あの後、俺はできうる限りのサトラレ征伐を敢行してみるも、たった一日でどうにかなるわけもなく、いたずらに時間だけがすぎていった。 結局の所、七岸さんのサトラレはそのままだ。いや、かなり薄くなってはいるものの、それだけ。治るには至らない。 「やはり、一日では治しきれなかったか……」 俺は自室にこもり、机に突っ伏しながら嘆く事しか出来ない。 「あと少し、本当にあと少しだったのに……無念だ」 もうじき夜が明ける。全てを終わらせる破滅の朝だ。 「七岸さん……」 顔を上げると、窓の外には鉛色で覆われた灰色の空が漂っていて、カタカタと強い風が寂しげな音を立てていた。 そんな寂寥とした世界の中、俺は悲鳴のように独りごちる。 「とはいえ、両親と暮らせるならそれに超したことはない。それ自体はめでたいんだ。祝福してあげないと」 笑いたい。笑顔で彼女の自由を出迎えたい。でも、出来ない。 「でも! まだサトラレは治っていない! もう少しなのに!」 俺は努力で出来ないことなどないと信じていた。 でも、違った。この世には不可能はどうしてもあって、いくら頑張っても無理なものは無理なのだと痛感させられる。 「逆境だ……この逆境が俺を燃え上がらせる……しかし、今回ばかりは」 俺は頭をかかえ、涙を落とす。 ぽたりと、小さな雫が机にしみこんでいく。 「この事情では、いかにミスター完璧超人をめざす俺でも止めようがないじゃないか!」 もはやどうにもならない。 全ては終わってしまったのだ。 結局出来たのは泣くことだけ。灰色の空の下、俺は彼女の帰省を見送ることになった。 「誠二様」 トランク一つに着物姿の七岸さん。頭につけた赤いリボンがなんとも可愛らしい雰囲気を醸し出している。 三つ編みに結った長髪、きりりとした顔立ち。できればもっと見ていたかった。ずっとずっと見ていたかった。 でも、それはもう叶わない。 「あ、七岸さん……行くんだ」
Read more