「……もっと早く、ここまで話すべきでした」 短い返事だった。あの時途中で終わった話が、ようやく繋がった。それでも、すぐに気持ちが追いつくわけではなかった。 私は湯呑みを持ち上げた。茶は苦く、冷えた磁器が掌へ張りつく。「怒られた方が楽ですか」 律は自分の右手を見た。署名をし、車輪を動かし、私へ触れる前にはいつも止まる手だった。「……少しは」 その短さが、かえって腹立たしかった。「ずるいですね」 律の指がわずかに曲がった。何か言いかける。「今、謝らないでください」 律は口を閉じた。 本当に黙るので、今度は少しだけ拍子抜けした。 私は笑えなかったが、呼吸は少し戻った。「事故のことを聞いたら、腹が立ってるのに、放っておけないって思ってしまって。……それが、また腹立つんです」 律の眉間に力が入る。哀れまれることへの拒絶が一瞬だけ出たが、彼は飲み込んだ。 律は何か言いかけ、湯呑みへ視線を落とした。「……嬉しいと思ってしまいました。あなたが、放っておけないと言ってくれて」 律は苦しそうに口元を歪めた。「でも、それに甘えて許されたことにはしたくありません」 言い切ったあと、律は湯呑みを少し遠ざけた。「まだ怒っています」「逃げません」 今度の返事には、反省の説明も将来の約束もつかなかった。 机の上に置かれた律の右手は、指を開いたままだった。差し出しているのではない。ただ、引っ込めずにそこにあった。 私はその手を見た。怒りが消えたわけではない。それでも、手を引っ込められる前に触れてみたいと思った自分を、今度は否定しなかった。「手を、見せてください」 律は一瞬だけまばたきをし、右手をテーブルの上へ出した。事故の時についた細い傷が、手の甲から親指の付け根へ薄く走っている。書類の上では知り得なかった凹凸だった。 私は触れる直前で指を止めた。律は促さず、掌を返
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