお子ちゃまで済まない。仲直りの印として、この杯を受け取ってくれないかな」 「くんくん。なんかアルコールっぽい匂い」 「身体を温める用に常備している酒だ」 「もらってもいいの?」 「もちろん」 今の季節は陽気な春だ。だとしても、吹く風はどこか肌寒さを感じる。そこで酒を取り出したゲイルであった。聖女は聖女らしい微笑みを顔に浮かべつつ、コクコクと湯呑み代わりのキャップに注がれた液体を飲み干すのであった。 ほんのりと聖女の頬が赤くなっている。どきりと鼓動が跳ね上がる。いかんいかんと思いながら、頭を軽く振る。(ったく、さすが聖女様だ。いちいち画になりやがる。うっかりしてると、惚れそうになっちまう。リリーに申し訳が立たなくなるわ) お酒が入って上機嫌になった
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第37話:一難去ってまた一難④

国王側にこちらの動きは筒抜けのようであった。やれやれ……と肩をすくめるしかない。冒険者ギルドの内部をキレイに掃除したつもりであった、しかし急激な改革は反対者を生む。これは身から出た錆でもあった。裏切者を炙り出すのは後にして、まずはじっくりと捕らえた盗賊から情報を引き出した。盗賊たちは協力的で、聞いてないこともべらべらと喋ってくれる。なんとも可愛げのある連中だ。「じゃあ、縛ってその辺に転がしておけ」 「こんなところに放置されたら熊に襲われちまうよー!」 「じゃあ、やっぱり撫で斬りにしてやろうか?」 「ひぃーーー! 繩だけでお願いしまーす!」繩でがんじがらめにした盗賊たちをその場に残して、自分たちは馬車に乗り込む。リリーが何か言わんとしていたが、こちらは先んじて、リリーのご機嫌を取る行動に出た。「別に殺すつもりでやってるわけじゃないから」 「むぅ……襲ってきたあちらが悪いのわかるんですけどぉ」 「リリーは優しいなあ。でも、その優しさを俺以外に向けると、俺が焼きもちを焼いちゃいそうになる」 「んもう。アルトさんったら」リリーが頬を赤らめて、俯いてしまう。周りはニヤニヤとしぱなしであった。リリーのご機嫌も取れたということで、馬車が出発する。向かうは王都だ。あと3時間程度で着く予定である。その3時間を使って、こちらも王都に乗り込んだ際にどう動くかを話し合う。先に口を開いたのは大魔導士ミカだった。彼女は軍師らしく、自分たちがどう動くべきなのかを示してくれた。「王都内ではなるべく固まって動きますように。こちらが人質作戦を取ることもバレていると考えた方がいいかと」 「俺たち5人でしか、話してない内容だぜ!? それはおかしくない?」 「壁に耳あり、ジョージにメアリーという言葉があります。ギルド長室といえども安全とは限らないかと」 「なるほどなぁ~。俺、もしかして冒険者ギルドの職員に甘く見られてるぅ?」 「甘くは見られていないじゃろうて。むしろ毛嫌いされているかもしれぬのう」 「そっちのほうが悲しくなっちゃう。俺、キレイな冒険者ギ
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第38話:一難去ってまた一難⑤

 盗賊に襲撃されてから三時間後、王都の入り口の門が夕日に照らされて見えてきた。自分たちはようやく王都の門の前に立つことになる。 一気に王城まで行きたいところだったが、夕暮れに差し掛かっている。「どうする?」 大魔導士ミカの方に顔を向けて、そう聞いてみた。大魔導士はコクリと頷き、こちらに返答してくる。「今から王都で宿屋を探すくらいなら、王城で寝泊まりさせてもらいましょうぞ」 「あくまでもイケイケでいいわけだな? 後悔はないんだな?」 「時間をかければかけるほど、聖騎士シャインの立場が危うくなりますゆえ」 「わかった。皆、このまま王城へかちこみだ!」 大魔導士の指示に従い、王都内を馬車で突っ切る。さすがは王都だ。どこに行っても、人だらけである。人の波が途切れることが無い。 リリーがこちらの腕に手を回してきた。彼女は心細さを感じているのかもしれない。回された手にこちらも手を添える。「リリーは必ず俺が守るから」 「はいっ。期待しているのですぅ」 「あらあら、お熱いこと! アルト、私たちも守ってね!」 「ヴィオさん? からかうところじゃないと思いますよ」 「超真面目に言ってるんだけどにゃぁ?」 ぷいっと聖女ヴィオレッタから視線を外す。そうした瞬間、嫌な予感がした。自分が動く前にギルド長のゲイルが動いた。彼は腰に佩いた剣を素早く抜刀する。 カキーンカキーンという甲高い音が聞こえた。さすがのゲイルである。四方八方から飛んできた矢を剣で叩き落してくれた。馬車の幌がゲイルの剣裁きによって四散する。「サンキュ。ゲイル」 「アルト殿も気づいておられたご様子。お節介でしたかな?」 「いいや。何かが来るとは感じたけど、迎撃体勢にまでは移れなかった。さすがはゲイルだよ」 「ふっ。これはご謙遜を」 ゲイルはこちらの実力を過大評価しすぎている。今の襲撃に対応できたのはゲイルがいてくれたおかげである。これは嘘偽りのない自分の評価だった。 だが、ゲイルはこちらと視線を合わす前に次の行動へと出た。馬車の荷台の後
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第39話:王城襲撃①

 自分たちは襲撃に会いながらも、どうにか城門にまでやってくる。城門を守る衛兵がこちらに槍の穂先を向けてきた。「何の用でこの城にやってきた」 どこまでも冷たい声だった。こちらを邪魔者としか感じていない。そんな雰囲気を発していやがった。 ムカッとしたのでその怒りをそのまま声に乗せそうになった。だが、口から言葉が飛び出す前にリリーがこちらの手を引っ張ってきた。「ダメですぅ。喧嘩を売りにきましたけど、買いにきたわけじゃないのですぅ」 「ハハッ。リリーは上手いことを言いやがる。そうだった。俺たちはカチコミにやってきたんだったな」 さすがはリリーである。こちらの手綱をしっかりと握ってくれている。心が軽くなった。衛兵とのやり取りをトラブルメーカーの聖女ヴィオレッタに任せることにした。「この城のどこかに私の従者が囚われているってのは知っているの。白状しなさいっ」 「おいっ。何をおかしなことを言ってやがる。そもそも、お前は誰なんだ」 「私? 私は聖女ヴィオレッタ様よっ!」 「そんな……バカな!?」 衛兵がおおいに戸惑っている。彼はただの衛兵だ。情報を処理しきれなくなっていた。こちらはニヤニヤと悪い顔になっていた。 衛兵の事情など、お構いなしにずけずけと用件を伝えてこいと命じる聖女であった。衛兵は「グヌヌ……」と唸っている。 衛兵は門を守る仕事を忠実にこなすか、それとも伝令役になるかの二択を迫られていた。しばらく聖女とやりとりをしていたかと思えば、急にあちらが折れることになった。「わかったわかった。上に伝えてくる。だが……その結果がどうなろうが俺の知ったことじゃない」 「気にしなくてもいいわ。モブはさっさと引っ込んでね。話が進まないもの」 「ぐぬー――! 言わせておけばっ!」 さすがはトラブルメーカーの聖女である。ついに堪忍袋の緒が切れたのか、衛兵は聖女に向かって槍の穂先を突き付けてきた。 だが、その槍の中ほどを手で掴んで止めた男が出てきた。その男はもちろん、頼もしい我らがゲイルである。「淑女に失礼だぞ。
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第40話:王城襲撃②

 だが、本当の地獄はここからだった。牢屋を抜けだしたはいいが、城のそこら中に警備兵が巡回していた。 彼らに見つかれば、また牢屋に戻される。ここで光ったのが自分の透視能力だった。城のどこに警備兵がいるのか壁越しでわかる。 皆の先頭を自分が率先して歩く。網目のように張りめぐらされた警戒網をゆっくりと進んでいく。 皆が緊張感に包まれていた。そして、緊張感がMaxに届いた時、事件が起きた。誰かがプゥ~~~とオナラをしたのである。「なんだ今の音!?」 警備兵たちが一斉にこちらへと振り向いてきた。急いでリリーを抱き寄せる。次の瞬間には透明化を行い、自分とリリーの姿を相手から見えなくさせた。「おっとぉ? お客さんたち。どこへ行く気かな?」 警備兵たちから見えるのはゲイルとヴィオレッタ、そしてミカの3人だ。自分とリリーは透明化で姿を消している。 こちらの3人に向かって、警備兵がゆっくりと近づいてくる。自分はリリーの口に手を当てて、声を出させないようにした。 そのままの体勢でゆっくりと、警備兵の後ろへ回る。素早く彼の右腕を絞り上げ、その手から武器を取り上げた。「なんだ!?」 警備兵が素っ頓狂な声をあげた。手に持っていた武器をリリーに投げ渡す。その後、警備兵の足をひっかけて、彼を転ばせた。 それを合図にゲイルが警備兵の頭頂部にチョップを喰らわせた。警備兵は「ぐぇええ」とカエルのような声をあげて、失神してしまう。 警備兵の残りは二人だ。こちらの動きが流れるように鮮やかだったためか、呆けた顔をしていやがった。 その隙を見逃さない。急いで時間停止を行い、警備兵から武器を取り上げる。それをまたしてもリリーに投げ渡しておく。「これはみね打ちよ」「ひでぶっ!」「あべしっ!」 聖女ヴィオレッタと大魔導士ミカが素早く動き、警備兵たちの股間を目掛けて膝を入れている。倒れた警備兵たちが口から泡を吹いていた。ゾゾ……と背筋に冷たい汗が流れ落ちてくる。「お前ら、どこがみね打ちなんだよっ
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