All Chapters of 運命にあらがう俺は、異能でSランク宇宙人をぶっとばす: Chapter 51 - Chapter 59

59 Chapters

50話 秘密裡のうちに

 榎木少佐は、激務を抱える夜坂本部司令の前に進み出た。  ”動きました”  と、携帯に文字を打って夜坂司令にそれを見せる。 「わかったわ。……もしやと思ったけど」  ”いつから始まったのか分かりませんが、その時間に本物の野口長官が警察庁に居たことも確認済です。これで第二弾の捕獲作戦が開始できるかと” 「そうね、漏れは防がなければ。私の名前で使える権限を任せます。――やってちょうだい。あとのゴタゴタは私が引き受けるから」  ”了解しました。必ず結果をあげてきましょう”  メモ帳アプリを閉じた榎木は、敬礼して夜坂の前から退室した。 捕えているアポカリプス星人は、何も話さなくなってしまっている。  そして、何を食べるのか分からないまま、じわじわと衰弱してきていた。 このまま黙って死なれては、捕らえた意味がなくなる。  だが、嶽村副司令にもアポカリプス星人が接近しているとなれば、新しい情報が入手できる可能性が広がるのだ。 逃がすつもりもないし、情報の流出は避けたい。  まさか洗脳されているとは思わなかったが、政治家関連に情報を漏らしていると前から推測していた。 散々警戒されて、ようやく嶽村派に雨宮を潜り込ませて五年。  長くかかったが、ようやく釣れたのだ。 アポカリプス星人を閉じ込めている部屋にいくと、待機していた部下が榎木少佐に敬礼する。 「ソラさん、アポカリプス星人に気づかれないように複数で近づく場合は何か策はありますか?」  今、電磁波を出しているのはソラの仲間だ。 ソラは、わたがしのような体を浮かせたまま静止する。 『ソラの一部モッテいク。脅威度、でナイ。居場所、探知されナイ』  ソラの体がむいんと伸びると、その白い雲状のものは十個ほどに
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51話 崩壊と再生と

 オフィリア05部隊に、出撃アラートが鳴った。  五百雀《いおさき》月子は、すぐさまバイオメタリック・エクソスーツに着替えに走る。 しかし、その心は、カガリの告白に揺れていた。  地球外生命体の血が混じっているという事実より、一番に揚羽に話したというカガリの顔で、察してしまった。 あの二人は付き合ったのだ。  カガリの表情で、稲妻に撃たれたような衝撃が月子を襲ってきた。  ――なんて、厚かましい。  防衛高時代に、ただ一人自分だけが、カガリと張り合った。 自分だけしか知らないカガリの顔が、たくさんあった。  ほの淡い恋も、自覚してからはどこか期待していた。 どれほど思いあがっていたのか。  カガリには、揚羽しか目に入っていなかったのに。 それでも、泣くのだけは堪えた。  案の定出撃アラートが鳴ったし、目が腫れた状態でカガリの前に出たくなかった。 せめて、好きな人のまえでは理想の自分で居たい。  叶わなくても、この育った気持ちはまだしばらく大切にしていたかった。 「五百雀、調子いいな!」  地球外生命体を打ち倒していると、カガリから声をかけられる。 「はい、ばっちしです!」  せめて、役にたつ部下だと思われたい。 ここで、がっかりするような結果は出したくなかった。 「月ちゃん……今日、飲みにいかないか?」 「いえ、こんどみんなで行きましょう。種田さんは人気あるんですから」  何か察した種田に声をかけられて、月子は断った。 傍目から、そんなに分かりやすかったのだろうか。  カガリが鈍くて良かった。 叶わないと分かっていても、今は直接ふられたくない。  この恋は、け
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52話 実行部隊たち

 バイオメタリック・エクソスーツに揚羽が着替える直前で、カガリは握った手を離した。  榎木少佐から指定された時間までもう少し。 極秘の任務なので、いつものようにはいかない。  こっそり持ち出して、公園のトイレで着替えだ。 カガリは相変わらず、出撃後もスーツを私服を上に着込んでいた。  カガリの場合は、緊急で本部に呼ばれることが多いので誰も気にしない。 「……マジでなんも言われなかったな……」  男女共同ルームでも、手をつないでいるカガリと揚羽を見て誰も変な顔すらしなかった。 あろうことか、賭けの清算まで一部で起こっていてカガリを唖然とさせる。  確かに揚羽に近づく男を牽制してきたが、基地全体から「やれやれ」と言わんばかりの態度をされてしまった。 出撃から戻ってからずっと、男女共同ルームでいちゃいちゃしていたのだが、カガリとしてはもっと驚かれると思っていたのに万全のスルー。  そんな人の目の中で、堂々と手を繋げる権利ができたことが、改めて嬉しかった。 「待たせてごめんね?」  トイレから、着替えた揚羽が顔を出す。 付き合ってから揚羽の一挙一動が可愛く見えて仕方ないカガリは、密かにもだえるのを耐えた。 「コープスイングは使えないから、タクシーで近場まで行って走るぞ」 「分かってる。任務、成功させようね」  揚羽はタートルネックの服を着ていたが、体の線はカガリ以上にバイオメタリック・エクソスーツが分かってしまう。 カガリは呼んでおいたタクシーに乗ると、揚羽が影になるように乗り込んだ。  夜の道を走るタクシーは、慎重に進む。 地球外生命体の襲撃の後は、遺骸は研究所が引き取っていくが道路の舗装が乱れることがある。  事故が多発するほど車は走っていないが、タクシーは静かに高級住宅地へ
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53話 裏切られたココロ

 姫川四葉の携帯が振動した。 最近、よくあるお誘いだった。 「最近四葉の携帯よく鳴るね。もしかして彼氏?」 「そんなんじゃないですよ……」 「そっか。ていうか、不知火少尉ってガチで揚羽先輩と付き合ってる噂出てきたよね~。圧倒的に戦闘職が多いから、男女共同ルームは使いにくいし、見たわけじゃないけど」  同室のオペレーターの先輩の言葉に、四葉は唇を噛み締めた。 「違うと思います……カガリくんは優しいから」  つけこまれている、とはさすがに断言できない。 上下社会だ。階級はだいぶ離れているので誰に告げ口されてもおかしくはなかった。  メールを開けると、案の定雑誌ライターの藤川からだ。 先々週、四葉が外出していたところを「不知火カガリくんの同期だよね?」と声をかけられたのだ。  スター性はテレビが握っているので、他愛ない話や日常の話を是非聞きたいと言われて。四葉は断り切れなかった。 同期ならさぞエピソードをお持ちでしょうと、おだてられたのも気持ちよかったし、五百雀月子ではなく自分がカガリと親しそうと判断した藤川の期待にもこたえたかった。  ”明日の三時に、いつものお店で”  今は、上から外出禁止の命令が出ているが少し離れた場所ならまだ大丈夫だろう。 四葉は二段ベッドの枕の下に、カガリのグッズで出た写真を隠す。  悪いことをしているわけじゃない。 謝礼だって受け取っていない。  いつか、カガリも感謝してくれるだろう。 そう思いながら四葉は、眠りに入る。 心地よい眠気はすぐにやってきた。 *** 「慣れてきました?」 「多分、一生慣れないです」  カガリはコープスイングで富士山麓から本部に向かっていた。
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54話  末路

 嶽村は、部屋の壁を叩くのをようやく諦めた。 食事が出される以外、聴取の人間しか顔を合わせない。  そしてその相手はみな夜坂司令の部下ばかりで、嶽村はこれはクーデターではないかと疑っていた。 トイレは部屋にあるが、廊下に面する壁は透明だ。 遠くに人の気配も感じて、嶽村は怒りを抑えきれなかった。 「お加減はどうです?」  冷ややかな声で入室したのは、鬼山中佐だった。 「鬼山、貴様ッ!」 「あなたに貴様呼ばわりされるのは合点がいきませんね。あなたは軍の極秘情報を地球外生命体に、垂れ流していたんですよ?」 「それは御厨だと判明しただろうが!! 私は知らないぞ!」 「いえ、あなたがいつから情報を流していたのかは判別がきかない以上、御厨隊員の前か後かなんてもう関係がないんです。あなたは異界防衛軍の本部副司令として、してはならないことをしました」 「だから……証拠を出せ!」  鬼山が、ひどく疎ましい顔をする。 普段は快活な性格なだけ、嶽村は初めて見る表情に背筋が冷えた。  鬼山が、書類の中から取り出した機械を操るとそこから嶽村の声が流れ始める。 ごく最近の軍務会議の内容を、抑揚もなく話し始める自分の声に、とうとう冷や汗がはがれ始めた。      こんなことを、話した記憶はない。 「指向性マイクで聞き取ったものを、その場で録音したものです。納得しましたか?」 「それは……!!」  嶽村は言葉に詰まった。 そして、方向転換をすることにする。 「アレだ、洗脳されていたんだから、私の意思じゃない! 悪いのは地球外生命体だ!」 「夜坂司令が御厨隊員にそう判断したとき、少佐から准尉なんてとんでもない、クビだと騒いだのはあなたですよね? 撤
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55話 最終決戦①

 関東本部基地には、ずらりと精鋭が並んでいた。 その先頭にたつのは、榎木准将だ。  鬼山啓心中佐、神原雪音中佐、そして不知火カガリもその列の中にいる。 オフィリア05部隊のように部隊全体で参加してるものは少なく、夜坂司令と榎木副司令からの声かけで臨時の部隊編成が多い。  その全員が、M1,022型異星人の一部を身に着けて隠密態勢を取っていた。 今回失敗してしまうと、アポカリプス星人が地球外生命体に情報を流し続け、いつくるか分からない洗脳を警戒し続けることになる。  娯楽の少ない異界防衛軍としては、外出禁止の不満を抑え込むのも長くないと悟っていた。 そんな中、カガリだけはソラ本体を抱えている。  カガリとソラで、人間に紛れるアポカリプス星人をいぶりだしていく想定だ。 そのために、カガリだけ一人ペイント弾を持っている。  口頭で叫んだり、異髄力で縛り上げるより早いからだ。 夜坂司令が、軍服で部隊全体へと手を広げる。 「このところ、同じメンバーに極秘任務を任せていて心苦しいけれど、今回が最後よ。地球外生命体に情報を流し、人を洗脳するアポカリプス星人を駆逐する! 今回が最大のチャンスよ! 不知火カガリを先頭に、総力戦で挑みます!」  榎木准将が、敬礼しつつ唱える。 「撤退する時は味方の死体を担いで逃げろ。絶対に置き去りにするな。テキの手に渡るくらいなら、必ず脳を打て!」  かつて不知火知世名誉中将が口にした言葉。 精鋭たちは、榎木に従って唱和したが、カガリは口を開かなかった。 『カガリ、どうしたカ?』 「――おごりでもいい、オレはそんな事態を防いでやる」 『ソラが捕まったラ、カガリはソラ殺してイイ。地球人のデータ、たくさんもってル』 「馬鹿なこと言うな! ソラは友達だ。いなくなるのは許さねえよ」  カガリの怒りに
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56話 最終決戦②

 五百雀《いおさき》月子は、大量のパフィオペディルム型に左右を挟まれながら雨の空を錐もみに回避した。 精鋭部隊は、ここにいる全部で終わりだ。  援軍の可能性は低い。 八メートルほどのパフィオペディルム型地球外生命体は、倒れても倒れても減ったように見えない。  弱点は背中にあるが、圧倒的な数で月子にはなかなか手が届かない。 月子はカガリに迫ろうとした個体の口を、一撃で切り落とす。 「月子ちゃん、あんまり僕から離れないでほしいっすね」  雨宮准尉が、すぐさま隙ができた月子の背中をカバーに回った。 視界の端で、種田上等兵が攻めては引く攻撃を多彩に繰り出していて、月子は自分が飛び出していることに気が付いた。 「それでも、不知火隊長が――!」 「わかってます、カガリ少尉も目的見失ってて困るんすよね」  歯がゆそうに雨宮も、長いゼノブレイドで地球外生命体を叩き切る。 軟体のパフィオペディルム型だが、切り口によってはゼノブレイドがひっかかって手から抜けそうになった。  ヒュン、と一体のコープスイングが集団から飛び出して、パフィオペディルム型が一斉にその一機を狙う。 「揚羽先輩……?」 「続きましょう、月子ちゃん! カガリ少尉のことはあの人に任せるっすよ!」  揚羽を狙うパフィオペディルム型を、急所を外してでも切りまくった。 月子と雨宮は背中を預けあって、返り血を避けながら揚羽の背後を守る。  揚羽はちらりと感謝するように振り返って笑むと、一人で乱闘するカガリの元へ到達した。 カガリは返り血を気にすることなく、縦横無尽にセイント・テスラで地球外生命体を消滅させている。 「カガリ……!!」  揚羽が無防備なほど接近して、不知火カガリはようやくパフ
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57話 これからの未来は

 カガリは、また敬礼されて苦笑した。  極秘作戦は、極秘ではなくなった。 一般市民が多数、東京スカイツリー決戦を携帯で撮影したものがマスコミに流れたのだ。  テレビ局は、独断でその映像を流し、お茶の間は同じニュースに張り付いている。 作戦に参加した隊員たちは、周囲から尊敬の念で見られていた。  Sランク地球外生命体に囲まれて、生き延びたのだ。 カガリも妬みから多少解放されてきている。  そんなカガリは、本部に呼ばれてきているが表玄関はマスコミでいっぱいだった。 カガリに気が付いた記者たちが、大声でカガリを呼ぶのを無視する。 「相変わらず、本部はうるせえなあ」   作戦から一週間たった今日、本部はマスコミからの発表を控えていた。 戦いはスカイツリーの下だったとはいえ、補修道路や一部の民家なども壊れている。  その工事のめどがようやく立ったので、夜坂司令は報道を許可した。 とはいえ、まだ一時間以上後なのだが。  カガリは、軟禁されている姫川四葉と話をしてから一旦ロビーに下りてきたところだ。 四葉は、終始徹底して「カガリくんの為にやったの!」という意見から離れず反省を見せない。  反省しない限り、軟禁から解かれることはないだろう。 一方、御厨は訓練以外は自主的に軟禁され、あと一年は自粛すると語っていた。  司令に願い出て、お茶の水基地に戻るときにはもっと下の階級からやり直したいと、すっきりとした笑顔を見せていた。 「早く、戻ってもらいてえな……」 「誰にだね?」 「うわ、びっくりした!」  カガリのひとり言に答えたのは、榎木准将だった。 護衛もつけず、ソラを連れて歩いている。 「行こうか、カガリくん。インタビューの前に腹ごしらえでも」 
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エピローグ 58話

西暦2028年、春。 霊園の中を、三つの影が歩いていた。 遅咲きの桜が花を散らす中、軍服姿の三人は立ち止まる。 スカイツリー作戦から、二年の時が経っていた。 「来たよ、母さん。今年もまだ桜が残ってるんだな」 カガリが花で埋め尽くされている墓に向かって呟いた。 掃除は隅々までされているのだが、気持ちとして揚羽が細かいところを片付け始める。 生島司令は、持参した花束の剪定を始めた。 「親父もこっちに移れて、満足してるだろ?」 不知火知世は名誉中将として、軍葬にされていた。 夫のホムラは別の墓だったのだが、去年カガリが二人の墓に変えたのだ。 もっと早く、夫婦として弔ってあげればよかった。 そうしたことが気づけなかったのは、自分の未熟さもあったと思う。 「今年は嫁を連れてきたからな。何度も話してただろ、久遠揚羽――今は不知火揚羽だ」 「お義父さん、お義母さん、カガリはわたしが幸せにしますからね!」 「いつも思うが、それはセリフが逆じゃないのか」 カガリが、父と母のそれぞれの好物を供えた。 生島は、二つの花束を供える。 「結婚式のカガリくんの保護者は私が勤めたからね。――私で良かったかな、知世くん、ホムラくん」 「いいんですよ。司令だけでよかったのに、啓心まで居たし」 三人はそれぞれ、長く墓石の前で祈った。 一番最後まで頭を下げていたのは、カガリだった。 「――またくるよ、二人と
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