「何か、デートみたいだね。」ぽとり。ひまりの手からメニュー表が滑り落ちた。「……え?」蒼がきょとんとする。「どうした?」「い、今……デートって言いましたよね?」「言った」「そ、それをそんな普通に言わないでください……!」「何で?」「何でって……!」ひまりは思わず声を上げる。「わ、私たち、まだ会ってそんなに経ってないですし……!」「うん」「それなのに急に『デート』なんて言われたら、意識するじゃないですか!」蒼はぱちりと目を瞬かせた。「……意識したの?」「~~っ!」ひまりは両手で顔を覆った。「もう!そういうところです!」蒼はしばらく考え込む。そして小さく首を傾げた。「ごめん‥‥よく分からない」「分からないんですか!?」 周りの客がくすりと笑う。ひまりはさらに顔を赤くした。「……もう」蒼は少し考えてから言った。「相沢さん、面白い」「からかわないでください」「からかってないよ」本当に悪気がない顔だった。だから余計に困る。その時、料理が運ばれてきた。ふわふわのオムライス。肉汁が溢れそうなハンバーグ。「わぁ……」思わず目が輝く。蒼が少し笑った。「好きそう」「え?」「オムライス」「好きです」「やっぱり」「何で分かったんですか?」蒼は少し考える。「何となく」「またそれですか」「子どもの頃から好きそう」「何ですか、そのイメージ」「絵本読んでそう」「……」ひまりが固まる。「何で分かったんですか?」今度は本当に驚いた。子どもの頃、ひまりは絵本が大好きだった。何度も何度も読んだ。ページが擦り切れるほど。特に、動物が出てくる絵本が好きだった。「当たり?」蒼が目を瞬く。「……当たりです」「やった」何故か嬉しそうだった。その顔を見て、ひまりも少し笑ってしまう。「神崎さんって、たまに変なところで勘が鋭いですよね」「そう?」「そうです」二人で食事を始める。オムライスを一口食べる。「美味しい……!」思わず声が漏れた。蒼もハンバーグを食べる。「うん」「どうですか?」「美味しい」「よかったですね」「うん」何だろう。一緒に食事をしているだけなのに、妙に楽しい。気を遣わなくていい。背伸びもしなくていい。優斗と食事をしていた頃とは、何かが違った。
Zuletzt aktualisiert : 2026-07-03 Mehr lesen