どこかモヤモヤとした感情を残しながら、俺はモニターの映像を遠目に眺めていた。 偵察隊が去り、広間には再び魔力の静寂が戻っている。 美月やレイラは口喧嘩を再開し、ゼトスはそれを微笑ましげに眺め、リルベアは退屈そうに椅子を揺らしていた。 ――平和な空気。だが、さっきの悪寒だけはまだ胸にこびりついている。 その時だった。『……ヴァルトよ』 低い声が、頭の奥で直接響いた。 リルベアの念話だ。『お主は今の気配、気付いておったな?』 俺は思わず彼女を見る。だが、リルベアは首を小さく横に振り、何事もなかったかのように欠伸をしている。 外見は完全にいつもの調子。だが、心の内では続ける。『なんでもない顔をして、モニターを見ておれ。他の者には知られるな。ここからは、わらわとおぬしだけで共有する』 俺は小さく頷き、あえて管理画面を操作するふりをした。 マップを拡大したり縮小したり、どうでもいい確認作業を装いながら、心の中だけで問いかける。『……リアも気付いたのか? なんなんだ、さっきの気配』 一拍の沈黙の後、リルベアの声が低く落ちてきた。『……魔王クゼス、であろうな』「……!」 思わず身体が固まる。 魔王クゼス――どこかで聞いたことのある名前だ。 だが、すぐには思い出せない。ぐるぐると思考が渦を巻く。間違いなく聞いたことのある名なのに、記憶の糸が掴めない。 そんな俺を見かねたのか、リルベアが静かに補足した。『ロジル地方――いや、こちらの言い方ではアジア地方か。そのアジア地方で最大規模を誇るダンジョンのマスターじゃ』 その言葉を聞いた瞬間、記憶が一気に繋がった。 人間として生きていた頃、配信でもニュースでも幾度となく耳にした名。 「最強のダンジョンボス」「アジアの魔王と呼ばれる存在」「挑む者は皆帰
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