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All Chapters of ひみつのお姫さま: Chapter 31 - Chapter 40

55 Chapters

episode30

この日の放課後も新と若葉は一緒に帰っていた。若葉としては「わざわざ桜ヶ丘まで来なくても......」と思っていたのだが「若葉が海里に来ると危ないから」と言われてしまった。危ないとはどういう事だと思ったが、なんだか黒い顔をしている新をみると聞けなかった。経験から察するに、恐らくだがまたナンパされるの思われているのだろう。制服は男物だからナンパなんてされる訳無いのに......と思ったが、若葉の思考を読み取ったのか「若葉が男子校なんかに来たら襲われる!」と若葉にとって見当違いの返答がされた。「同じ高校行きたかったんじゃ......」と言ったら「オレが一緒ならいいの!」と言われてしまった。...過保護な彼氏である。「あっ、そうだ」「?どうした?」急に若葉が声を上げたので、新は立ち止まり若葉を見た。「明日の事だけど女子制服借りれたからそれに着替えたり、メイクしたりするから少し時間かかる」「了解。悪いな。オレのダチの都合に合わせて」「別にいいよ。......流石に男が恋人って言いにくいだろ?」「オレは別にいいんだけど......ダチが"彼女に"って言うからさ......なかなか訂正出来なくて......」「なるほど。......オレの方は女子達のお陰で男のお前が恋人ってクラス中にバレたよ......」「もしかして"桜ちゃん"とのデートで手伝ってくれた人達?」「うん」「共学の割に偏見ないんだなぁ」と呟く新に、若葉は「ウチのクラスが特殊なだけ」と返した。「逆に男子校のウチのが偏見あるかも。男同士が恋人になるってよりは"友情が深まる"って感じになるかな?」若葉は新の言葉に「そう言うもんなんだ?」と返した。そう言えば海里男子は合コンが盛んだと聞いたし、男同士でどうこうなることは無いんだな、と納得した。「男子校だから出会いに飢えて男に走る。って言うのはマンガの中だけ。実際は男臭いし、中学の頃のツテとか使って他校に彼女作ったり、合コンしたりかな?......あ、ま、前にも言ったけど合コンは人数合わせで参加させられただけで、もう行ってないし、行かないから!オレは若葉一筋です!」最後の方は最早若葉に疑念を持たせまいと必死の弁明であった。そんな会話をしていた時だった。若葉は何か視線を感じ、バッと振り返った。そこには誰もいなかったが若干の違和感と寒気がした。そんな
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episode31

「やっと見つけた......理想のモデルだ......」暗い部屋の中、デスクの上の明かりだけが暗がりを照らしている。そのデスクの前に1人の男が1枚の写真を手にしてボソリと呟いた。そのしゃに写っていたのは、学園祭の時の若葉であった。「女子生徒だと思って探していたが......通りで見つからなかったわけだ。まさか男子生徒だったとは......。名前はたしか......"佐倉 若葉"と言ったかな......?彼には是非とも僕の作品になってもらいたいな......」男は手にした写真をデスクに置いて立ち上がり、閉め切ったカーテンをシャッと開けた。すると部屋の彼方此方に絵の描かれたキャンバスが広がっていた。「この中に彼の絵も......」そう言った瞬間、部屋の扉がコンコンと叩かれた。男は外していた眼鏡を掛け直し、扉の元へと向かった。そしてガラガラと音を立てて扉を開く。「ハイハイ。どうしましたか?こんな遅い時間に」「すみません、喜多川先生。美術室に忘れ物しちゃって......」「わかりました。今開けますね」男、"喜多川"は尋ねてきた女子生徒達にニコリと笑いかけながら対応した。。すると、彼女らは頬を赤く染め「あ、ありがとうございます!」と言って美術室へと入って行った。「喜多川先生はこんな時間まで準備室で何をしていたんですか?」女子生徒の1人がそう問いかけると、喜多川はニコリと笑みを浮かべた。「あぁ、僕はね、次回作をねっていたんだよ」「先生の絵はどれも繊細でキレイですよね!」「そうだね......知りたいかい?」彼女らが興味津々と詰め寄ってきたので喜多川は笑みを崩すことなく「秘密だよ」と応えた。「さ、もう遅い時間だ。気をつけて帰りなさい」「ハーイ!先生さよなら!」「先生また明日!」喜多川はそう去っていく彼女らに手を振りながら見送った。「さて、と。佐倉君には明日にでも声をかけてみようかな。しかし......まさか男の恋人がいるとはね。彼ほど魅力的なら、まぁおかしくはない、か。でもまぁ、そんなに広まられては困るだろうから......いいネタになりそうだ」先程までの爽やかな笑みとは違い、暗く、"ニヤリ"とした笑みを浮かべ、「跡をつけたかいがあった」と呟くのであった。
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episode32

翌日、若葉は借りた女子制服とウィッグ、メイク道具を持って登校した。思ったより大荷物になってしまい、歩くのがしんどかったが、「これも新の友情のため......」と思い少し頑張ったのであった。「おはよう、佐倉。いよいよ今日だな!」「おはよう......なんでお前らが楽しそうにしてるんだよ」「いやぁ、佐倉の初々しい恋を応援しているだけよ?ま、安心しろ。お前が男と付き合ってるの知ってるのはクラス内だけだから。委員長が箝口令を出してさ」「委員長......。感謝してもしきれない...」「お礼は購買の幻のシュークリームでいいわよ!」「「!委員長!」」「おはよう皆!」と若葉の後ろからヒョイっと現れたクラス委員長に若葉を囲んでいた男子達はビックリした。「あんまりこういう事は広まらない方がいいからね。......ウチのクラスが特別偏見を持たなかっただけで、他のクラスの人達はわからないから」若葉はクラス委員長に対して「面白がってるだけだと思ってごめん」と心で呟き、「ジュースも付けるよ」と伝えた。「佐倉君の持ってきたウィッグってロングヘアーのヤツよね?」「?うん。そうだけど......」「雑誌で可愛い編み込み載ってたからそれしてあげる♡可愛さレベルアップよ!」「いやいや...別にそこまでしなくても......」「佐倉君。彼氏君にもっと可愛いところ見せたくない?ね?」「そーだぞ佐倉。委員長様の言うことは聞いておけば間違いなしだ。な?」「......ハイ」若葉は渋々と了承の返事をした。「ホントにそこまでしなくて良いのになぁ...」と思った次の瞬間だった。昨日感じた嫌な視線をまた感じたのだ。視線の方へバッと目をやると、喜多川がこちらに歩いて来ていた。すると、女子生徒達か「喜多川先生だ!」「ヤバい!朝から眩しい!」「マジイケメン!」「なんで1年教室に?」と騒ぎ立て始めた。そして、若葉の元へとやって来ると「佐倉 若葉君、だね?」と声をかけてきた。「は、はい。そうですけど......」「急で悪いんだけど、君にお願いしたいことがあるんだ」「?お願い?」若葉と喜多川が会話を始めると、周囲が「絵になる2人だな」と注目してきた。喜多川は「簡単に話しをまとめるとね......」と言いながら若葉の手を取り、「是非とも君にボクの絵のモデルになってもらいたいんだ」と、
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episode33

「モデルってどういう事ですか?」若葉は"まさか喜多川先生が視線の正体......?"と考えながら疑問を口にした。「いやぁ。今、個展を開く準備をしていてね。学園祭の時に君を見かけて君の事を描きたいと感じたんだよ。でも、女子生徒だと思って探していたから見つからなくて......。最近になって男子生徒である佐倉君。君だと知ったんだ」美術の授業は2年からの選択授業のため、若葉はあまり喜多川のことは知らなかった。「佐倉君!喜多川先生に描いてもらうなんて凄い事だよ!」「......そうなの?」「新進気鋭のイケメン画家で有名なんだよ!でも人物画なんて珍しいんじゃないかな?」クラスメイトがそう言うと、喜多川は「そうだね」と言った。「たしかに僕はほとんど風景画を描く事が多いんだけど......佐倉君を見た時、インスピレーションが働いたんだ。......どうかな?」若葉本心としては断りたかった。しかし、周りの女子生徒達がもう話が決まったかのように、「喜多川先生の描く佐倉君、キレイなんだろうなぁ......」「喜多川先生の個展に佐倉のが出るなんてクラスメイトとして鼻が高い!」などと口々に話し出したお陰で断りにくくなってしまった。「......あまりオレだってバレるようなのは嫌なんですけど......」「!大丈夫!是非とも君にお願いしたいんだ......!!」喜多川や周囲からの期待の籠った目に若葉は「ハァ......」とため息をつき、「わかりました。」と了承の返事をした。「!ありがとう!それじゃあ、打ち合わせをしたいんだけれど......」「今日の放課後以外なら今のところいつでも大丈夫です」「わかった。じゃあ、週末に僕のアトリエに来てもらう事は可能かな?」「......先生のアトリエ、ですか?」「うん。デザイン画はもう何枚か描いてあるんだけど、あまり人の出入りの多い所には持ち出したくなくてね......」アトリエとは言え、教師の家に生徒が1人で行くというのは抵抗がある。若葉はやはり断ろうとしたが、喜多川に手を取られ、紙を手渡された。1枚の紙にはアトリエの物であろう地図が。それともう1枚、何か文字が書かれた紙が。そこには「君が男と付き合っている事は知っている。学校中に広められたくなければ......わかるね?」と脅迫めいた文が書かれていた。若葉は顔をサッ
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episode34

喜多川の事、新に黙っていては心配かけてしまうかもしれない。今日の事が終わったら相談しよう。と若葉は思った。新の事だ。いくら若葉が黙って隠していようとしてもすぐに顔色を読み取ってしまうのである。下手に隠し立てするよりもマシだ。と思い、早速若葉は新に「相談事があるから放課後、新の友達に会ってから話聞いて欲しい」とLINEした。するとすぐに「了解」と返事が来た。短い返事だが、若葉を安心させるのには十分であった。放課後になり、若葉は女子制服に着替え軽くメイクをするとウィッグを被り"桜ちゃん"になった。クラスメイト達は「やっぱりどこからどう見ても女子だな」「作戦ちゃん可愛すぎる」と声を上げた。クラス委員長にウィッグに編み込みをしてもらい、女子達に最終チェックをしてもらうと、皆から「気張って行きな!」と背中を押された。「ありがとう皆。行ってきます」「ファイトー!」若葉は"桜ちゃん"として教室を後にした。玄関へと向かう最中、「美少女がいる」「あれって学園祭の時にいた幻の美少女じゃない?!」と注目を集めた。若葉は周囲の声を無視して校門で待つ新とその友達の元へと行った。「新君。お待たせ」若葉は"桜ちゃんモード"で新に声をかけた。「!わ......桜ちゃん、お疲れ様。全然待ってないよ。コイツらが桜ちゃんに会いたがってた友達」「君が新の彼女の桜ちゃん?メッチャ可愛いじゃん!新なんてやめて、オレとかどう......?!」「お前ふざけるなよ。桜ちゃんごめんね」新はそう言いながら友人の頭を思いっきり叩いた。「大丈夫だよ。初めまして。新君とお付き合いさせてもらってる桜です。よろしくおねがいします」「フッフッフ......。実は初めましてじゃないんだよね......」「えっ?」新の友人の言葉に若葉はヒヤリとした。「実は桜ヶ丘祭のとき、オレ達会ってるんだよねぇ」「そうそう!オレ達その時桜ちゃんに接客してもらったの」「......もしかして新君と一緒にいた?」「田辺でーす!」「巻でーす!」「いやぁ、まさかこんな美少女と付き合い出すとは」と2人はうんうんと頷いた。そんな2人に新は「日頃の行いが良いからな」と言った。2人は「なにぃ!」「お前だってさほど変わりねぇよ!」と新に絡み始めた。「やーめーろー」と言う新にダル絡みを続ける友人の2人。そんな様子に若葉は思わず
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episode35

「そ、そう言うことなら、そこまで邪魔しちゃ悪いな!な!田辺!」「だな!桜、時間作って会ってくれてありがとう。新のことよろしくね!」そう言うと田辺と巻は新に「上手くやれよ」「大切にな」と声をかけ去って行った。2人の後ろ姿を見送ると、若葉は作った笑みを解き、「ハァ...疲れた...」とひと息ついた。「お疲れ若葉。ありがとな。」「どーいたしまして。...で?するんだろ?"放課後デート"。」若葉はそう言うと握っていない方の手も取り、首を傾げながら新に問うた。新は「何このあざと可愛い生き物は...!!」と心の中で叫ぶと、手を握り返した。「も、もちろん!どこ行きたい?何か食べに行く?」「パフェ!パフェ食べたい!男同士だとなかなか入りにくいけど、この格好なら大丈夫だろ?」「たしかに。じゃあパフェ食いにいくか。」「やった!」今度は子供のような無邪気な笑みで笑う若葉に、「今日だけで若葉を過剰摂取している気が...」と思う新であった。そうして2人はパフェを食べに人気のカフェへと向かった。そこはカップルに人気のデートスポットでどこを見てもカップルだらけであった。「...たしかにこれは男同士だと入りにくいな...」「だろ?...さ、パフェ選ぼう?」そう言うと、若葉はチョコバナナパフェ、新は抹茶パフェを注文した。「新、抹茶好きだよな」「若葉こそ。子供の頃は祭りに行くと必ずチョコバナナ食べてたよな」「......よく覚えてるな」「若葉の事だからな」そう新に言われると、若葉は顔を赤くして「バカ」と呟いた。「そうだ......。相談したい事が......」「LINEで言ってたことか?」「うん。実は美術教師から個展に出展する絵のモデルをして欲しいって言われてて......」「!凄いじゃん!でもそれの何に相談することが?」「......その教師の視線がなんか......不気味で......。それに学校でならまだしも、先生個人のアトリエでって言われてさ......」「たしかに、それはなんか怪しいな......」「それに、コレ。アトリエの地図と一緒に渡されたんだけど......」そう言いながら若葉は新に脅迫文のメモを渡した。「!コレは......普通じゃないな。てかなんで知ってるんだ?」「わからない......。でも前に一緒に帰った時、視線を感じた
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episode36

週末、若葉と新は地図を頼りに喜多川のアトリエに向かった。「......ここ、か?」「だな......」2人はアトリエを見て言葉をなくした。そこにあったのは、西洋風の大きな建物で、庭には様々な花が咲いていた。「なんか、アトリエには見えない豪邸だな......こんな所で絵を描いてるのか?」「美術部の女子曰く、絵はアトリエでしか描いてないらしい。学校では準備室で絵の構想を練ってるだけなんだって」「なるほどなぁ」と新が呟くと、玄関の方から人が出てくるのが見えた。その人物は花きりばさみを持ち、庭の白いバラを数輪切り取っていた。そしてそのバラを太陽にかざしうっとりとしていた。若葉はその目が自分を見ていた時の喜多川の視線そのものだと感じた。それから、その視線がバラから玄関先に立っている若葉達に向けられ、その存在を認識すると笑顔で歩み寄ってきた。しかし、その笑顔からは、喜びと嫌悪が入混ざった感情が読み取れた。「やぁ、こんにちは佐倉君。よく来てくれたね。待っていたよ。それで?そちらにいるのは、例の恋人君かな?なんで来たのかは......何となく想像つくけれど」喜多川はそう言うと笑顔を崩し、まるで嫌なものでも見るかのような視線を新に向けた。「来るに決まってるでしょう。あんな脅迫めいたメモを見せられたら」「脅迫?なんの事かな......?」「......テメェ......」「新!先生。オレ、ちゃんと来たしモデルもちゃんとします。なので新が同席することを許してください」「......仕方ないね。さ、入っておくれ」そう喜多川に促され、2人はアトリエに足を踏み入れた。アトリエ内はモデルを映えさせるためか、白で基調されていた。「ひとまず、こちらでお茶でも飲んで待っていておくれ。今デザイン画を持ってくるからね」喜多川は2人をアトリエ内のテーブルに案内し、紅茶を振舞った。そして2人が紅茶に口をつけたのを見届けるとデザイン画を取りに部屋を後にした。「少し心配しすぎたかな......?」「いや...警戒するに越したことはない。向こうもオレが一緒に来ることは想定していたみたいだしな」「そ......うだ......ね......」「若葉?」「なん......か、ねむけ......が......」「おい!わかっ......!!」ガシャンと言う音と共に若葉は眠り
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episode37

「ん......なんか、しびれて......動け、ない......手......手錠......?それに......え?服......は......?」若葉は目を覚ますと、手には手錠、そして服は身につけておらず、白い布で身体を包まれていた。そして長髪のウィッグまで被らされているらしく、アトリエのステージの上には沢山の白いバラと共に長い髪が踊っていた。「お目覚めかな、佐倉君?」若葉が混乱していると、喜多川は静かに近づいてきた。「やはりこの様を描くのには君がモデルになってくれるのが1番美しいね。僕の目に狂いはなかったよ。ね?彼氏君?」「ンー!ンー!!」「あら、た......?!」若葉がなんとか新に目をやると、口に枷をされイスに縛り付けられていた新が映された。「僕もね?こんな手荒なマネはしたくはなかったんだよ?でも抵抗されるのはこまるから......ね?」喜多川はそう言うと、若葉の近くに構えたキャンバの前に座り絵を描き始めた。「僕はね、佐倉君。理想の絵を描くことに興奮を覚えるタチでね......。今、最高気分だよ......!」若葉とキャンバスを交互に見る目は血走り、息は荒くなっていた。それからどれくらいの時間が経っただろうか。鉛筆を動かしていた手は止まり、喜多川は立ち上がると若葉の元へとやって来て若葉に覆いかぶさった。「せん、せい......?なに......」「あぁ......美しい......。君はまさに天使だよ......」喜多川はそう言うと、若葉の頬に、はだけた肌に手を滑らせた。「や......やめ、て......」「あぁ、怖がらなくても大丈夫。ただ触れるだけだよ。でも嫌がるなんて......。今までのモデル達は喜んで僕に身を委ねていたと言うのに......」すると喜多川は若葉の身体を起こし、キャンバスを若葉に見せてきた。そこにはバラに囲まれ横たわった長髪の片翼の天使が描かれていた。その絵からは美しさだけでなく、色気や哀愁が漂っていた。「こ、れが......オレ......?」「そうだよ?君は眠っていた間、僕に触れられて善がっていたんだよ?だからこの絵からは色気が溢れているんだ。......だから......」喜多川が言葉を続けようとしたその時だった。喜多川の身体が窓際までぶっ飛ばされた。どうやら自力で拘束を解いた新が
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episode38

「あ、新......!」「あ、悪い若葉。我慢の限界で......」「うぅん。助かった......。ありがとう」アトリエからしばらく新が若葉の手を引き走り、近くの公園まで来た2人は荒くなった息を整え抱き合った。「気持ち悪かった、怖かった......」「......もう大丈夫だから。一緒に来てたのに何も出来なくてごめん」「新は何も悪くない。オレの方こそ、オレのせいで...新に危ない思いさせて......」「ストップ。若葉が謝ることはないんだから。な?」新はそう言うと若葉の頭を優しく撫でた。そうしているうちに、青ざめていた若葉の顔色は徐々に戻っていった。「......オレ、別に噂広められてもいい。クラスの皆は知ってることだし......。今更学校中に広まっても怖くない。それよりも新に危害加えられる方がよっぽど怖いよ......」「......若葉......」「それとも、もうオレと一緒にいたくなくなった......?」「そんな訳あるか!オレがどれだけ長い間片想いしてたと思ってるんだ!」新は若葉の両頬に手を当て自分の方へと目を向けさせた。そして若葉の瞳の奥を覗き込むように見つめた。若葉は新の真剣な目に、思いに、今まで我慢していたものが溢れ出してきて、涙がホロホロと流れ始めた。その涙を新が優しく拭うと新は若葉にそっと口づけた。それに若葉はポカンと固まりしばらく微動だにしないでいたかと思ったら次の瞬間、"ボンッ"と音を立てて顔を真っ赤に染め上げた。「あ、あら、新......!」「ごめん。でもこうしたら安心するかなって。ホントはもっといい雰囲気の時にしたかったんだけどね。キスするのも我慢出来なくなっちゃった」「フフッ......なにそれ」「おかしいかな?でも笑ってくれて嬉しいよ。......若葉」「んっ......」新は若葉の口だけでなく、頬や瞼など、顔中にキスを降らせた。「新......ふっ!くすぐったい」「やめないよ。若葉。大好きだ」「ん。オレも大好き......」今度は若葉か新の頬にキスを贈った。「ふっ......まさか若葉の方からしてもらえるとは思わなかった」「お、オレだって男だよ?キスくらいできる」「ハイハイ(笑)それじゃあ家に帰ろう?今回の件、オレ達だけの問題には出来ない。親に話して学校側に通報する必要があると思う
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episode39

「聞いた?喜多川先生の話し」「聞いた聞いた!1年の男の子にモデルと称して手を出そうとしたんでしょ?」「なんかショックー。イケメンだし人柄も良かったから好きだったんだけどなぁ」事の顛末はこうだ。アトリエから帰った後、直ぐに家にいた両親に喜多川からされた事を話した。そして若葉は新と共に親を連れ学校に直談判をしに行った。休日ではあったが、話しを聞いた教師が直ぐに校長に連絡を取り校長に学校へと来てもらった。そして事細かく喜多川に何をされたかを話すと、校長は汗をだらだらと流しながら頭を深々と下げてきた。そして、若葉に警察に通報するかどうかを問うてきたので、若葉はこれ以上被害者が出ないためにもと通報することを選んだ。警察の対応は早く、学校にいた若葉と新に調書を取るのと同時進行で喜多川のアトリエにも捜査員を向かわせ彼を連行したのであった。そして家宅捜索をすると、若葉に盛った睡眠薬に痺れ薬、手錠。それに新に使用したスタンガンが押収された。そして、アトリエには口にするのもおぞましいような絵や写真が見つかったのである。これにより、喜多川の余罪がわんさかと出てきたので即刻逮捕となった。一連の事件はニュースにもなり、若葉は怖くなったが、新がずっとそばにいてくれたので、少し落ち着きを取り戻すことが出来た。「新君。もし良かったら今日泊まっていってくれないかしら。......若葉もその方が安心するでしょうし......」若葉の母からの申し出に新は二つ返事で了承した。そして若葉と新は残りの休日を一緒に過ごしたのであった。「若葉、明日は学校までオレが送っていくからな」「いや......いいよ。そこまでしなくって」「いいから。オレがそうしたいんだよ。そんな時間のかかる距離じゃないからな」「......ありがとう、新」そして冒頭の生徒達の会話である。この事件はニュースになったが若葉の事は"被害者生徒"とだけ報道されたため、モデルをすることを知っていた生徒以外はその"被害者生徒"が若葉であることはきづかれなかった。知っていた生徒のほとんどがクラスメイトというのもあり、クラスメイト達は若葉に対し、あえて事件には触れずにいつも通りに接してくれていた。それでも面白半分で若葉を見に来る生徒もいるようで。そんな生徒達に対してはクラス委員長を筆頭としたクラスメイト達がシャットダウンしてくれていた
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