未央の指先は、守り袋の紐に届く寸前で止まった。 蔵の外で、風が扉の金具を小さく鳴らした。 正確には、私の手袋に押し返されて止まった。 爪の跡は薄いのに、三年前の感触が重なった。 三年前も、最初は小さな接触だった。 肩がぶつかった。腕を掴まれた。階段の上で、未央が泣きそうな声を出した。 そのあと、誰も私の手元を見なかった。 「どいてよ」 未央が低く言った。 さっきまで玄関で使っていた甘い声ではない。如月家の廊下の奥で、使用人がいなくなった隙に聞いた声だった。 「撮影が終わるまで、触らないでください」 「だから、ちょっと見るだけって言ってるでしょう」 「見るなら、立会人の前で。手袋をして。記録を取ってからです」 薄紙の端が、作業台の上で乾いた音を立てた。 「なにそれ。榊家に入った途端、偉そうに」 未央の唇が歪む。 蔵の空気は重かった。乾いた木と埃の匂い。古い箱から出した薄紙。高瀬さんのタブレットに残る、撮影済みの画像。守り袋は、その全部の真ん中にあった。 赤い紐が、少しだけねじれている。 私は、そのねじれを直したい衝動を抑えた。 今、勝手に触れば、未央と同じになる。 「未央」 隆一が低い声で名前を呼んだ。 止めるための声ではなかった。外へ漏れるな、と言う声だった。 未央は父の方を見なかった。 「お父様だって困るでしょう。そんな古い袋一つで、栞がまた大騒ぎするの」 「大騒ぎではありません。保全手続きです」 高瀬さんが、書類の端を揃えながら言った。 「今は、保全する物の確認です。中には産院名らしき文字と、家紋に似た刺繍があります。誰の物で、どうここに残ったのか。まず確認させてください」 「部外者が口を挟まないで」 「榊家法務として同席しています。先ほど如月様からも、立会いを承諾いただいております」 高瀬さんの声は穏やかだったが、未央が声を荒らげても、その調子は変わらなかった。 未央の頬が赤くなった。 「栞って、ほんとそういうところ変わらない」 未央が近づくのを見て、私は足の位置を変えた。 未央は一歩、私に近づいた。 「昔からそう。何でも自分のものみたいな顔して。おばあさまも、お父様も、お母様も、司さんも」 「司さんはあなたの隣にいるでしょう」 「そういう意
Baca selengkapnya