Todos los capítulos de クズ事務所に捨てられましたが、私の絵の才能を信じてくれた最古参ニートの正体は石油王でした: Capítulo 21 - Capítulo 30

36 Capítulos

第二十一話 「戻ってきてくれ」

朝。相沢ひまりは、自宅の机でラフを描いていた。新しい仕事の構図を考えていると、スマホが震える。知らない番号だった。「……はい、相沢です。」『お久しぶりです。スターライトプロダクションの佐々木です。』「……。」元所属事務所のマネージャーだった。『社長がお会いしたいそうです。』「……。」『どうしても、一度だけお時間をいただけませんか。』ひまりは返事に迷う。今さら。そんな思いが胸をよぎる。『お願いします。』電話の向こうの声は、以前よりもずっと弱々しかった。少し考えてから、ひまりは答える。「……お話だけなら。」『ありがとうございます!』電話は切れた。その瞬間。胸の奥がざわついた。あの事務所。契約を打ち切られた場所。「旬を過ぎた。」そう言われた場所。もう終わったと思っていた。それなのに。どうして今になって――。***午後。待ち合わせ場所は事務所近くのホテルラウンジだった。個室へ案内される。扉を開けると。社長と、佐々木マネージャーが立ち上がった。「相沢さん。」社長の顔には疲れがにじんでいた。以前のような威圧感はない。「今日は来てくれてありがとう。」「……失礼します。」ひまりは静かに席へ座る。コーヒーが運ばれてくる。しばらく沈黙が流れた。やがて。社長が頭を下げた。「まず、謝らせてほしい。」「……。」「君に対して、あまりにも失礼だった。」深々と頭を下げる。ひまりは驚いた。あの社長が。頭を下げている。「数字だけを見て判断した。」「……。」「君の努力も、可能性も見ようとしなかった。」佐々木も頭を下げる。「申し訳ございませんでした。」部屋が静まり返る。ひまりは何も言えない。社長は鞄から資料を取り出した。「これを見てほしい。」そこには。最近のSNSランキング。イラストの反響。記事。出版社の紹介。ひまりの名前が並んでいた。「正直、驚いた。」社長は苦笑する。「君には、こんな才能があったんだな。」その言葉を聞いて。ひまりは少しだけ胸が痛んだ。「……描いてました。」「え?」「昔から、描いてました。」社長は言葉を失う。「子どもの頃から、ずっとです。」「……。」「でも、誰にも見てもらえませんでした。」静かな声だった。責める口調ではない。ただ
last updateÚltima actualización : 2026-07-13
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第二十二話 「私は利用されたくありません」

翌日の朝。相沢ひまりは、自宅の机に座ったまま動けずにいた。目の前には、昨日事務所から渡された契約書。「専属イラストレーター契約書」という文字が大きく書かれている。待遇は申し分ない。活動のサポート。書籍化。グッズ展開。営業まで全て任せられる。イラストレーターとして考えれば、夢のような条件だった。それでも。ひまりの手は契約書に伸びない。「……。」昨夜から何度も読み返した。そのたびに胸の奥が苦しくなる。あの日。「君はもう旬を過ぎた。」そう言われて契約を切られた日のことが思い出される。涙を流しながら段ボールに荷物を詰めた日。誰も引き止めてはくれなかった。あの時の寂しさは、今でも忘れられない。「……どうしたらいいんだろう。」ぽつりと呟く。その時だった。ピロン。スマホが鳴る。【暇】蒼だった。ひまりは思わず笑ってしまう。【相談があります】数秒後。【行く】「早い……。」***一時間後。いつもの喫茶店。蒼はラフな格好で、ホットコーヒーを飲んでいた。「それで?」ひまりは契約書を差し出す。蒼は静かに目を通す。「なるほど。」「昨日、元事務所に呼ばれました。」「うん。」「戻ってきてほしいって。」蒼は黙ったまま続きを待つ。「条件もすごく良くて……。」「うん。」「正直、こんな話はもう二度と来ないかもしれません。」ひまりは俯いた。「なのに決められないんです。」蒼は契約書を閉じる。「戻りたい?」その質問に、ひまりは答えられなかった。戻りたいのか。戻りたくないのか。自分でも分からない。「……分かりません。」「うん。」「許した方がいいのかなって思う自分もいます。」「うん。」「でも……。」拳をぎゅっと握る。「また同じことになったらって思うと、怖いんです。」蒼は静かにコーヒーを飲む。しばらく沈黙が続いた。そして。「断ってもいい。」その一言だった。「……え?」ひまりは顔を上げる。「仕事だから。」蒼は穏やかな声で続ける。「選ぶのは相沢さん。」「でも……。」「戻る義務はない。」ひまりは目を見開く。そんなこと。考えたこともなかった。「でも、せっかく評価してもらえて……。」「うん。」「期待にも応えたいし……。」蒼は首を横に振る。「期待に応えるために、自
last updateÚltima actualización : 2026-07-14
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第二十三話 「あなたは私を信じてくれる」

朝。相沢ひまりは、コーヒーを片手にスマホを眺めていた。昨夜投稿した新しいイラスト。春の花畑で笑う子どもたち。コメント欄には、『今回も優しい絵ですね!』『子どもに見せました!』『絵本になったら絶対買います!』温かい言葉が並んでいる。「……ありがとうございます。」画面に向かって小さく頭を下げる。一か月前。「オワコン」としか言われなかった自分が、こんな言葉をもらえる日が来るなんて思ってもいなかった。その時だった。ピロン。通知が届く。【トレンド入りしています】「え?」首を傾げながら開く。しかし。そこに表示された言葉を見て、笑顔が消えた。『相沢ひまり、過去の映像公開!』『懐かしの天才子役!』『あの頃は可愛かった』「……。」動画を開く。流れてきたのは。子役時代のドラマ。バラエティ番組。CM。七歳。八歳。十歳。幼い自分が笑っていた。「え……?」ひまりは息を呑む。その映像は、本来ネット公開されていないものだった。しかも。動画の最後には。『やっぱり今は劣化したね』『昔だけ可愛かった』『今はイラストで必死』悪意ある字幕まで付けられていた。「何……これ。」胸がざわつく。投稿者を見る。芸能ニュース系アカウント。だが。説明欄には、小さく書かれていた。【映像提供:スターライトエンターテインメント】「……。」元事務所だった。思わずスマホを落としそうになる。「どうして……。」契約は終わっている。それなのに。よりによって。今。こんな動画を公開するなんて。コメント欄は、あっという間に荒れていた。『やっぱり子役の頃がピーク』『今さらイラストレーター?』『昔の方が良かった』『元子役商法じゃん』ひまりはスマホを伏せた。手が震える。せっかく前を向けるようになったのに。また。昔に引き戻される。ピロン。今度は出版社の編集者・三浦さんからだった。【大丈夫ですか?】【SNSを見ました】ひまりは慌てて返信する。【すみません。ご迷惑をおかけしています】すぐ返信が来る。【迷惑ではありません】【先生の絵に関係ありません】先生。その呼び方に少しだけ救われる。しかし。不安は消えなかった。その日の午後。いつもの喫茶店。ひまりは俯いたまま話していた。向かいには神崎
last updateÚltima actualización : 2026-07-15
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第二十四話 「私の味方」

朝。相沢ひまりは、眠そうな目をこすりながらスマホを手に取った。昨夜は、元事務所が公開した動画のことが気になり、ほとんど眠れなかった。恐る恐るSNSを開く。「あれ……?」思わず声が漏れる。昨日までタイムラインを埋め尽くしていた動画が見当たらない。何度検索しても出てこない。「あれ?」もう一度検索する。やはりない。代わりに表示されたのは、【この動画は削除されました】という文字だった。「削除……?」さらに関連記事を開く。『スターライトエンターテインメント、動画を非公開』『権利関係を確認中との発表』『現在、映像は閲覧できません』「えぇ……?」ひまりは目をぱちぱちさせた。昨日まであれだけ拡散されていた動画が、一晩で消えている。しかも。事務所の公式アカウントには、【関係各所への確認不足がございまして、誠に申し訳ございません。現在、映像を削除しております。】という謝罪文まで掲載されていた。「何があったの……?」訳が分からない。その時。ピロン。スマホが鳴る。蒼からだった。【暇】「神崎さん、毎日それですね……。」思わず笑ってしまう。【暇じゃないです】すぐ返信が来る。【じゃあ、お茶しよう】「選択肢がおかしいです!」思わずツッコミを入れながらも、ひまりは待ち合わせ場所へ向かった。***いつもの喫茶店。窓際の席。神崎蒼は、いつも通りラフな格好でコーヒーゼリーを食べていた。「おはよう。」「おはようございます。」ひまりは席に着くなりスマホを差し出した。「これ見ました?」蒼は画面を見る。「うん。」「動画、消えてます!」「うん。」「謝罪文まで出てます!」「うん。」反応が薄い。ひまりは首を傾げた。「びっくりしないんですか?」「した。」「全然そう見えません!」蒼はスプーンを置いた。「よかったね。」「はい……。」確かに嬉しい。でも。納得できない。「昨日まで、あんなに強気だった事務所が、一晩で態度を変えるなんて……。」ひまりはじっと蒼を見る。「……神崎さん。」「ん?」「何か知ってます?」「知ってる。」あっさりだった。「え?」「動画、消えると思ってた。」「えぇっ!?」ひまりは思わず立ち上がりそうになる。「何でですか!?」蒼はコーヒーを一口飲んでから答えた。
last updateÚltima actualización : 2026-07-16
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第二十五話 「私……イラストレーターになります」

春の柔らかな陽射しが、部屋いっぱいに差し込んでいた。相沢ひまりは、自宅の机に向かいながら、一通のメールを見つめている。送り主は、青空出版編集部。件名は、【新規絵本企画のご相談】だった。「……絵本?」思わず声が漏れる。震える指でメールを開く。そこには、相沢先生の温かいイラストを拝見し、絵本の企画をご相談させていただければ幸いです。と書かれていた。「先生……。」まだ慣れない呼び方だった。少し前まで、自分は「オワコン元子役」と呼ばれていた。それなのに今は、先生。その二文字だけで胸がいっぱいになる。さらにメールを読み進める。主人公は、小さな動物。親子で読める優しい物語。ページ数は二十四ページ。自由に描いてほしい。そんな内容だった。「私が……絵本を?」ひまりは、しばらく画面を見つめ続けた。子どもの頃。図書館で何時間も絵本を読んだ。ページをめくるたびに広がる世界が好きだった。物語も。色も。優しい絵も。あの頃は、まさか自分が描く側になるなんて、一度も思わなかった。胸の奥が熱くなる。その時だった。ピロン。スマホが鳴る。【暇】神崎蒼だった。思わず吹き出してしまう。【相談があります】【行く】「やっぱり早い……。」一時間後。いつもの喫茶店。蒼は相変わらずのラフな格好で、のんびりコーヒーを飲んでいた。「こんにちは。」「こんにちは。」ひまりはメールを見せる。蒼は静かに最後まで読む。「絵本だ。」「はい……。」「すごい。」「すごいですよね……。」そう言ったものの、ひまりの表情は少し曇っていた。蒼が気付く。「不安?」「……はい。」俯きながら答える。「イラストは描けます。」「うん。」「でも……絵本って違いますよね。」「うん。」「子どもが読むんですよ?」「うん。」「もしつまらなかったら……。」「うん。」「子どもが笑ってくれなかったら……。」声が小さくなる。「私なんかに描けるのかなって。」蒼は静かにコーヒーを飲む。そして。一言だけ言った。「描ける。」「……え?」「描ける。」それだけ。理由もない。長い説明もない。ただ、その一言だけだった。ひまりは苦笑する。「どうして、そんなに自信満々なんですか。」「見たから。」「……?」「相沢さんの絵
last updateÚltima actualización : 2026-07-17
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第二十六話 「VTuber、始めます」

朝。相沢ひまりは、出版社から届いた一通のメールを何度も読み返していた。件名は、【新しいご提案について】だった。「……新しい提案?」少し緊張しながらメールを開く。そこには、【ぜひ一度、編集部へお越しいただけませんか】と書かれていた。何か悪いことでもあったのだろうか。絵本の企画がなくなった?イラストに問題があった?考えれば考えるほど不安になる。「……行ってきます。」小さく呟き、家を出た。***午後。青空出版。編集部の会議室へ案内される。迎えてくれたのは担当編集・三浦だった。「相沢先生、お待ちしておりました。」「よろしくお願いします。」先生。その呼び方にも、まだ慣れない。席に着くと、三浦は笑顔で資料を差し出した。「今日は、新しいご相談があります。」「はい。」「実は、最近のお子さんや保護者の方は、本だけではなく動画もよくご覧になるんです。」「動画……ですか?」「ええ。」資料には、絵本作家やイラストレーターが動画配信を行っている事例が並んでいた。制作風景。読み聞かせ。イラスト講座。どれも人気コンテンツらしい。「そこで、ご提案なんですが……。」三浦は少し前のめりになる。「相沢先生も、動画配信を始めてみませんか?」「えっ?」ひまりは思わず固まった。「動画……ですか?」「はい。」「む、無理です!」勢いよく首を横に振る。「私、人前で話すの苦手ですし!」「子役時代も台本があったから演じられただけで……。」「それに、顔を出すなんて絶対無理です!」三浦は慌てる様子もなく微笑んだ。「もちろん、その点も考えています。」そう言って、タブレットを操作する。画面には可愛らしいキャラクターが映っていた。「最近はVTuberという活動方法があります。」「VTuber……?」「自分の代わりにイラストのキャラクターが話してくれるんです。」ひまりは画面を食い入るように見つめた。「こんなことができるんですか……。」「ええ。」「相沢先生なら、ご自身でアバターも描けますよね。」その言葉に、少しだけ胸が高鳴る。自分で描いたキャラクターが動く。そんなこと、考えたこともなかった。「一度、ご検討いただけませんか?」「……少し考えさせてください。」「もちろんです。」三浦は笑顔で頷いた。「私たち
last updateÚltima actualización : 2026-07-18
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第二十七話 「初配信は大パニック」

「いよいよ……今日なんですね。」相沢ひまりは、自宅のパソコンの前で深呼吸を繰り返していた。画面には配信ソフト。その横には、自分で描いたVTuberアバター。優しい笑顔を浮かべた女の子が、小さく手を振っている。「かわいい……。」思わず頬が緩む。けれど次の瞬間。「いやいや、そうじゃない!」自分で自分にツッコミを入れる。今日は初配信の日。出版社の担当・三浦さんや配信スタッフが事前に設定を手伝ってくれたものの、本番は一人だ。「大丈夫かな……。」心臓がうるさいほど鳴っていた。その時だった。ピロン。スマホが鳴る。蒼からのメッセージだった。【頑張って】たった四文字。それだけなのに、不思議と少しだけ肩の力が抜ける。【緊張で倒れそうです】送ると、すぐ返信が来た。【倒れたら寝ればいい】「そういう問題じゃないです!」思わず笑ってしまう。緊張していたはずなのに、少しだけ気持ちが軽くなった。「……よし。」ひまりは大きく息を吸った。「始めよう。」***午後七時。配信開始まで、あと一分。視聴予約人数は二百人。「えっ、こんなに?」数字を見ただけで緊張が増してくる。三十秒前。二十秒。十秒。「い、いきます……!」スタートボタンを押した。画面が切り替わる。アバターが動いた。「こ、こんにちは!」……静かだった。「あれ?」画面を見る。コメントだけが流れている。『動いてる!』『かわいい!』『声が聞こえないです!』『マイク!!』『音がありません!』「えっ?」ひまりは慌ててマイクを見る。「あっ!!」ミュートのままだった。「きゃあああ!」慌てて設定を解除する。カチッ。「……あっ、聞こえますか?」コメント欄が一気に流れた。『聞こえたー!』『大丈夫!』『かわいい(笑)』『初配信あるある(笑)』『頑張れー!』ひまりは顔を真っ赤にした。「す、すみません!」『謝らなくていいよ』『落ち着いて』『むしろ面白い(笑)』「皆さん優しい……。」思わず笑ってしまう。少しだけ緊張がほぐれた。「改めまして。」ひまりは深呼吸をする。「本日から活動を始めました、相沢ひまりです。」「イラストを描いたり、絵本のお話をしたり、皆さんと楽しい時間を過ごせたら嬉しいです。」コメント欄が流れる。
last updateÚltima actualización : 2026-07-19
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第二十八話 「元子役、お絵描きします!」

夜。相沢ひまりは配信開始十分前、深呼吸をしていた。「前回よりは……落ち着いてる。」モニターには待機画面。コメント欄には、すでに視聴者が集まり始めている。『待機!』『今日は何描くの?』『学校終わって急いできた!』『楽しみ!』前回の初配信では、マイクが入っていなかったり、配信ソフトを間違えて閉じてしまったりと、大騒ぎだった。それでも最後まで見守ってくれた視聴者のおかげで、登録者は三千人を超えた。「あの時よりは、大丈夫。」そう自分に言い聞かせる。ピロン。スマホが鳴った。蒼からだった。【今日も楽しんで】その一言だけで、肩の力が少し抜ける。「……よし。」ひまりは配信開始ボタンを押した。***夜八時。配信開始。「み、みなさん、こんばんは!」アバターのひまりが画面いっぱいに現れる。コメントが一気に流れ始めた。『こんばんは!』『待ってました!』『今日も来たよ!』『仕事終わりに癒やされに来ました!』昨日より人数が多い。同時接続は千人を超えていた。「今日はですね……。」深呼吸する。「みなさんからいただいたリクエストを、その場で描いてみようと思います!」コメント欄が盛り上がる。『やったー!』『楽しみ!』『描いてほしい!』『うちの娘も見てます!』ひまりは笑顔になった。「それじゃあ最初のリクエストは……。」コメントを読む。『うさぎ!』『ねこ!』『パンダ!』『恐竜!』『ユニコーン!』「いっぱいありますね!」少し考えてから笑う。「じゃあ最初は……うさぎさん!」ペンを走らせる。丸い顔。長い耳。少しだけ大きな瞳。ふわふわした毛並み。色を重ねる。画面の向こうからコメントが流れる。『かわいい!』『もう癒やされる!』『線が優しい!』『見てるだけで落ち着く!』ひまりは照れ笑いした。「ありがとうございます。」続いて。『ちょうちょ描いて!』『花も!』『春っぽく!』「春ですね。」うさぎの周りに花を描く。黄色いたんぽぽ。ピンク色の花。空にはちょうちょ。柔らかな色が少しずつ広がっていく。コメント欄も穏やかだった。『春だぁ』『子どもが笑ってる』『優しい世界』『寝る前に最高』その時。一つのコメントが目に入る。『五歳の娘が"くまさん描いて"って言ってます』ひま
last updateÚltima actualización : 2026-07-20
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第二十九話「コラボのお誘い」

朝。相沢ひまりは、いつものようにコーヒーを飲みながらスマホを開いた。昨夜の配信のアーカイブ。再生回数は、すでに五万回を超えている。切り抜き動画も次々と投稿され、『子どものコメントを全部拾ってくれるVTuber』『優しすぎるお絵描き配信』というタイトルで拡散されていた。「すごい……。」思わず画面を見つめる。まだ一か月も経っていない。それなのに、自分の配信を楽しみにしてくれる人が、こんなにも増えている。コメント欄を開く。『昨日の配信、娘と見ました!』『仕事で疲れてたけど癒やされた』『毎週楽しみにしてます!』『次の配信まだですか?』ひまりは小さく微笑んだ。「ありがとうございます。」その時だった。ピロン。新しい通知が届く。「DM?」送り主を見る。見覚えのある名前だった。『星乃ルナ』登録者数百二十万人。イラスト配信や雑談配信で大人気のVTuberだ。「えっ……。」思わず声が裏返る。「えええっ!?」慌ててメッセージを開く。【突然のご連絡失礼します。いつも配信を楽しく拝見しています。もしご都合が合いましたら、一度コラボ配信をご一緒できませんか?】「…………。」頭が真っ白になる。「ええええええっ!?」部屋中に悲鳴が響いた。***一時間後。ひまりは、いつもの喫茶店に駆け込んでいた。向かいには、いつものラフな格好の神崎蒼。「どうしました?」コーヒーを飲みながら尋ねる。ひまりはスマホを差し出した。「こ、これです!」蒼は画面を見る。「うん。」「『うん』じゃないです!」「コラボのお誘いです!」「そうだね。」「登録者百二十万人ですよ!?」「多いね。」「多いねじゃありません!」ひまりは頭を抱えた。「絶対に何かの間違いです!」「どうして?」「だって、私はまだ始めたばかりですよ?」「うん。」「登録者数も全然違いますし!」「うん。」「私なんかが一緒に配信したら、ご迷惑になるかもしれません!」蒼は静かにコーヒーを口に運ぶ。「断りたい?」その質問に、ひまりは言葉を詰まらせた。「……。」断りたい。そうではない。むしろ。憧れのVTuberだった。イラスト配信を始める前から、何度も動画を見ていた。「……嬉しいです。」小さく呟く。「でも、怖いです。」「うん。」「
last updateÚltima actualización : 2026-07-21
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第三十話 「初コラボ配信!」

――配信開始まで、あと10分。相沢ひまりは、自室の椅子の上で何度も深呼吸を繰り返していた。「だ、大丈夫……落ち着かなきゃ……」画面にはすでに配信待機画面が映っている。コメント欄には、開始前から視聴者が集まり始めていた。『今日はコラボだよね!?』『星乃ルナ来るの!?やばい!』『新人VTuber緊張してそうw』「してるよ……やばい……やばい……」ひまりはマイクの位置を直し、アバターの表情を確認し、もう一度座り直した。そのとき、チャット欄に通知が出る。【星乃ルナが参加しました】「っ……!!」心臓が跳ねる。画面の向こうで、人気VTuber・星乃ルナの声が入る。『こんにちはー!星乃ルナです!今日はよろしくお願いします!』明るく、柔らかい声。ひまりは一瞬固まったあと、慌ててマイクをオンにした。「こ、こんにちは……!相沢ひまりです……!よろしくお願いします……!」声が震えている。コメント欄が一気に動く。『緊張してて草』『かわいい声』『初々しすぎるw』蒼は、いつもの喫茶店でその配信を見ていた。コーヒーを片手に、画面をじっと見る。「……うん」小さく頷く。配信は始まったばかりだった。***コラボ内容はシンプルだった。「お互いのイラストを描き合う」ひまりにとっては、得意分野だ。しかし。「で、では……まずテーマを決めます……!」『あ、じゃあ“お互いのイメージキャラ”とかどう?』星乃ルナの提案に、「い、イメージキャラ……!」ひまりは一瞬固まる。「わ、私のイメージ……?」『うん!絶対可愛いと思う!』その一言で、ひまりの緊張が少しだけ和らぐ。「が、頑張ります……!」ペンタブを握る。だが手が少し震えていた。***描き始めると、コメント欄の流れが変わる。『線めっちゃ綺麗』『新人とは思えない』『普通に上手くて草』ひまりは画面を見ずに集中していた。しかし。途中で、マイクがオンになっていることを忘れる。「えっと……この髪の毛は……こっちの方がいいかな……でも……あれ……?」独り言がそのまま配信に乗る。『独り言かわいいww』『実況してるw』『素人感あるのに上手いのずるい』蒼は少しだけ笑った。「……そのままでいい」誰にも聞こえない声で呟く。***一方、星乃ルナ側もひまりを絶賛していた。
last updateÚltima actualización : 2026-07-22
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