芹奈の話を聞いて、周囲の視線が澪と紗耶の間を行ったり来たりした。征司の恋人という立場を抜きにすれば、紗耶より澪のほうが目を引く。それに皆が初めて気づいたようだった。紗耶は唇をきゅっと結び、苛立たしげに澪を一瞥した。澪は、女同士で張り合うことに夢中になったわけ?こっちは見た目のことで彼女と張り合うつもりなんてない。紗耶をかばおうとした人は言葉に詰まったが、それでも不満そうな声が上がった。「それでも、澪さん、紗耶さんにきちんと説明しないといけないでしょう」澪はようやく分かった。彼らにとって、征司は紗耶の「もの」で、自分は紗耶の恋人に手を出した女として見られている。紗耶が大目に見てくれなければ、征司に関わることさえ許されない――皆はそう思っているのだろう。周りの人たちが紗耶をかばって澪を責めているのに、紗耶は止めるどころか、黙ってそれを受け入れている。澪は鼻で笑い、紗耶をまっすぐ見据えた。「いいですよ。全部はっきり話しても、本当に構いませんよね?」紗耶が、その言葉に含まれた意味を分からないはずがない。ここには大勢の人がいて、しかも撮影はリアルタイムで進んでいる。もし澪が後先を考えず、本当のことを口にしてしまったら……紗耶は表情を引き締めると、気にしていないふうに皆に向き直った。「皆さん、お気持ちは分かってます。でも、今は研究を最優先にしないと。気にしないで、まずは作業を進めましょう」澪は、彼女のその器の大きさを褒め称えたいくらいだ。少なくとも、外向きの印象だけなら非の打ちどころがない。彼女がその場を離れようとしたとき、隣にいる征司がずっと動かずにいることに気づいた。征司は黙ったまま、澪を見下ろしている。その目にどんな感情が宿っているのか、澪には分からない。澪は眉をひそめ、顔を上げて彼を見返した。「私、余計なことを言うのが心配?」征司の深い瞳が、わずかに揺れた。「それはお前の自由だ。ただ、言ったあとに何が起きるかくらいは、よく考えてから決めればいい」澪は黙り込んだ。嫌味を言い返すつもりだったのに、征司の言葉はもっともで、反論のしようがない。森宮家には、結婚していることを世間に明かさないと約束している。森宮家の名を汚すようなこともできない以上、紗耶が征司の不倫相手だというこ
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