All Chapters of 【牌神話】〜麻雀烈士英雄伝〜 伍: Chapter 41 - Chapter 48

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その2 最善の敵アキラ編 第十話 アキラのデビュー戦

40. 第十話 アキラのデビュー戦  アキラは出アガリの効かないドラ3リャンメンテンパイをツモアガリにかけて押し続けた。 途中ツモ6索となり3面待ちに成長させるも7索は3枚打たれてしまうなど悔しい展開が続いていた。(く~! 本当ならあの7索は捕まえてるのに!) アキラ手牌 一一一九②③④23456西西  そこで引いた3索。  普通の人なら(それが何?)という牌である。ツモ切りしか無さそうなこれをアキラは採用し6索を切った。 アキラ手牌 一一一九②③④23345西西  後ろで見ていたマサルにはまだ意図が分からない。(1枚でもアガリ牌は多い方がいいのではないか?)そう思った。 しかし次巡、アキラの思惑通りの牌を引いてくる。 ツモ2索→打5索 (うっ! なるほど)  そう、これで4索の出アガリが可能な手になったのだ。 アキラ手牌 一一一九②③④22334西西  先程までは7索は4枚あったのでその場合はツモ率を高めて手を広げ。その7索が残り1枚に減ったので今度は役作りを目指して手を寄せる。こんな芸当は並の打ち手に出来るものではない。 「ロン。12000です」 アキラ手牌一一一②③④22334西西 4ロン  アキラの一盃口ドラ3が決まった。 「思考が柔軟だ!」  マサルは思わず感心してうなる。自分にこの手が来てもこんな芸当が出来ただろ
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その2 最善の敵アキラ編 第十一話 コテツとの出会い

41. 第十一話 コテツとの出会い  アキラが富士2で働きだして数ヶ月後、ある日アキラと同い年くらいに見える若者が来店した。  富士2は一応低レートもやっているので若い人はたまに来るが基本的にはピンレート寄りの店であり自分と同い年くらいの客なんていなかった。この若者こそアキラの永遠のライバルとなる南上コテツだった。  コテツへのルール説明が終わったら早速0.5のレートで同卓だ。「リーチ!」コテツの攻撃から始まる。「ツモ!」元気よくツモられた。 コテツ手牌二三四伍六七⑥⑥⑥34赤55 5ツモ ドラは2  この時、アキラは何か引っかかった。コテツのリーチ宣言牌が⑦筒だったからだ。そして、コテツがリーチする2巡前からアキラは2-5索待ちでダマテンをしていた。 アキラ手牌三四赤伍伍伍③④⑤34678  二萬が拾えそうな場だったのでそれ狙いで二-伍-3待ちというリーチかそれともダマかあるいは高目追求でタンピン三色リーチかダマかで逡巡して打3とした6巡目テンパイだった。 従業員であるので東1局は静かにして誰か来店したらすぐ替われるようにと考えてアキラはこの勝負手をダマにしていたのだ。 (ドラ受けの為とは言え高めピンフの3面待ちを壊した? 5索がドラならまだしも…… 偶然だろうか?)  次局もコテツのリーチ。すると下家のおじさんも「ヨシ! そんなら追っかけだ! リーチ!」と宣言するとその打牌をコテツの七対子が捉えた。⑧筒単騎。「うわぁ~! なにこの七対子。もっといい待ちあったじゃん。なんでこれ⑧筒にしたの?!」とおじさんが思わず言った。「なんとなく、お兄さんの仮テンに危ないかなって。刺さっちゃったら
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その2 最善の敵アキラ編 第十二話 アキラ、上座を敬う

42. 第十二話 アキラ、上座を敬う  アキラは興奮が収まらず、仕事が終わってから今日の出来事をユリコに報告した。 「ねえ聞いて、今日すごい奴が来たんだ! 年齢は多分僕たちとそう変わらないんだけど麻雀がすごく強くてさ! なんて言うか、魔法みたいなんだ。どこまで見えているんだろうって思ってしまう。そんな手順なんだよ」とユリコに熱心に話す。 大学生になったユリコは既に麻雀のルールを完全に把握していた。高校生の頃にアキラを理解したい一心で麻雀を覚えたのだ。そういういじらしい一面がユリコにはある。なので、アキラが話す内容を聞いて楽しむ事が出来た。ユリコはアキラの麻雀の話を聞くのが今では毎日の楽しみになっていた。 「へぇ、たとえばどんな麻雀なの?」「色々あったんだけどすごく印象に残ったのはこれかな」とアキラは言うとペンとメモ帳をポケットから取り出してサラサラと書き出した。 捨牌1九発7西 手牌一一伍六七②③④④④⑤67 ⑥ツモ ドラ八 「これ、東1局の西家なんだけどさ、どうする?」「私はリーチかなぁ。ツモっちゃったら勿体ないし」「僕もそうなんだけど、彼はダマだったんだよ」「それもアリじゃない? それはそんなに凄い選択かしら?」「いや、理由がちょっと深くてさ。このあとこれはダマなんですねーって話するタイミングがあったんだけど。そしたらさ、彼はこう言うんだよ。『せっかく4巡目に7索を置けたのにここでリーチしちゃうと跨ぎが疑われるからね。あの時の手は三色かドラ1になるのを待ちながら7索跨ぎが危険だと思われないタイミングになるまで待つのが攻守においてバランスの良い選択だと判断した。まあすぐ出ちゃったけどね』だって」「考えてる量が違う! 私の10倍は深いわ!」「すごい奴だろう?
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その2 最善の敵アキラ編 第十三話 アキラ遅刻する 

43. 第十三話 アキラ遅刻する  コテツが店に現れてから数週間が過ぎていた。  アキラとコテツは麻雀こそまるっきり違うスタイルではあったが、だからこそお互い惹かれるものがあったのか、あっという間に打ち解けた。 ある週末の晩など2人で朝までファミレスで麻雀談義。何時間一緒にいても話しが止まらないくらいの麻雀友達になった。  コテツはアキラと同い年で調理師専門学校に通う学生だった。しかし、料理人を目指している訳ではなく美味しい料理を出す雀荘のマスターになりたいのだとか。 それはそれで調理師専門学校に通う良い動機だと言えなくもないが、実際に行ってみて感じたのは本気度の差。料理人として生涯生きることを決意して免許を取りに来た学生と比較するとコテツの動機は軽かった。 技術の差に圧倒され、本気度の差にうろたえた。 結局、コテツは専門学校を休みがちになる。親に大金出して入れてもらっておいてどうしようもないヤツである。 これから先をどうしようと思い悩んでいる時に気晴らしに麻雀をしようと思ったが、セットだと自分と対等に打てる人はいないからフリーデビューしたこと。 役満でオーラス逆転されたのが逆に感動してしまい富士2に通うようになったことなど。 2人はまるでお互い溜め込んでいた思い出話をする昔からの友人同士であるかのように無限に会話を続けた。 気がついたら終電がなくなったどころの話ではない。もはや始発はとっくに出ていた。 「アキラくん大丈夫かよ。今日は彼女とデートなんだろ?」「大丈夫、大丈夫、仕事じゃないし。まだ時間あるから。帰って少し仮眠とるくらい時間あるよ」  そう言いながらアキラはその日ユリコとのデートを寝坊して1時間遅刻した。 「ごめんなさい」「許さない」  お詫びにと回転寿司に連れ
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その2 最善の敵アキラ編 第十四話 虎穴に入らずんば虎子を得ず

44. 第十四話 虎穴に入らずんば虎子を得ず  その日はアキラの出番はほとんど無く、まったりとした1卓丸が続いていたので掃除も飽きたし(終わったわけではない。というか掃除に終わりって来るのか? とりあえず、やるべき掃除は終わらせた)コテツくんの麻雀でも見て勉強するかな。とアキラはコテツの斜め後ろで立ち見していた。こういうことが出来るのは雀荘メンバーの特権である。 気になる人の麻雀を見て学ぶことが許されるのはこの当時ではかなり有利なことだった。なにせ対局を気軽にケータイで見れるような環境はまだない時代だ。強者の後ろ見をして学ぶ研究方法は当時最も有効な勉強法だったように思う。 見てみると丁度今からオーラスで南家のコテツが34400点持ちトップ目。そこに親から5巡目にリーチが飛んでくる。 「リーチ!!」  まあまあ気合いが入っているので安くはないだろう。とは言え親は11000点持ちのラス目からのテンパイなのでどんな手でも多少の気合いは入るだろうが。親はリーチ棒を出したので現在10000点。 親リーを受けたその次巡、コテツにもテンパイが入る。二-伍-八待ちタンピンドラ1。安パイ切りでテンパイに取れる完璧な引きである。現物待ちとかではないがトップ目だし役ありだしでダマで構えて自力決着を目指しつつ無理はしないという思考になる場面だ。  ちなみに全員の点棒状況は 東家10000点持ち南家34400点持ち西家27800点持ち北家26800点持ち で場に親が出したリーチ棒が一本供託されている状態だった。 (ナイス3面待ち! まあここはとりあえずダマ一択。リーチ意味ないし)とアキラは見ながら思ったがコテツは何か少し止まって考えている。 (ん? なんの躊躇だ? 何を考えているのだろう……)
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その2 最善の敵アキラ編 第十伍話 麻雀以外の趣味

45. 第十伍話 麻雀以外の趣味  アキラはバイトを掛け持ちしていた。 収入が安定しない雀荘のバイトだけでは安心出来ないと考え駅ビルに入っているレンタルビデオ屋『nana』でもアルバイトをしていた。 nanaはそれなりに忙しかったがリスクがあるわけでもない確実な収入源だったのでここで働くのも嫌ではなかった。仕事は楽しくはなかったが。忙しいおかげで時間が経つのが早かったのは救いだった。楽しくない上に時間の経過が遅かったらいくらなんでもつらい。 バタバタと働いてレジを捌いていたらうつむきがちのアキラの顔を下から覗き込むようにしてきた客がいた。 「よっ! 似合うじゃん店員の黒エプロン」  コテツだった。 「あれ? 言ってたっけここで働いてんの」「いや、知らなかったけどたまたま目に入ってね。今日は一日家でガンダル観ようと思ってたんだよ、いま旧作100円なんだろ?」と言ってコテツはガンダルのビデオをドサッとレジに持ってきた。 「ガンダルかー。僕まだちゃんと観た事ないんだよね。面白かったら感想聞かせてよ。お会計400円になります」「オッケー。じゃあまた富士2でな」と言いコテツは400円を置いて帰った。  ――数日後  コテツは次から次へとガンダルシリーズをレンタルしていた。どうやら相当面白かったらしい。よく見たらリュックにもガンダルのキーホルダーをぶら下げている。あれはたしかVガンダルだ。もうそんなに先まで観たのか。と驚いた。 「ねえ、そんなに面白いんだ?」「面白いっていうだけでは表せないね。深い作品だったよ。少なくとも子供向けではない。とくに最初のやつ、初代ガンダルは観てて涙出るよ」「ファーストガンダルって言われるやつね。そっかあ僕も観た方がいいかな?」「観て欲しい! 麻雀
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その2 最善の敵アキラ編 第十六話 アガリ牌を鳴く

46. 第十六話 アガリ牌を鳴く  松戸のガンダルミュージアムに行った帰りにアキラとコテツは駅前にあった雀荘に行った。  するとアキラがある人を見つけた。  棋士の竹田シンイチ四段だ。若い頃に(今でもまだ若いが)小さな麻雀大会で優勝していて麻雀好きとしても有名なプロ棋士。 アキラは彼が書いていた麻雀のコラムを読んだことがある。現代麻雀という麻雀雑誌の一番後ろに載っていたそのコラムはいかに麻雀を真剣に考えているかがわかる内容であり並の麻雀プロよりも考察が深かったのでとても面白いという評判で連載期間も長かった。 カラーで写真付きの時も何度かあったので顔は知っていた。(間違いなくあの人は竹田四段だ)とアキラは確信する。  すると偶然にもコテツとアキラは竹田四段と同卓となった。アキラはミーハーなので内心ワクワクしていたがコテツは「あの人棋士だよ。竹田四段」とアキラに聞かされてもその凄さはピンと来なくて「フーン」という感じだった。  メンバーワン入りで開戦──  東1局のコテツの手がすごかった。  開局早々に白を叩いたコテツが上家の竹田四段から出た九萬をチーして②筒切り。ドラは南だ。 次巡も何かを引き入れて②筒切り。そして──  「ツモ! 6000オール」 コテツ手牌一二三四伍六南 南ツモ(七八九)(白白白)  それを見て竹田四段が思わず質問した。 「それ、②筒対子落としした時に引き入れたの南だったよね。一番端の交換しかしてないってことはそうだよね?」 「ハイ」 「つ、つまり、九萬は高め2900で出
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その2 最善の敵アキラ編 第十七話 友ならば敵であれ

47. 第十七話 友ならば敵であれ  色々あって今日からコテツも富士2で働くことになった。 アキラはコテツに仕事を教える教育係だ。 「入り口に背を向けている席から反時計回りにA、B、C、Dと席番号。入り口に近い方から1卓2卓3卓で二列目は5卓6卓7卓三列目が8卓10卓とカバーがかけてあるのは11卓というか食卓。入り口に1番近いこの席は1Aってことね」「4卓と9卓が無かったけど?」「勝負事だからね、4(死)や9(苦)といった縁起が悪いことを連想させる数字は使ってないんだ」「ふうん。そういうもんなのか」「おつまみのメニューにあるイカとかもそうだよ。スルメのことをアタリメって言ってるだろ。勝負の場で『スる』だと縁起が悪いから『アタリ』って呼んでるだけで実際には同じモノなんだよ」「へぇ、なるほど。面白いね」  その日は店内の配置の説明や接客のマニュアルなどを教わって麻雀牌には触れずに終わった。  ――数日後。  一通りの仕事を覚えたコテツはもう本走一番手で活躍していた。アキラは同番なのでコテツによって苦しい戦いを強いられていた。 「コテツくんお手柔らかにね」「アキラくん、悪いけどおれは不器用でね。手加減とか難しいことは出来ないんだ。オンとオフしかない安物のホットプレートと同じでさ。全力火力の本気しか出せない」「たく、これだもんな。これ以上負けたら働いてる意味ないし、今日は負けねーよ」「望む所だよ」 「『友ならば敵であれ』だな」とマサルが言う。「なんですかそれは?」と2人が言うと待ち席でラーメンを食べていた中村さんがこう説明する。 「マサルの言ったそれはニーチェの言葉だな『友ならば敵であれ、友ならばせめて敵であれ。自分の友の中に自分の最善の敵を持つべきである』高
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