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All Chapters of ひみつのお姫さま: Chapter 1 - Chapter 10

55 Chapters

prologue

幼い頃から自分の女顔がコンプレックスだった。何度その顔に対してからかわれた事だろう。からかってくる奴が大半だった中で、幼馴染みである新だけは違った。いつも通り「女男」とからかわれて泣いている中、新はオレの前にバッと出て「そういうのやめろ!」と庇ってくれた。「お前らのそれは虐めなんだぞ!やめてやれよ!」 「な、なんだよ!事実じゃん!」いじめっ子がくって反論すると新は「ハァ」とため息をついた。「そう言ってお前、若葉の事好きなんじゃねーの?」 「バッ......!!んな訳ねーだろ!バーカ!もう行こうぜ!!」新の言った事が本当かどうかはわからないが、いじめっ子は顔どころか首まで真っ赤にして取り巻きを連れて去っていった。その様子を見て、新は「ダッセーの」と言ってオレに向き合った。「お前も言われっぱなしはやめろよな。男だろ?ベソベソ泣くのもよくねぇよ」 「ご、ごめん......」オレは涙をゴシゴシと拭い新に向き合った。「新、いつもありがとう」そう言いながら新に笑いかけた。すると新は顔を赤くしてそっぽを向きながら「おう」と返事をした。「実はオレ、最近目が悪くなったからメガネする事になったんだ。顔も隠せるようになるからこういうの無くなると思う。......多分」 「若葉、本読んだり、勉強したりするの好きだもんな。でもオレ達まだ小2なのにメガネか...。ずっかけるのか?」 「うん!もう顔でからかわれるの嫌だし」 「ふーん......。可愛いのにもったいない......」 「え?」新の最後の言葉は小さくボソッと言ったためオレは聞き取れなかった。だから聞き返したのだが、「何でもねぇ」と言われ追求するのをやめた。「ホラ!もう夕方だし帰ろうぜ!」 「ホントだ。夕日キレイ」 「...さっきまで泣いてたくせにのんきな事言うよな」 「ごめんごめん」新は「ホラ」とオレに手を差し出してきたので、オレはその手を握り、手を繋ぎながら家路についた。明日は土曜日なので両親とメガネを買いに行く事になっている。休み明けにはメガネをして登校する事になるから、もう意地悪を言われる事は怖くない。メガネはオレにとってお守りのような役割りになるのだと思うと、心強く感じるのであった。そうして、その休み明けからメガネを外すことはなくなったので、だんだん皆オレの女顔に対して何か言ってく
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episode1

学校行事の花形と言えば、学園祭だ。1年生にとっては入学して初めての学園祭なので、どのクラスもテンションが尋常でなく上がっていた。それは若葉のクラスも例外ではなく、出し物を何にするかで白熱していた。若葉はさほど興味がなく、ぼう、と外を眺めていた。だがそれがよくなかった。気づいた時には、出し物は喫茶店。若葉の担当はホールキャスト。若葉は血の気がサァっと引き、大声で「ムリムリ!」と声を上げ立ち上がった。しかし、クラス委員長はそんな若葉の元へと行くと、ヒョイっとメガネを取り上げた。「佐倉君。君の可愛らしさを活かして是非とも客寄せパンダになっておくれよ。大丈夫。当日は可愛らしさを倍増させてあげるから」 「問題はそこじゃないよ!と言うかメガネ返して!オレが客寄せなんてなる訳ないだろ!」若葉は反論するが、教室中から「そんな事ないよ!」「佐倉君の可愛さは女子も負けるよ!」と声が上がった。「クラス満場一致で佐倉君はホールキャストだよ。当日はコンタクトにしてもらうよ?異論は認めない。私の言葉は絶対だよ」クラス委員長はそう言うと若葉の肩をポンと叩き、手をとりその手のひらにメガネを置いた。若葉はガクッと肩を落とし静かに座った。「佐倉ドンマイ!あの委員長の事だから、きっと女装させられる事間違いなしだな!」 「笑顔でとんでもない事言わないでよ......。そこは考えないようにしてたんだから......」後ろの席のクラスメイトから恐ろしい事を言われ、若葉は一気に学園祭が億劫になってしまった。「......オレ、学園祭休もうかな......」 「佐倉君!それは絶対ダメよ!アナタは金もうけ...ゲフンゲフン。クラスになくてはならない存在なんだから!」 「......嬉しくないよ......」若葉はどうしても逃げられないと悟り、諦めることにした。「......もう好きにして......」 「皆!聞いたね?!言質とったよ!」その言葉をかわきりに、クラスが「うおぉー!」と盛り上がった。「クラス優秀賞は我らが1-3がとるわよ!」 「「おぉー!!」」 「ハァ......」若葉はクラスの熱気についていけず、机にうっつぶしたのであった。
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episode2

出し物が決まった翌日のホームルーム。さっそく若葉は女子達の着せ替え人形と化していた。どこから持って来たのかという程の大量の衣装達。様々なメイド服やゴスロリ、チャイナ服まで。ウィッグもロングを中心にいろんな髪型が揃っていた。「......チョット、まさかコレ全部オレが着るわけ......?」と、着せ替えが始まる前、若葉が恐る恐るクラス委員長に尋ねた。すると、彼女は目をこれでもかと見開き、「何を言っている?」と言わんばかりの表情を浮かべた。「佐倉君。クラス優秀賞は君にかかっていると言っても過言では無いのよ?そのためにはお客様に喜んでもらえるようにいろんな姿を見せる必要があるの。おわかり?」 「......わからない。わかりたくない」クラス委員長は「もう!ワガママ言わない!」と若葉の背中をバシバシと叩く。そうして若葉は彼女達の着せ替え人形となったのであった。しばらくいろんな衣装を着せられていると、ホールキャストのネームプレートを作っていた女子がキャッキャと騒ぎながらこちらに近づいてきた。「佐倉君のネームプレートメッチャ可愛く出来たよ!」 「......ちょっと待って。何コレ?」 「何って?」若葉の疑問に女子はキョトンとしていた。「オレの名前"佐倉"だよ?......何"桜"って......」 「えぇー、可愛くて良いじゃん!"桜ちゃん"!」 「おぉ!メッチャ良いじゃん!佐倉、マジで女子にしか見えねぇし、学園祭の間は"桜ちゃん"でいこうぜ!」女子に乗っかって、男子のクラスメイトまでテンション高く近寄ってきた。「それにホラ。廊下見てみ?佐倉......いや、桜ちゃん見たさに他クラスの奴らが見に来てるぜ?」 「......え?」そいつに言われて廊下に目をやると、他クラスの女子や男子が若葉のクラスの廊下に集まってきていた。中には「あんな可愛い女子このクラスにいたか?」と言う輩もいた。そんな様子を見てクラス委員長は「ふふふっ」と小さく笑い、「計算通り!!」と声高らかに言った。「言ったでしょ?佐倉君は立派な"客寄せパンダ"になれるのよ!今の状況で立証出来たでしょ?自信持って!"桜ちゃん"!」 「......こんなので自信持ちたくないよ......」若葉は今のロングヘアーのメイドさん姿で項垂れた。鏡がある訳ではないので、若葉は自分の姿が見れていない。
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episode3

どこを見ても男、男、男。男子校とはむさ苦しく悲しい場所である。マンガの様に美人な若い女性教師が居るわけでもない。そんな中で3年間過ごすというのは、青春を送る若者には酷な話しである。授業中も落ち着きなく騒がしい中、新は回ってきたマンガの最新巻を読んでいた。すると、高校に上がってから仲良くなった斉藤が声をかけてきた。「新ぁー、お前、今月末の土曜ヒマか?」 「土曜か......。なんも無いけど何?合コンでも開いてくれるん?」斉藤はこの辺りの高校に顔が広いため、よく合コンを開いたりしているのである。「いやいや。今回は合コンじゃなくて(笑)オレの中学の親友が桜ヶ丘に通ってんだけどさ。その日学園祭らしくって。新一緒にいかね?」 「......桜ヶ丘か......」新が遠い目をしながらポツリと呟く。斉藤はそんな新をハッと見やると、「もしかして......」と言葉を紡いだ。「新、お前......桜ヶ丘に元カノでもいんのか?!」 「ちゃうわ!!......オレの幼馴染みも桜ヶ丘に通ってんだよ。......まぁ、中2の途中から交流無くなったケド」 「......ふぅーん?なんかアヤシイけど、それって女?男?」 「......男だけど」新が"男"と応えると、斉藤は「なぁーんだ」と言い、後頭部で手を組みながらつまらなそうに新を見やった。「オレはてっきり幼馴染みという名の元カノかと思って期待したのによー。なんだ、男かよー。つまんねぇー」 「......お前なぁ......」新は斉藤に呆れていると、頭の中で幼馴染み..."若葉"を思い浮かべる。先程言った通り、中2のあの日から交流がパタリとやんでしまって、今となっては幼馴染みと言っていいのかわからない程である。自分から若葉を遠ざけてしまったため、今更若葉に合わせる顔がないのだ。新がそう思いだんまりを決め込んでいると、斉藤は「別にいいじゃん?」と声をかけてきた。「オレ達はお客として、学園祭を楽しみに行くだけだし。その"幼馴染みさん"に会いに行く訳じゃねぇんだからさ。気楽に行こうぜ?もしかしたら、ワンチャン可愛い女子といい出会いがあるかもしれねぇし?」 「......まぁ、そうだな。いいぜ、いっても」新がそう応えると、斉藤は「そうこなくっちゃ!」と言いながら背中をバシバシと叩き、「じゃあ、土曜10時に桜ヶ丘の校門前
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episode4

天気は快晴。見事なまでの学園祭日和。そんな天気とは裏腹で、若葉のテンションはどんよりと曇っていた。「......とうとう来てしまった......。せめて雨でも降って来客数減ってくれればよかったのに......。」若葉が誰にも気づかれないように本当に小さく呟いたのだが、地獄耳のクラス委員長がその呟きを聞き逃すハズがなく。「なんてことを言うの佐倉君!学園祭と言えば晴れと決まっているものよ!そして、この学園祭に来たお客さんを1-3に集客するのよ!そ・の・た・め・に!桜ちゃん!よろしくね!」 「......ハァ......」クラス委員長の言葉をかわきりに、クラス中から「桜ちゃんよろしくね!」「期待してるぜ!桜ちゃん!」と声が上がるのであった。「それじゃあ、それぞれ準備に取り掛かりましょう。佐倉君、ちゃんとコンタクト持ってきてくれた?」 「......ハイ。持ってきました。」 「よし!じゃあハメてね!その後にメイクするから。衣装、メイク係の皆!佐倉君任せるね!」 「りょーかい!佐倉君!メッチャ可愛くするからね♡」若葉はクラス委員長から衣装、メイク係の女子へと引き渡された。これはもう腹を括るしかない。こうなったら、来客した客全員惚れさせる勢いでやってやる。頑張れ若葉。負けるな若葉。そう若葉が小さく燃えていると、クラスの皆が「とうとうやる気になってくれた!」と喜んだ。「皆、オレ頑張るから。気負わちゃわないように今日一日は皆も"桜ちゃん"って呼んで」 「佐倉君......いえ、桜ちゃん......!ありがとう!アナタを立派な女の子にしてみせるわ......!!」クラス委員長は感極まって、フルフルと震えている。他のクラスメイト達も「オレ達も気合い入れて美味いもん作るからな!」「私達もコス頑張るからね!」と盛り上がった。クラスの思いが一致団結した後、皆自分達の持ち場へと散っていった。「桜ちゃん、最初の衣装はどうする?やっぱり無難にメイド服からとかどうかな?ウィッグはロングのツインテールで!」 「うん。良いと思う。オレって途中、客引きとして校内回るんだよね?」 「そうね。その時はこのピンクのゴスロリとか良いと思うんだけど...ウィッグはウェーブで!」衣装担当の女子がおずおずとゴスロリ衣装を若葉に見せてきた。「コレなら派手目で華やかだし、人目を引きやすい
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episode5

時刻は午前10時。学園祭"桜ヶ丘祭"の開始時刻である。桜ヶ丘高校の校舎には、老若男女様々な人々が集まってきている。校舎に入るとそこら中から生徒達の呼び声が溢れかえる。そんな中、早くも1-3は注目の的となっていた。1-3はコスプレ喫茶。男女様々なコスプレで接客をしている中、やはり人々の視線を引き付けたのはメイドのコスプレをした若葉であった。「いらっしゃいませ、お客様。ご注文はいかがなさいますか?」若葉が柔らかい笑みを浮かべ接客すると、女性も男性も顔を赤らめる。そして大半のお客はこう言うのだ。「あの!写真一緒にお願いできますか?!」普段の若葉であれば「こんな黒歴史、写真に残したくない!」と言うところであるが、今は"桜ちゃん"である。お客の要望には喜んで応える。「えぇ。私でよければ喜んで」若葉がにこやかに応えると、女性客は「キャー!」と大はしゃぎをし、男性客はニヤニヤとしながら写真を撮る。男性客のニヤつきに対しては若干引きながらも「これも集客のため」と思いながら堪えるのであった。そうこうしているうちに1時間が経過した。「桜ちゃん!そろそろ次の衣装に着替えてー!」 「ハーイ!」若葉はお客が飽きないように1時間ごとに衣装替えをする事になっている。これはリピーター狙いの策略でもある。そうして、衣装替えした若葉が次に着ているのは、水色を基調としたチェックのセーラー服。髪型はロングのストレートになっていて、清楚なイメージとなっている。着替えとメイク直しを手伝ってくれた女子からはキラキラした目を向けられた。「良いよ......!良いよ桜ちゃん!シンプルすぎるかなぁって思ったけど、全然イケる!」 「ホント?変じゃない?」若葉はその場でくるりと回ると、女子達は「メッチャ良い!」「可愛すぎる!」と興奮した面持ちであったため、若葉はホッとして、「それじゃ、接客に戻るね」と声をかけて着替え教室からクラスの教室へと戻った。教室へと入ると周囲からは「キャー!」だの「うおぉ!」だのと声が上がった。若葉はサービスをするかのように「皆さんいらっしゃいませ!桜です!」と言うとウィンクをした。すると教室からはハートが溢れかえるかのようにお客もキャストも桜ちゃんにメロメロになっていた。そんな様子を見ていたクラス委員長は「フッフッフ......」と低く笑い、「やはり私の見立てに狂いは無か
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episode6

13時を回る頃、若葉はクラス委員長に客引きへと行くように命じられた。衣装係の女子と共に着替え教室へと入り、準備段階から予定していたピンクのゴスロリ衣装へと着替える。着替えが終わり軽くメイク直しをしていると、先に客引きをしていた執事コスの男子生徒が入ってきた。「おつー。おう、桜ちゃんの出番ですか。マジ可愛いな(笑)この格好だとお姫様みたいでええやん!」 「......今日だけはありがとうと言っておく」 「ホントは嬉しいくせにぃ。そだ、1枚写真撮ろーぜ!」 「1枚につき1万な」 「高ぇ(笑)」男子生徒はそう言うとメイクをしていた女子生徒にスマホを渡し、2人のツーショットを撮ると、男子生徒は「サンキュー」と言い撮った写真を見た。「おぉ......これはヤバイな......。確かにこれなら高く売れそう......」 「売るな......」 「あ!桜ちゃん、ネームプレート付け忘れてるよ!」 「ありがと」若葉は女子生徒からネームプレートを受け取ると、腰のエプロン部分に取り付けた。「ホラ、グラスボード寄越せ」 「1人で大丈夫か?」 「女子じゃないんだし大丈夫だって。客寄せパンダするだけだし」若葉はそう言うと、クラスボードを受け取り着替え教室を後にする。1人でいいとは言ったものの、女装をして1人で校内を歩くのに少し抵抗を感じてきてしまった。「やっぱり、ついてきてもらえばよかったかな......」若葉は小さくポツリと呟くと、首をフルフルと振り、頬をパンと叩いて気合いを入れ直した。「弱気にならない!よし、行くか!」気分を入れ替え、いざ行こうとすると、肩をポンと叩かれ「ねぇねぇ」と声をかけられた。「キミこのクラスの子?可愛いねぇ。名前は?あ、桜ちゃんて言うの?オレ実はツレとはぐれちゃってさァ。良ければ案内してくんない?」見たところ20代前半くらいの男性で、肩を叩いたまま肩を抱き顔を近づけてくる。若葉は気持ち悪く感じ力を入れて手を退けようとするが、思ったよりも強く抱かれているためビクともしない。「黙りしないで、お話ししようよー」若葉は耐えられないと目をギュッと瞑った瞬間、肩が軽くなるのを感じ、そろりと目を開けた。「未成年ナンパしてんじゃねぇよ。クズが」
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episode7

「おーい!新!早く行こうぜ!1回は行ってみたかったんだよなぁ、"桜ヶ丘祭"!」 「......オレ昨日バイト遅かったから寝てたいんだけど......」 「まぁまぁ、新君。せっかくの青春を謳歌しないでどうするんだ?」 「......ハァ......。2人揃って......。10時に桜ヶ丘で待ち合わせだったろ?」新が自室で寝ていると、高校で知り合い仲良くなった田辺と巻が突撃してきた。今、家に居るのは新と妹の唯だけだったので唯が2人を家に上げたのだろう。「だって新、行ってもいいって言ったじゃねぇか」 「だからって朝イチから来るバカがどこにいるんだよ!」 「ここに居るよー♩2人もー♩」 「ハァ......」新は深くため息をつくと、ベッドから起き上がり私服へと着替える。「なんだかんだ言って、新ってオレ達の言うこと聞いてくれるよな」 「イヤーン♡愛されてるー♡」 「うるせぇ!キモイわ!」新は仕度を整え終えると、2人を連れ1階へと降り、リビングに居る唯に声をかける。「唯ー、オレちょっと出てくっから、出かけるなら鍵かけてけよー」 「お兄でかけるんだ。田辺君、巻君。お兄のことお願いね。」 「任せて唯ちゃん!」 「任されるのはオレの方だよ......」そうして新達3人は桜ヶ丘へと向かった。いつもより道に人が多いのは、やはり桜ヶ丘祭に行く人が多いからだろう。「オレ学園祭とか初めてでテンションあがるー!」 「ここらの中学は学園祭とか無いもんな」田辺と巻はハイテンションで、寝起きの新はそのテンションについていけずにいた。そうこうしているうちに、桜ヶ丘へとたどり着いた。すると2人は目を輝かせ、新が「おい」と声をかけようとしたが、新の声が届く前に2人揃って校舎の中へと消えていってしまった。「......アイツら......!!」新に一緒に行きたいと言っていたわりに、2人共新を置き去りにしていった。新は頭を抱えて一瞬しゃがみ込んだが、来てしまったものはしょうがない。そう思い1人で校内を散策することにした。しばらく歩いていると、前方の方からなにやら揉めている様子が見えた。1人は20代っぽい男。もう1人はピンクのゴスロリを着た女子生徒だった。どうやらナンパのようだ。女子生徒が困って動けないでいるようだから、頭を突っ込みたくはなかったが、誰も助けてはくれない
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episode8

新の一声に、若葉とナンパ野郎は2人して新に振り返った。ナンパ野郎は新に邪魔されたのが気に食わなかったのか、新に睨みを効かせながら詰め寄った。「あぁ?なんだァ、青クセェガキが。邪魔すんじゃねぇよ」 「......どっからどう見てもその子嫌がってんじゃねぇか。いい大人が子供相手に何してんだよ」 「んだとコラァ!!」ナンパ野郎が新に殴りかかろうとしたが、新はヒョイっと避けるとナンパ野郎の足を引っ掛け転ばすという見事な流れを披露した。外野はその様子を見て新に拍手を送った。ナンパ野郎は恥をかかされて顔を真っ赤にすると、「クソッ」と言い残し走り去って行った。新は「ダッセェの」と小さく笑ってナンパ野郎が去って行った方向を見た。少しするとハッとして若葉の方へと顔を向けた。「キミ!大丈夫だった?!ケガとかさせられてない?!」どうやら新は助けた相手が若葉だと気付いていない様子だった。若葉も新とは疎遠になっていたせいで、すぐには新だと気付くことが出来なかった。「だ、大丈夫です。......ありがとうございました」 「いや。無事ならいいんだ。えぇ......と......」 「あ、1-3で喫茶店してる桜です」 「桜ちゃんか。オレ実はツレ2人と来たんだけどふたりが2人ともはしゃいでどっか行っちまってさ。......よかったら桜ちゃんとこで待たせてもらえない?」新はそう言うと若葉を見つめてきた。若葉はようやく新の事を思い出したが、自分が"佐倉 若葉"である事が言えず、キャスト名である"桜"を名乗ってしまった。「はい。良ければウチのクラスで休んでいってください。案内しますね」 「ありがとう。助かるよ」そんな簡単なやり取りだったが、若葉はいつかバレるんじゃないかとヒヤヒヤしていたが、全くその様子は見られない。もしかしたらこれは再び新と接点を持てるチャンスなのではないか...と思い、若葉は思い切って新に声をかけた。「あ、あの!先程はホントにありがとうございました!......それで何かお礼をしたいのですが......」 「そんな、お礼だなんて!当たり前の事をしただけだし......」 「そ、そこをなんとか......!」若葉は若干前のめりになり少し必死になってしまった。そんな若葉の様子に新はビックリしたが、顔を真っ赤にした若葉に見惚れて「可愛いなぁ」と心の中で呟い
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episode9

ナンパされていて困っていた女子生徒を助けたのは、その少女が若葉に似ているような気がしたからという理由もあった。だから少女に「お礼がしたい」と言われた時、下心ありきで「デートしよう」と誘ったのであった。連絡が来るかは賭けであるが、もう後悔はしたくなかった。そんな事を考えながら1-3の喫茶店で田辺と巻を待つ。すると、「新ァー!」と叫びながら待ち人である2人が入ってきた。「お前らいなくなるとかふざけるなよ?」 「ゴメンてー」 「......謝罪が軽すぎるんだよ」 「の、割には機嫌悪くねぇな。なんかあったん?」2人が不思議そうに新に問いかける。が、新は「秘密」と言ってニヤリと笑った。「なんだよそれー。気になるだろー」 「ココのジュース代は出すからさぁ」 「いや、ジュース代はお前らの迷惑料として出せよ?」何がなんでも教える気が無いという新の態度に2人は「ケチー」と言いながら席に座った。そこに、新の注文したオレンジジュースを持ってきた若葉が現れた。「お待たせしました。オレンジジュースです」 「ありがとう、桜ちゃん」 「「桜ちゃん?!」」新が"桜ちゃん"と呼ぶと、2人は目を剥いて驚いた。「あ、あの新が......女の子を"ちゃん"呼びするなんて......!!」 「キミ!可愛いね!コイツに変なことされてない?」 「......お前ら......」田辺と巻の2人がギャーギャーと騒ぎながら若葉に声をかける。「変な事だなんて......。ナンパから助けて頂いただけですよ」若葉が笑みを浮かべながらそう応えると、その笑みにふたはホゥっと顔を赤らめた。「桜さん......なんて可愛らしい!彼氏は?!彼氏はいるの?!」 「オレ!オレ今フリーなんでどうですか?!」2人が若葉に猛アピールを開始すると、新は面白くなさそうにブスッとし始めた。そんな3人の様子に若葉は「クスッ」と笑い、「可愛いだなんてありがとうございます。彼氏は......いません(笑)」若葉の彼氏いない発言に、田辺と巻だけでなく、新まで心でガッツポーズをした。「それではごゆっくりどうぞ」そう言って若葉は新達の席から離れようとした。その瞬間、新は若葉の手を取り、「連絡待ってるね」と耳打ちをした。
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