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第20話「命を削る願い、応じたのは“元魔王”」

 魔法陣が蒼黒く脈打つ。光が走り、雷がバチバチと弾け飛ぶ。 疲労感に耐えきれず、俺はその場にへたり込むように身体をついた。「|主《マスター》!? 大丈夫ですか!」 すかさず駆け寄ったレイラが、俺の身体を抱きかかえる。彼女の眉が、不安そうに寄せられる。「……ああ、大丈夫。少し……疲れただけだ」 息を荒げながらも、俺は魔法陣から目を離さない。 魔力が流れ出ていく感覚。ごそっと、魂ごと削られたような虚脱感。それでも俺は、期待せずにはいられなかった。 その“願い”に応えるように、魔法陣の中心から一筋の光が溢れ、小柄な人影が姿を現す。 白銀の長い髪。猫のように釣り上がった目。華奢な体格とは裏腹に、周囲の空気を支配するような威圧感。 現れたのは、腰から黒い翼を生やした一人の少女だった。 その姿にレイラは目を丸め、俺は安堵した。「……ははっ、マジで上手くいきやがった」 ぐったりとしたまま、笑みがこぼれる。 少女は無言で辺りを一瞥し、視線をヴァルトへ戻す。黄色の静かな瞳が、鋭く射抜く。「お前が私を呼んだのか。いや――今は、“主”と呼ぶべきか? 魔王ヴァルト・ノクス」 低くも凛とした、冷たい声だった。「好きに呼んでくれ。今はお前の力が借りたいんだ」 俺は言葉を続ける。「魔王――リルベア・ベルベッティ」 口にしたその名は、かつて討伐された魔王の一柱。 本来、いくつか格が上がってからでなければ不可能な眷属の“指定召喚”。 しかも相手は――”魔王”。  俺は、この危機に一か八かでそれを強行したのだった。「ふむ。なら、ヴァルトと呼ぼう。わらわのことは、“リア”と呼ぶといい」 淡々とした調子で名乗る少女。だが、その声には力があった。 俺は小さく頷いた。もうそれ以上、動く余力も残っていなかった。「にしても、ヴ
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第21話「帰還する“魔王”、世界に激震が走る」

完成した魔法陣が、まばゆい輝きを放つ。 その中心から、まるで女神のような姿が、静かに浮かび上がった。 「……いきますっ!」 ヒーラーの少女が叫んだ瞬間、その“女神”は光となってタンクの男の剣へと吸い込まれるように消えた。 剣が振動し、光を纏い、やがて形を変える。 黒鉄の刀身は金色へと染まり、刃先には神性を宿したような輝きがあった。 「きたきた……! 一気に決めるぜ!」 剣を肩に担ぎ、タンクの男が不敵に笑う。 精霊剣――魔のものに対して特攻を持つ、聖属性の付与型武装か。 ……魔族との戦闘では、ほぼ確実に使われる“切り札”。 ゼトスはそれを見て、咄嗟に判断を下す。 今、あれを食らうのは――まずい。 「なら、それを食らう前に蹴散らしてくれるッ!!」 ゼトスが咆哮し、四肢を地面に叩きつけて加速する。 凍りつくような空気が舞い、獣の巨体が一直線にタンクの男へと迫る。 その口は大きく開かれ、狙いは首筋だ。嚙み砕くつもりだった。 対するタンクの男も、金色の大剣を構えて一歩も引かない。 「来いよ、狼野郎……!」 空気が張り詰めた、その刹那―― ――空間が、重く沈んだ。 まるで大気そのものが潰されたかのような重圧が、階層全体を支配する。 「っ――!」 誰もが動きを止めた、その瞬間。 ズガッ!! 衝撃音と共に、ゼトスの頭部が、地面へと叩きつけられた。 何が起きたか理解する前に、タンクの剣も“片手で”止められていた。
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第22話「戦いの終わり、そして“魔王”の覚悟」

 ――戦いは、終わった。 リルベアが、ゼトスの上に置いていた足を静かにどける。そして、少しだけ身を屈めて声をかけた。「おぬし……ヴァルトの眷属だな? 死んでおらぬか?」 ぐったりと倒れていたゼトスが、ゆっくりと身体を起こす。その動きにはまだ重みが残っていたが、意識はしっかりしているようだ。「……はっ、助けて頂きありがとうございます。お会い出来て光栄です、”リルベア様”」 そう言って、ゼトスは深々と頭を下げた。 リルベアが目を見開いて、ふふっと笑みをこぼす。「ほう、わらわの名を知っておるか。やはり、主が優秀だと眷属もそれに|倣う《ならう》ものじゃな。かかっ」 |朗らか《ほがらか》に笑うその様子に、戦場の張りつめた空気はすっと和らいでいく。「では、主のもとへと戻るとしようか。……心配しておろう」 そう言ってリルベアが転移魔法陣を展開すると、ゼトスも頷きながらその中央へと歩み出た。 光が一閃し、二人の姿がコアルームへと転移する――。 そして、次の瞬間。「ゼトスっ!」 思わず、声が出る。転移陣から姿を現したゼトスの姿を見て、心臓が跳ね上がった。 本当に、戻ってきた。「よかった……本当に、よかった……」 感情が喉を詰まらせて、声が少し掠れていた。 俺の顔を見るや否や、ゼトスは申し訳なさそうに耳を伏せた。「心配おかけして、申し訳ありません……」 ぺたんとその場に座り込み、頭を下げる姿は、まるで叱られた子犬そのものだった。 そこへ、レイラが少しだけ歩み寄って言葉をかける。「|主《マスター》を思っての行動というのは、私もよく理解できます。ですが、|主《マスター》の指示を無視するのは眷属としては――あるまじき行為ですよ。今後は気をつけましょうね」 咎めるようでいて、どこか優しさのにじむ声だった。ゼトスは「クゥン……」と情けない
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第23話「魔王に教えられる魔王」

 ――戦いが終わってから、数日が経った。 双角の迷宮には、ようやく平穏が――訪れるわけもなく。  今日もコアルームには、耳をつんざく怒号が響き渡っていた。「だ・か・ら! なんど言わせるんじゃ! この、|虚け《うつけ》!」 低い石造りの天井に、声が反響して倍増する。鼓膜に突き刺さる怒声。  うるさいなぁ……でも、なんだか懐かしいな、この感じ。  ああ、そうだ。社畜時代、会議室の隅で上司に詰められていたあの光景。 目の前のホワイトボードに赤字でぐちゃぐちゃと書かれる数値と、威圧的な声。  説教の声量とテンポまで一致してやがる。「聞いておるのか!」「聞いてるって。そう怒鳴るなよ」「なら、なんでこうなるのじゃ!」 俺が生返事をすると、リルベアは苛立たしげに、モニターに映し出されたダンジョン構造図を、ぴしっと指で突く。 S級冒険者との戦いが終わったあと、俺は久々にダンジョンステータスを開いてみたら――。──────────────────【ダンジョンステータス】名前:双角の迷宮階層数:10配下数:3(レイラ、ゼトス、リルベア)魔物数:241罠設置数:73拡張ポイント:5240経験値:10304/32200────────────────── とんでもなくポイントが貯まっていた。 戦闘の激しさを考えれば当然かもしれないが、それでも桁がひとつ違うと笑うしかない。 それもあって、リアの指導を受けながら、ダンジョン構造を見直し、ついでに増築計画も練ることになり、今に至る――が、どうやら俺のやり方は彼女のお眼鏡にかなわなかったらしい。「ヴァルトのやり方は、回りくど過ぎる。これでは経験値が貯まり辛く、拡張ポイントの無駄遣いだと言っておろうが」 リルベアは腰に手を当て、大きくため息をついた。  その仕草すら、やっぱり社畜時
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第24話「魔王、ダンジョンの限界に挑む――“街”構築計画始動」

 リアの助言を受けて、俺はさっそくダンジョンの構造を見直すことにした。 ただし、今回は前回と違って本気だ。 ――いや、今までも本気ではあったんだけど、今回は単に迷わせるだけじゃない。 魔物の配置数を増やし、それぞれの特性が最大限に活きるような構成を目指して再設計していく。 ……のはずだったのだが。「んー……なんか違うんだよなぁ」 何が違うって、ピンとこない。 見た目も罠の配置も、確かに前よりはずっと良くなってると思う。思うんだけど……何かが足りない。モヤモヤする。 そんなときだった。 ふと気配を感じて後ろを振り返ると、徘徊から戻ったレイラが、後ろからマップをのぞき込んできた。「なんだか、階層数のわりに、どこもこじんまりとしてますね」「……え? レイラ、それってどういうことだ?」 こじんまり? 結構凝ってる方だと思うんだけどなぁ。  俺の頭の上にはハテナが浮かぶばかり。よく意味がわからない。 そんな俺の様子を見て、少し離れた場所にいたリアが、くくっと笑っているのが目に入った。 その表情を見た瞬間、俺は察する。 あ、今の笑い……絶対俺をバカにしてやがる。 むかつくが、今はあえてスルーしてやろう。心が広い魔王だからな!「今までは、ポイントが少なくて、その中でやりくりしてたので屋内空間みたいな階層でしたけど、今はポイントも多いですし……フィールドを作ってもいいのでは? と思いまして」 レイラの一言に、俺の脳がビビッと反応した。「フィールド!? なにそれ! ダンジョンって無限迷宮みたいなのだけじゃないの!? それってもしかして……ゲームでいうオープンワールド的なやつもいけるってことか!?」 想像が膨らむ膨らむ。 大草原! 遺跡! 山岳! 気候とか季節もいじれたり!? うおおお、テンション上がってきた!「レイラ、それって……階層として一つの“世界”を作ったり、できるのか
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第25話「街を作ろうとしたらポイントがめちゃめちゃ溶けた」

 というわけで――さっそく俺は、コアルームと十階層の間に、新たな階層を追加した。 ここに“街”を作る。魔王としての、新たな仮拠点だ。 イメージは、中世ヨーロッパ風の城下町。  石畳の広場に噴水、風車が回り、角張った屋根の家々が並ぶ通りには、パン屋や武器屋なんかも設置したい。 教会もいいな。尖塔が天に伸びてるようなやつ。 まぁ、まずは雰囲気づくりだろ。最初は見た目が大事だ。 で、建物の設置はっと…… ……と思ったら、いきなり資源の壁にぶち当たった。  ダンジョン本体の構築と違って、建物は全て“ポイントで購入”しなきゃならない。 買ってから作り替えて、オリジナルの建物にするようだ。 しかも、値段がエグい。「え、宿屋一軒で500ポイント!? 魔王相手にふっかけすぎじゃない!?」 思わずシステムウィンドウに声をぶつける。  いや、別に誰かが裏で操作してるわけじゃないのは分かってるけど、これはもうクレーム入れたくなるレベル。  とはいえ、グダグダ言っていても始まらない。 まずは、階層そのものを広げるところからだ。 空間拡張はポイントさえ払えば割と自由が利く。  最初は城の周囲だけだった空間を、東西南北へと伸ばし、街らしい区画を作るための土台を整えていく。 空間に広がりが出てくると、なんだかそれだけで都市っぽく見えてくるのが不思議だ。 そして次は、環境演出。 昼夜のサイクル、季節の巡り、風と雲、雨、朝靄、夜空に広がる星の瞬き―― 細かいオプションを一つひとつ選んでいく。演出といっても侮るなかれ、これが雰囲気作りにはめちゃくちゃ重要。 つーか、こういうのもいちいちポイント高いんだよな……。 一個ずつは地味な加算でも、積み重なると恐ろしく重い。 まるで魔王税でもかかってるかのようだ。いや、俺が魔王なんだけど。 それでも、少しずつ形になっていく景色を見るのは、思った以上に楽しい。
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第26話「勇者、来訪」

バシュッ! ゴォォォンッ! 訓練場に、魔法の炸裂音と風切り音が立て続けに響き渡っていた。 空間が震え、床がうっすらと焦げる匂いを帯びる。 漂う魔力は飽和寸前で、熱と冷気がぶつかり合いながら乱反射していた。 その中心で――俺とゼトスが、激しくぶつかり合っていた。 左翼から黒い稲妻を放ち、右翼には闇を凝縮した刃。 それらを一気に展開し、角度とタイミングをずらして突っ込む。 今回はいける――! そう思った次の瞬間。 「っ……ちょっ、はやっ!?」 ゼトスの巨体が、風のように動いた。 俺の魔法を正確に見極め、最小限の動きでかわしていく。 ガッ、と尻尾が床を鳴らし、次の瞬間、視界が傾いた。 「うおっ――」 バランスを崩した俺の前に、ゼトスの前脚が迫る。 しかし、その鋭い爪は寸前で止まった。 「はい、ここまでですね。主」 穏やかな声と共に、静かに距離を取るゼトス。 俺はそのまま地面にへたり込み、深く息を吐いた。 「くっそ……今回はいけると思ったんだけどなぁ……」 この特訓、すでに一週間は続いている。 最初はただの模擬戦だったが、オーガキング戦以降、俺の中で意識が変わった。 ――このままじゃダメだ。 何かが起きたとき、俺自身が戦えるようになっていなければ、ダンジョンの主なんて名ばかりだ。 そう思って、ゼトスに頭を下げて、付き合ってもらっている。 「主は確実に強くなっております! 前よりも詠唱が早くなっていますし、攻撃の組み立
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第27話「魔王の右腕、死地に立つ」

“勇者”―― その言葉に頭の中が真っ白になった。 いや、違う。真っ白になった“フリ”をして、考えることから逃げたんだ。 目の前に突きつけられた“最悪の事実”に、咄嗟に現実逃避しようとした。 だが、モニターに映るその姿は、何度まばたきをしても変わらなかった。 映っているのは、ただ一人の女性。 淡々と進み、まっすぐに階層の奥へ向かってくる。 警戒も、躊躇もない。 まるで、ここが“彼女の領分”であるかのように、当然の顔で。 ……あり得ない。 このダンジョンは、どれだけ腕の立つ冒険者でも慎重に進まなければ命を落とす。 それを、あんなにも無防備に――いや、“余裕で”進んでいるようにしか見えない。 「……こいつ、本当に“勇者”なんだな」 自分の声が、ひどく小さく、震えていたのがわかった。 リルベアは頷きもせず、ただ黙って画面を見つめている。 レイラもゼトスも、珍しく口を開かなかった。 それが何よりの“答え”だった。 やがて、勇者が階段を踏みしめる音が聞こえるような気さえして、俺はようやく口を開いた。 「……迎撃するぞ。全員で」 「了解です、主。全戦力、配置へ」 ゼトスが即座に頷いた。 だが――レイラは動かなかった。 「……どうした?」 「その命令、撤回を提案します。勇者相手では普通の“戦い”では止まりません」 その声音は、いつもより低く冷たかった。 「なら、どうすればいい?」 「“彼女”が本当に“勇者”であるなら
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第28話「魔王ヴァルト・ノクス――覚醒す。」

リルベアの大振りな一撃が、岩壁の空間を削るように振り抜かれた。 空気が歪み、衝撃が地響きのように反響する。 だが、勇者はその刹那を読み切っていた。 剣を抜くことすらせず、重心を僅かにずらすだけで、リルベアの爪をいなす。 「っち」 リルベアの舌打ちが漏れる。 続く一閃。今度は両手を広げ、多重魔法を発動させ、漆黒の槍と共に鋭く踏み込む。 それに対して、勇者が小さく呼吸をすると剣を一気に振り抜く。 次の瞬間――魔法もろとも空間が爆ぜる。 「っ……!? リルベア!」 モニター越しに、俺は思わず叫んでいた。 視界いっぱいに土煙が舞う。 その中心から、黒く燃え上がるリルベアのオーラが噴き上がるのが見えた。 「まったく、これだから|勇者《きさまら》は嫌いなんじゃ。なんでもないかのようにわらわの魔法を蹴散らしよる」 彼女の声が、かすかに震えている。 強がってはいるが、今の一閃を避けきれていなかった。 目を凝らすと、腹部のあたりに傷が走っているのがわかる。 その傷口から、黒い魔素のようなものが揺らめいていた。 その瞬間―― 「……っぐあっ!?」 強烈な痛みが、俺の腹に走った。 膝が崩れ、思わず床に手をつく。 何だ、今の……? 「主!? どうされましたか!?」 「|主《マスター》! 大丈夫ですか!?」 ゼトスとレイラの声が飛んでくる。 だが、言葉を返す余裕がない。 身体の奥、まるで臓腑を直接殴られたような痛みが、波のよう
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第29話「覚醒せし魔王、勇者を迎え撃つ」

鋭い銀閃が迫る。 勇者の剣を、俺は魔力で覆った片手で弾き返した。金属音が空間に高く響き、火花が散った。 その一撃の重みが腕にビリビリと残る。 ――やっぱり、リルベアとやり合っていただけはある。 軽くかがみ込み、リルベアに手を差し出す。 驚いたように目を瞬かせた彼女が、その手を掴むと同時に立ち上がる。 指先に伝わる熱と重みが、生きていることを証明していた。 「リア、大丈夫か?」 「かかっ! 男前になったではないか、ヴァルトよ」 茶化しながら笑うその声音には、どこか安堵が滲んでいた。 俺の“格”が上がり、人型へと変わった姿を見て、少し嬉しそうに笑っている。 黒髪からは二本のツノが伸び、切れ長の瞳にはまだ人間だった頃の柔らかさが残る。 長身で筋肉質な身体には、赤黒くごつごつとした魔王を彷彿させる装備。 腰には、異様なまでに真っ黒で、いびつに曲がった剣を差していた。 刃は光を吸い込むように鈍く沈み、見る者に言い知れぬ不安を植え付ける。 そんな俺の姿を前に、勇者の目が鋭く細まる。 その双眸には、戦場に立つ者特有の研ぎ澄まされた光があった。 「……誰ですか? あなた」 「魔王ヴァルト・ノクス。このダンジョンのトップとでも言えばいいかな?」 返答を終えるより早く、勇者の姿が視界から掻き消えた。 風切り音すら残さず――まるで空間を飛び越えるかのような移動。 次の瞬間――。 剣が喉元を狙い、稲妻のような速度で振り抜かれる。 だが、俺も同時に抜刀。漆黒の
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