Lahat ng Kabanata ng 愛する妻が置き手紙一つ置いて家出をしました。~初恋を拗らせた旦那様は妻を取り戻したい~: Kabanata 51 - Kabanata 60

113 Kabanata

第51話 ただのサーレン

「そうですね。今の私はただのサーレンなのでサーレンとだけお呼びください」「そんな、呼び捨てなんて出来ないです」 オリヴィアにとってサーレンは、夫になるイアンの勤務先の長だった人だ。それもただの長じゃない、大国の防衛を司る組織のトップに立っていた人である。そんなサーレンを呼び捨てなんて出来るわけがない。それにサーレンはカイロ領の新領主として赴くのだと聞いた。それは彼の今までの実績を見れば当然で、彼だからこそ万が一の事が起きた場合、新ネロペイン帝国とスェミス大国の国境を防衛する事が出来ると両国の長から認められたのだ。 フト、オリヴィアは自分の背後に立つアンが静かで気になった。いつもなら男性とオリヴィアが喋っていたら間に入って、彼女の盾になるというのに。「申し訳ございません、オリヴィア様」と背後のアンから小声で話しかけられる。「私、この方苦手なんです……人を殺した事がないような顔をしているくせして、核心をついてくるので……」(アンに苦手な人居るの?)  アンの様子に戸惑っていたら、 「私は元の身分が低いので呼び捨てでも構わないです」「そんなのぜったいダメです! なんてお呼びしましょう」 背後のアンが一言も発さない。助け舟を出してくれない。 こういう時はなんてお呼びしたら良いのか分からない。(淑女教育を私は受けていないから、なんてお呼びしたらいいか分からないわ) アワアワしていたら、喉を鳴らす音が聞こえて目の前に立つサーレンをオリヴィアは見た。(もしかして、からかわれた……?) 彼は口元に拳を当てて笑いを堪えていた。琥珀色の瞳に涙を潤ませてまで笑おうとするなんて──「ひ、ひどいわ!」 つい顔を真っ赤にして叫ぶと、「すまない、レディ」とサーレンは眉を下げた。「揶揄うつもりはなかったんです」 本当に申し訳なさそうだったからオリヴィアは「怒っていません」と小声で
last updateHuling Na-update : 2026-08-14
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第56話 今日は別々に寝よう

  いつから、こういう状態だったのかしら、とオリヴィアはイアンを心配した。自分の計画を成し遂げる事に一生懸命で、イアンが具合悪そうにしている事に食事中気が付かなかった。 まるで、苦しんでいるように瞼を閉じるイアンに、オリヴィアは体温を測ろうと思って彼の額に掌を当てた。「熱はなさそ」 うね、と続けようとしたら、イアンが急に立ち上がって最後まで言えなかった。 オリヴィアは立ち上がったイアンを視線で追い、その顔を見上げた。「すまない、オリヴィア……具合が悪いようだから先に寝る事にするよ」「イアン……デザートは?」(デザートの心配をしているわけじゃないのに……)  いつもと違う様子のイアンにオリヴィアは面食らってしまって、ついイアンの背後に給仕の従僕がプリンを運ぶ姿が目に入って口に出てしまった。 「オリヴィアが食べてくれ」「イアン、違うの。プリンじゃなくて」 誤解を解こうとして、立ち上がったイアンの手を掴もうと手を伸ばすと、オリヴィアの細い指が掠っただけで、その手を捕らえる事は出来なかった。イアンが後に一歩後退ったからだ。 「オリヴィアに風邪をうつすといけないから──今日は別々に寝よう」 目を合わせずに、イアンからそう言われたオリヴィアはキュッと唇を噛み締める。夕立の前触れのように瞳が潤み出した。「別々に寝よう」と言ってオリヴィアに背を向けたせいで、イアンは知る由もなかった。「ど、どうしてそういう事言うの……?」(結婚してから一日たりとも欠かさずに同じベッドで眠っていたのに。私がイアンじゃなくてプリンを心配したから怒っているの……?) オリヴィアの悲痛な叫びはイアンの耳には入らなかった。 彼は、オリヴィアから「別れの挨拶」を「結婚記念日の朝に告げる」と宣言をされたと勘違いをしているのだ。あれもこれもユングがイアンの誤解を解
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第52話 一緒に植えている花

 「カイロ領に行かれても、たまには戻ってこられるでしょう?」「戻りませんよ」「どうして?」 オリヴィアは思わず前のめりになって、強めに問い質してしまって、上目使いでサーレンを見上げた。 そうやって見上げてくる姿は庇護欲がそそられる。そんなオリヴィアにサーレンはただ優しげに微笑んだ。「カイロを立て直すには忙しく動き回るでしょうから。それに、私は身寄りがありませんからね」「お友達だっているし、イアンも寂しがるわ」と伝えると、演劇がもうすぐ始まる事を知らせるベルが鳴った。この時にやっと、アンから「行きましょう」とオリヴィアは話しかけられた。 まだ言いたい事があるオリヴィアだったが、サーレンから「それではレディ」と話を切り上げられてしまう。 オリヴィアは諦めて、サーレンにお辞儀をしてから彼の元を通り過ぎた。すると、サーレンから声をかけられてオリヴィアは後ろを振り返った。  「イアンと一緒に植えている花は育ちましたか?」「花?」「あの場所は水も豊富ですし、あの広さにきっと綺麗な花が咲くでしょうね」 一緒に植えている花なんてない。何の事を言っているのか訊き返そうとしたら「では、さよならレディ」と話を打ち切られてしまい、サーレンは来賓席に向かった。 そうしてオリヴィアとアンは観客席に赴き並んで座る。隣のアンは「先程はすみません」と、会話に助け船を出さなかった事をオリヴィアに謝罪していたものの、オリヴィアはアンの謝罪を聞いていなかった。 サーレンが言った「イアンと一緒に植えている花」なんて、存在しない。──サーレン様は何か勘違いをされているのかも。 (でも──)「水も豊富」「あの広さ」っていう単語が妙に引っ掛かる。 ブーっと演劇が開始される音が鳴り、広い噴水の周囲にあった土だけの花壇が、オリヴィアの脳裏を過った。 次の日、オリヴィアはアンの追跡を振り切って、結婚後に住む屋敷へ訪れた。 あの噴水の近くの花壇で汗で濡れた背中を見つけた。長袖を肘より上まで捲し上げてスコ
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第53話 初の共同作業

  ツイっと右に移動したイアンの視線を辿ると、花が咲いていない苗が大量に並んでいた。「あれは全部ジャスミン?」「そうだよ。今から植えたら俺達の結婚式までには全部咲いていると思って。ここへ二人で住む頃には色とりどりなジャスミンが咲いているはずだ」(あれを一人で植えようとしていたの? どうして?)「オリヴィアが大好きだからだよ」 オリヴィアの問いは心の中で言ったつもりなのに声に出ていたみたいだった。 (どうして、イアンは私なんか好きになったのかしら……取り柄なんてないのに。帝国で穀潰しと罵られた日々を過ごしていたのに)『君を帝国の兵士から助け出した時、一目惚れしたんだ』 イアンはそう言っていた。『髪の色と、夕焼けのような瞳も好きだ』(目が腐っているんじゃないかしら……?) オリヴィアは母親が褒めてくれた髪と瞳の色を幼少時は大好きだった。──大好きだったのに、罵倒され、髪をぐちゃぐちゃにされ、自尊心を傷つけられた。そのせいで、銀色の髪を見るのが嫌いになって鏡を覗く事さえも憂鬱だった。 自分ではそう思っているのに、そう告白したイアンの表情は慈しみに溢れていて、オリヴィアは昔のワンちゃんを思い出す。あの頃から変わっていない微笑みを見て、オリヴィアの心臓は痛いくらい締め付けられた。 「本当は内緒にしたかったんだけど、バレちゃったね」 頬を赤く染めたイアンを見ると、頬が汚れている事にオリヴィアは気が付いた。 その汚れをじっと見つめていると、その視線にイアンは気が付いたようだ。「さっき触った時に汚れたかな」 軍手をはめた右手で頬を擦ったからか、汚れが余計に広がっただけだった。「私が拭いてあげる」「拭いてくれるの……? あ、ありがとう」「しゃがんで」と言うとイアンはゆっくりと腰を下ろす。同じ目線の高さになって彼の瞳を真っ直ぐに見つめた。金色の瞳は蜂蜜が
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第54話 女神の冠

 ※ オリヴィアは昼間、結婚記念日の計画に必要なものの一つ、『花冠』を用意する為に庭園で過ごした。庭師が手入れしているグゥイン公爵家の庭園は、レンガ色の石畳の道の左右に美しく整備された芝生があって、その芝生には左右対称で色彩豊かな花々が並んでいた。その先には涼やかな水飛沫を上げる丸型の噴水が広がっている。噴水を囲むように咲いている黄色、ピンク、白色のジャスミンのうちの白い花を摘んでから、オリヴィアはその噴水の低い石座席に座って花冠を編んだ。 ジャスミンを二本、垂直にクロスして、縦に置いたジャスミンにもう一本の茎を折れないように巻き付ける。それをひたすら繰り返しながら、オリヴィアはイアンと一緒にジャスミンの苗を植えた日を思い出していた。「──フフっ」 思い出し笑いをして、「私、イアンのことを本当に好きなんだわ……」とオリヴィアは再確認をした。一本一本花を編む度にイアンへの気持ちが胸に沁みて、愛しさが溢れ出すのだ。(イアンに伝えなきゃ――。いつも伝えられてばかりだから、私も同じだって伝えるの。少しでも貴方の想いに応えたいって、思ってる。それに、サーレン様に感謝をしなくちゃ) あの劇場で、サーレンから訊ねられなかったら、オリヴィアは今の生活を当然のように受け入れていたに違いないと思っている。多くの使用人達に支えられている事に、感謝一つせずに過ごしていたに違いない――イアンが汗と土にまみれて自分の手で花植えをしている姿を見て、屋敷の全ては、"誰か"の手で私達の為に準備されたものだって知る事が出来た。 (イアンに結婚記念日の朝に愛しているって言うわ。目が覚めて、一日の始めに瞳が映す|人《イアン》に。そして、イアンが初恋の人って告げるの。月夜のダンスを思い出してくれたら、嬉しいけど……)「私、言うわよ」宣言した方が良いかしら?「どうしましょうか」と首を傾けてオリヴィアは手を黙々と動かし続けた。 ジャスミンの花々を長く編んで、それから輪にした。重なる所を茎で結んで、余った茎を隙間に入れ込んで目立たないようにする。「完成だわ!」
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第55話 言いたい事があるの

  ※ 「ねぇ、イアン。結婚記念日の朝に目が覚めてすぐ貴方に言いたい事があるの」 グゥイン公爵夫妻の夕食の席。 メインディッシュを食べ終わって食後のデザートのプリンが置かれるのを待つだけだ。デザートを待っている僅かな時間にオリヴィアは意を決して自分の計画の核心に触れずに、イアンへ伝えた。 オリヴィアは、結婚記念日の朝に突然告白をするのではなく、前もって「言いたい事がある」と告げる事にした。そうしてイアンに無事に言う事が出来てオリヴィアは満足していた。オリヴィアの胸にあるのはやり遂げた達成感だ。(花冠、リンゴは揃える事ができたわ。黒い犬はもう諦めたわ)  どうやら計画通りに事が進んでいるようで、オリヴィアは心が弾む。 イアンの前で自分が「どれだけイアンを愛しているか」というプレゼンが上手く行きそうでオリヴィアは口元を歪ませた。 オリヴィア本来の性格は甘え上手で無邪気、活発で好奇心に溢れていた。サラが生きていた頃は、子供らしくおもいっきし甘えたし、笑顔が絶えない女の子だった。アンにはしょっちゅう止められたが、犬と庭を走り回って地面を転がって遊んでいたし、好奇心旺盛だから夜中に抜け出して一人で舞踏会へ行こうとした。そんな女の子が姉妹と皇帝から虐げられたせいで、本来の性格が封印されてしまう。それがイアンとの生活で徐々に戻りつつある。イアンへの告白計画が上手く行きそうで喜んでいるオリヴィアのしたり顔はイタズラが成功した子供のようだった。 イアンの背後に並ぶ給仕の使用人二名はオリヴィアのその表情をバッチリと目撃していた。いつもは静かに微笑み、お淑やかな奥様が今はニヤニヤ笑っているのだから混乱するに決まっている。彼らは、オリヴィアの背後に並ぶ同僚二人へこの状況を知らせたくて、彼らの顔を見たのだが……彼らは逆に青褪めていた。口を固く閉ざし、誰にも視線を合わせないように俯いている。オリヴィアの真後ろに立つアンは鬼のような形相だ。イアンの背後に立つ使用人は、この状況が飲み込めなかった。 オリヴィア側の給仕の使用人二名も飲み込めていなかった。イアンの表情は今にも死にそう──絶望に
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第56話 今日は別々に寝よう

   いつから、こういう状態だったのかしら、とオリヴィアはイアンを心配した。自分の計画を成し遂げる事に一生懸命で、イアンが具合悪そうにしている事に食事中気が付かなかった。 まるで、苦しんでいるように瞼を閉じるイアンに、オリヴィアは体温を測ろうと思って彼の額に掌を当てた。「熱はなさそ」 うね、と続けようとしたら、イアンが急に立ち上がって最後まで言えなかった。 オリヴィアは立ち上がったイアンを視線で追い、その顔を見上げた。「すまない、オリヴィア……具合が悪いようだから先に寝る事にするよ」「イアン……デザートは?」(デザートの心配をしているわけじゃないのに……)  いつもと違う様子のイアンにオリヴィアは面食らってしまって、ついイアンの背後に給仕の従僕がプリンを運ぶ姿が目に入って口に出てしまった。 「オリヴィアが食べてくれ」「イアン、違うの。プリンじゃなくて」 誤解を解こうとして、立ち上がったイアンの手を掴もうと手を伸ばすと、オリヴィアの細い指が掠っただけで、その手を捕らえる事は出来なかった。イアンが後に一歩後退ったからだ。 「オリヴィアに風邪をうつすといけないから──今日は別々に寝よう」 目を合わせずに、イアンからそう言われたオリヴィアはキュッと唇を噛み締める。夕立の前触れのように瞳が潤み出した。「別々に寝よう」と言ってオリヴィアに背を向けたせいで、イアンは知る由もなかった。「ど、どうしてそういう事言うの……?」(結婚してから一日たりとも欠かさずに同じベッドで眠っていたのに。私がイアンじゃなくてプリンを心配したから怒っているの……?) オリヴィアの悲痛な叫びはイアンの耳には入らなかった。 彼は、オリヴィアから「別れの挨拶」を「結婚記念日の朝に告げる」と宣言をされたと勘違いをしているのだ。あれもこれもユングがイ
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第57話 欲しいのは、オリヴィアの心

   イアンは私室でベッドの端に腰掛け、自己嫌悪に陥っていた。(あの場に居るのがいた堪れなくなって「具合が悪い」と嘘をついてあの場を去ってしまった……三十歳にもなって恥ずかしい。オリヴィアは変に思わなかっただろうか、とそればかり心配だ)  両手で顔を覆い、それから頭を抱え込む。 (まさか、本当に俺と離婚したがっているなんて……。辛い、辛過ぎる──……。あんな真剣な顔で「結婚記念日の朝に話がある」なんて言われたら、なんて返すのが正解だったんだ。しかも、俺が起きたタイミングで言いたいとか! どれだけ別れを切り出したいんだ……) イアンは「話がある」と言った後のオリヴィアのしたり顔を目撃してはいなかった。あれを見ていれば、オリヴィアが自分と離婚したがっているという話に信憑性が出てきただろうが、最初の台詞と真摯な眼差しに頭を殴られたような衝撃を受け止めきれず、今まで見た事がなかったオリヴィアの新たな一面を見逃した。(どうして俺と離婚したがっているんだろう) 俺を好きになってもらえなくても、オリヴィアが安心できる場所になろうと思っていたのに、夢半ばで別れを切り出されてしまった。 再会してから今日まで、笑顔の回数が増え、少しは俺を信用してくれていると思ったのに……勘違いだったようだ。『本当に好きなら、監禁すれば良かったのよ』 幼い頃に聞いた母上の言葉が鮮明に思い出される。 本当に愛していて、手放したくないと思うならば囲い込め。奥深くに、誰の目にも付かない場所へ。 自由を奪い、その羽をもいでしまえ。 昏い考えが頭を過るも、イアンはすぐに払い去った。 大人になった今なら分かる。あの時の母上はあれを本気で言った訳ではなかった。 ただ、本当に好きならば何があっても手放すな、と母上は言いたかったのだ。 『本当に愛する人ができたなら、愛し守り抜くの。手放し
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第58話 君を泣かせるつもりはなかった

   イアンは頭を抱え込んでいた両手をそのまま顔を覆った。 掌に向かって重い溜息を吐く。「俺はどこかで選択を間違えたんだ」(だから離婚をしようと言われてしまった) 例えば、初めて出会ったあの月夜の晩。 己の欲望のまま、自国に連れて帰っていればオリヴィアは姉妹と皇帝から酷い目に遭わされずに済んだ筈だ。 例えば、黒犬を飼うのを断った。 サプライズなんて慣れていない事をしようと思わなければ良かった。 考えれば考える程、それっぽい原因が次々と頭に浮かぶ。 そういった事が積み重なって、オリヴィアは俺と離婚したがっているのか。 『何を悩んでいるか知らねぇけどさ。ちゃんと話し合えよ』  午後の勤務で隣の席の同僚に言われた台詞だ。 ユングから追い出され、フラフラな状態で経理課へ帰ってきて呆然としながらも事務作業をしていた時に、シェルフは心配して声を掛けてくれた。『夫婦なんだから』(そうだ、俺達は夫婦だ) シェルフに言われた言葉を思い出して、イアンは「そうだな」と呟いた。 オリヴィアの願い通りに離婚をしてあげるのは簡単だ。 まず、理由を訊くのが解決への第一歩だ。(もしかしたら、改善できる理由かもしれないからな) そうなら離婚を思い止まってくれるかもしれない。 オリヴィアの事になると、何故か言葉が上手く出てこない。 それは──自分の発言でオリヴィアに嫌われるのが怖いからだ……。  瞳に光が戻ってきたイアンだったが、控えめに扉をノックする音が聞こえて、顔を上げた。ノック音と一緒に聞こえた、自分の名を呼ぶ声がオリヴィアのもので、イアンは思わずベッドから飛び上がってしまう。(まだ俺、心の準備が)  オリヴィアに離婚をしたい理由を訊ねると決めたものの、今すぐという訳ではなかった。 イアンがベッドに硬直したまま座っていると扉が
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第59話 一人で眠るのは寂しいの

  「怒らせた? お詫び?」 なんのことだ、とキョトンとするとベッドの前にワゴンが運ばれ、その上にはティーセットが二人分、そしてイアンの好物であるショートケーキが一人分用意されていた。 「これは?」「だからお詫び。イアンの具合が悪いって事、気が付かなかったから」 オリヴィアは怒られた子供のように直立のまま俯いた。 自分が吐いた嘘のせいでここまでさせてしまうなんて……と数時間前の自分をイアンは呪う。自分自身に余裕がなくて、オリヴィアに気を回す事が出来ていなかった。「それに、私がイアンじゃなくて、プリンの事を心配したって思って怒ったんでしょう?」「オリヴィア、俺は怒ってないよ」 ベッドから立ち上がって、オリヴィアへ近寄ると、オリヴィアの目は赤くなっていた。目の下には擦ったような跡があって、泣いた事は一目瞭然だ。「オリヴィア、ごめん。君を泣かせるつもりはなかったんだ。俺が大人げなかった」  俯いたオリヴィアを覗き込むと、キュウッと唇を締めるのは泣くのを我慢しているように見えた。目を見れば、ウルウルと潤んで今にも泣き出してしまいそうだ。すると、ポロっと涙が一粒溢れて彼女の顔を覗いているイアンの頬を濡らした。「オリヴィア、本当にすまなかった」 涙を拭ってあげようとオリヴィアの眦に親指の腹を近付けたら、手で払い退けられてしまう。 声を出さないように我慢しているんだろう、下唇を噛み締めて、肩を震わせたオリヴィアの肩にイアンはそっと触れ、そのままベッドの縁へ誘導した。オリヴィアをベッドサイドに座らせて、イアンもその隣に腰を下ろした。 しゃくりあげるオリヴィアを落ち着かせる為に、イアンは彼女の背中にそっと手を置いた。今度は拒否をされる事はなかった。 その事に安堵して、イアンはオリヴィアが落ち着くように背中をトン、トン、とリズムをつけて優しく叩いた。呼吸が少しずつ落ち着いてきて、オリヴィアの背中から、そっと自分の手を離した。(これじゃあ、離婚され
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