朝。相沢ひまりは、自宅の机でラフを描いていた。新しい仕事の構図を考えていると、スマホが震える。知らない番号だった。「……はい、相沢です。」『お久しぶりです。スターライトプロダクションの佐々木です。』「……。」元所属事務所のマネージャーだった。『社長がお会いしたいそうです。』「……。」『どうしても、一度だけお時間をいただけませんか。』ひまりは返事に迷う。今さら。そんな思いが胸をよぎる。『お願いします。』電話の向こうの声は、以前よりもずっと弱々しかった。少し考えてから、ひまりは答える。「……お話だけなら。」『ありがとうございます!』電話は切れた。その瞬間。胸の奥がざわついた。あの事務所。契約を打ち切られた場所。「旬を過ぎた。」そう言われた場所。もう終わったと思っていた。それなのに。どうして今になって――。***午後。待ち合わせ場所は事務所近くのホテルラウンジだった。個室へ案内される。扉を開けると。社長と、佐々木マネージャーが立ち上がった。「相沢さん。」社長の顔には疲れがにじんでいた。以前のような威圧感はない。「今日は来てくれてありがとう。」「……失礼します。」ひまりは静かに席へ座る。コーヒーが運ばれてくる。しばらく沈黙が流れた。やがて。社長が頭を下げた。「まず、謝らせてほしい。」「……。」「君に対して、あまりにも失礼だった。」深々と頭を下げる。ひまりは驚いた。あの社長が。頭を下げている。「数字だけを見て判断した。」「……。」「君の努力も、可能性も見ようとしなかった。」佐々木も頭を下げる。「申し訳ございませんでした。」部屋が静まり返る。ひまりは何も言えない。社長は鞄から資料を取り出した。「これを見てほしい。」そこには。最近のSNSランキング。イラストの反響。記事。出版社の紹介。ひまりの名前が並んでいた。「正直、驚いた。」社長は苦笑する。「君には、こんな才能があったんだな。」その言葉を聞いて。ひまりは少しだけ胸が痛んだ。「……描いてました。」「え?」「昔から、描いてました。」社長は言葉を失う。「子どもの頃から、ずっとです。」「……。」「でも、誰にも見てもらえませんでした。」静かな声だった。責める口調ではない。ただ
Última actualización : 2026-07-13 Leer más