会議室の扉が、重い音で閉まった。 廊下の人声が途切れ、空調とプロジェクターの待機音だけが残る。 長いテーブルには、榊グループの紋を入れた資料ファイルが並んでいた。 壁際には大型モニター。席ごとのマイクの赤いランプは、まだ点いていない。 私は律の隣の席札を見た。 席札には、朝霧栞、とあった。 如月でも、榊でもない。 その四文字を見た瞬間、指先の力が少し抜けた。「無理だと思ったら、途中で出ても構いません」 車椅子に座った律が、横から短く言った。「それを今言うんですか」「今だから言います」 私は席の背に手を置いたまま、律を見た。 黒い仮面は、今日も律の顔を半分隠している。その黒さが、以前より重く見えた。「途中で出るつもりはありません」 律は、退出の選択肢を残したまま一度だけ頷いた。 律はそれ以上言わなかった。 私は椅子を引き、浅く座った。資料の角を押さえる手に、少し力が入った。 高瀬さんが入口近くで出席者名簿を確認している。相良さんは壁際に控え、部屋の奥にあるサイドテーブルの水差しを整えていた。 役員会そのものは午前中に終わっている。私が呼ばれたのは、その後の拡大会議だった。情報管理と外部協力者評価に関する説明の場。そう聞かされている。 けれど、集まった人たちの目は、資料よりも先に私を見た。 知らない顔が多かった。 でも、視線の種類は知っている。 値踏みする目。 誰かが言い出すのを待っている目。 最初に口を開いた人間の後ろに隠れようとする目。 如月家の廊下で浴びたものと、よく似ていた。「榊様。本日の議題に、外部の方が同席されるとは伺っておりませんでしたが」 最初に声を上げたのは、上座から三つ離れた席の男だった。白髪を丁寧に撫でつけ、薄い眼鏡をかけている。名札には、常務取締役・片山とあった。 律はマイクを使わなかった。「関連資料の作成協力者です。情報管理上、必要な範囲で同席します」「作成協力者、ですか
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